2_15 悪役令嬢一味 そつなくデビュタント
カルネイル様のお言葉が終わると、並んでいたお子様たちがばらけます。そして中央にカルネイル様と、奥様でしょうか。お互いに手を取り合います。
そしてワルツの曲が流れ、ゆっくりと踊り出されます。
短い一曲を踊ったのち、子供たちが前に出てきて、みんなで踊りだされます。
なんでしょう。子供が居たらこのような気持ちなのでしょうか。かわいい9割はらはら9割、何とも言えない感情30割くらいでございますわね。
「合計超えてない?」
「あら、口から出ておりましたか。」
「リア様もすごい綺麗に踊れてるね。他の子たちより身のこなしが‥‥、ちょっと腰の入り方が戦闘っぽいけど。」
「似たようなものでございましょう。」
「なるほどねぇ。」
奥の方を見ると、ハノイ様達、皆さま目頭にハンカチを当てております。
和やかにダンスは進んでおり、2曲目でございます。リア様たちはペアを入れ替えて2曲目でございます。
話しかけたそうにしている面々はおられますが、牽制の意味も込めてその方がよろしいでしょうとお話しております。
本来は繋ぎを作るべきなのでしょうが、セントロメアの辺境の方々がアステアラカに繋ぎを作ってもむしろデメリットしか感じないとのことでございました。
逆側ではリスロイブ・ソフィレント様とカルバー・アステアラカ様が踊っていらっしゃいます。リスロイブ様が何度かカルバー様の足を踏んでいらっしゃいますが、リスロイブ様の身のこなしからそのような粗相をするレベルでは無さそうですので、あれは意図的でございますわね。
それを中々冷えた目で見ていらっしゃるのがチゾノ・デューバレー様でございます。なにやら色々ありそうでございますが、正直ナーラック領に全く関係がございませんので骨折しない程度にしていただければと存じます。
そして3曲目に入ったところで、一旦リア様たちは軽食を取りにテーブルのほうに移動されました。その瞬間、かなりの人々に取り囲まれて色々質問されているようでございます。
「うわあ、大丈夫かなリア様。」
「どうでございましょうか。まあ、最悪威圧を使えば静かにはなるとは思いますが。」
「アステアラカでやったやつ? 口をつぐむ方法と口封じする方法間違えてない?」
「似たようなものでございましょう。ですが、これもまた貴族教育というものでございます。千尋の谷に落とすのも教育でございます。度が超えていればカルネイル様にどうにかしてもらいましょう。」
「子供のいさかいにしれっと最高権力者出すのはどうかと思うよ。」
「まあ、入場の際に王族肝いりとの発言もいただいておりますので、無体なことをする人間は居ないでしょう。」
下手をしたらセントロメア王国自体どこか知らない可能性も御座いますわね。
「えー、みんなもかわいいよー。すごい綺麗なドレスだね!」
「あ、ええ、そうね、王都で一番のローズガーデンで作ったもの!」
「すごーい、レースもきれい! 見せて!」
「よ、よろしくてよ!」
保護者の心配をよそになんだかんだでリアは平和に会話をしていた。
「男爵だと見るのも難しい‥‥、はずなのにあなたのそのドレスは何なの!?」
「これ? わかんない。カルネイル様にもらったやつ。宝石は借り物だけどね。」
「カル‥‥!? あなた一体‥‥!?」
「ナーラック領のリアだよ。あとジル・バイク・ヤーズ。みんな仲良しなの。」
「そ‥‥そうなのね?」
「かわいらしいお嬢様、お名前を教えていただいてもよろしいですか?」
ヤーズはドレスながら、先ほどからちょっとつんけんしようとしてことごとく失敗している令嬢の手を取ってキスをする。
「えぇえっ!? わ、わたくしを知らないの? フラン・カイダル。カイダル公爵長女よ!」
大物であった。
「フラン様。お顔の通り美しいお名前です。ヤーズ・マロカシュでございます。お見知りおきを。」
「え! ええっ! よろしくてよ!?」
ドレス姿だがほぼイケメンのヤーズに傅かれ、いけない扉を開きそうになっているフランはプチパニックであった。
「どうした。騒がしいな。」
そこに現れたのは、氷点下の貴公子チゾノ・デューバレー。
「あっ! チゾノ様!?」
フランの取り巻きの子女はキャーキャーと声を上げる。
「煩いのはあまり好きじゃないんだ。ところでこんな端で君たちは‥‥。」
と、目を上げたところに女神が居た。
まあ、リアなのではあるが。
「‥‥。」
完全にフリーズするチゾノ。
「チ‥‥チゾノ様?」
フランは目の前で扇をひらひらさせるがチゾノは息すら止めているかのごとく動かなくなっていた。
そしてその視線の先には、ローストビーフをもぐもぐする女神(小)。
「はっ!? あ、いや、デビュタント予定と、確かに、聞いていたね!?」
先ほどのフランよりもややボリューム大きめで声を絞り出すチゾノ。
「あ、チゾノ君。久しぶり。元気にしてた? 夜はもう眠れそう?」
「ああ! おかげさまで!」
急に問題発言をするリアと、夜云々についていけないお子様の面々、そして耳年間がゆえにピカイチの反応をしそうになるフランとそれを止めるフランのシャベロンの方。
「聞き捨てならない発言が聞こえましたが、私の耳がおかしくなったのかしら?」
そこに現れた炎の美女、といっても幼女ではあるが、リスロイブ・ソフィレントである。
現れた瞬間、フランの取り巻きはさささーと3歩ほど下がっていった。
「私の婚約者と夜の付き合いが?」
じっとチゾノを見るリスロイブ
「リス。婚約者候補だろう。それにリア様とはそういう関係ではない。昨日の事故で助けてもらったんだ。」
「ああ、なるほど。」
リスロイブは扇で口元をかくしてリアを見る。
見目は良いが、上位貴族の振る舞いではない。男爵令嬢だったか。とはいえ王室肝いりではあるので油断は出来ないが、その行動は比較的凡庸に見える‥‥が、リスロイブの第六感が告げていた。これはヤバイ相手だと。
「リア様でしたか。リア様は婚約者の方はおられるのですか?」
「まだ‥‥まだです。おと‥‥父上がもう少し大人になってからゆっくり決めたらいいと申しておりました。」
リアもリスロイブの上級貴族の気配に充てられて少しかしこまった口調になる。
「それでよろしいの?」
「うちのような小さな領地の貴族はそれほど申し込み来ないので急ぐ必要もないとのことでした。」
「なるほど。ですって、チゾノ。」
「邪推はやめてくれないか。」
チゾノから冷気が漏れ出す。
「あら、予想外だわ。」
「楽しそうだな。混ぜてくれないか。」
そこに現れたのはカルバー・アステアラカであった。
その瞬間、お付きの面々ふくめさらに3歩うしろにささささっと下がっていた。
「あら、カルバー様。お久しぶりでございます。」
「ああ、久しいなリスロイブ嬢。チゾノも久しいな。おぬしはもう少し愛想をよくしたほうがいいぞ。」
「必要があれば。」
にこりとも笑わずにそう返すチゾノ。
「さて、おぬしがリアか。父上から少しだけ話を聞いている。言える話と言えない話があろう。何かあれば私にもうすが良い。」
「ありがとうございます。」
リアはすっとカーツイをする。
「すでに過分な配慮をいただいております。ご配慮くださりありがとうございます。」
「うむ。リアの成績も見せてもらった。優秀なようだな。学園で会うのが楽しみだ。」
その瞬間、みなザワザワする。
「え、あなた、え、お金とか大丈夫?」
フランは現実的な心配をする。
「そこは大丈夫みたい。」
「すごいのね、なんで男爵なんてやってるのかしら?」
「うーん、いろいろかなー。」
リアは首をひねる。
実際すべてを聞いているわけではない。
「ヴィルヘルミーナ様の伝手だな。一度お会いしたいと思っていた。」
カルバーはすっと目を細める。
その瞬間、チゾノはスタッフに目くばせをする。
「とてもではないが信じられないほど素晴らしい人のようだな。」
「ヴィルはすごいよ?」
「ほう?」
「なんかわちゃわちゃしてそうだけれど大丈夫なのあれ?」
レンツ様がリンゴジュースを飲みながら視線で合図をされます。
「若干雲行きが怪しそうでございますわね。」
「え、マジで?」
「では、ばあやの出番でございます。」
「え、マジで!? ちょ、ハノイ様に言ってくる。」
さて、お呼びのようでございますので顔を出しましょうか。




