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2_04 悪役令嬢スパルタ塾開校予定

「さて、この面々が集まった理由はわかっているな?」

ジル・ファストロットはそういってソファーに深く座り込む。

「取りあえず軽く経緯は聞いているが、文字として残せる話と残せない話があろう?」

ヒマキ・マロカシュは首をすくめる。

「なんとなく私は背景が察してはいるが、状況のすり合わせがよいだろう。」

ナルクル・テューダーローズは静かにうなずく。

それを前にしてハノイ・ナーラックは大きくため息をつく。

「この話は他言無用だ。また言える話と言えない話があるのは理解してくれ。」

ハノイはこうなった経緯を話し出す。


ハノイ自体ヴィルが色々隠して喋っているのは理解していたが、悪意があって隠しているのではなく、とてもではないが言えない何かがあったのだろうと察していた。

察していたが、それでもなお思っていた。

え、隠してこのレベルなの?

ヴィルが帰国前に手紙をもらった時点で色々すり合わせをしなければならないと思って、少し余裕のある時期に集合を予定していたのだが‥‥。


「ああ、えっと、取りあえずいったんまとめていいか?」

顔の右半分が壮絶にひきつっているヒマキは手を上げる。

「ふらっと現れたヴィルヘルミーナという未知のド大国お嬢様が、そこのナルクルを助け、神のお導きによってアステアラカに行き、アステアラカ王族に何らかの貸しを作り、セントロメアの王子と友人になり、トドメにリア嬢に謎の力を授けた、と?」

「一応言っておくが、酒は飲んでないし頭も打ってないぞ。言ってる自分でも信じれないが正気だ。」

ハノイは真面目な顔で眉間を押さえる。

「理解ができん。」

ヒマキは手を上げる。

「お主は現場にいなかったからわからんでもない。俺とナルクルは現場に居たからな。」

ジルはナルクルを見る。

ナルクルは頷く。

「恐らくアステアラカではもっと大事になった何かがあったのだろうて。ただヴィルヘルミーナ様のお力は間違いない。歴代聖女の中でも圧倒的だ。正直同じ生物とは思えない。我が一族は比較的細かい魔力操作に長けているのもあるだろうが、あの時の魔力量は、口に出すのも恐ろしいレベルであった。」

ナルクルは恍惚半分恐怖半分の表情をする。

「安全なのか?」

ヒマキの疑問も当然である。

「ヴィルは良いやつだ。リアもなついている。レンツも命を救われた。それで十分だろう?」

「ハノイ、お主は全く。」

ヒマキはため息をつく。

テューダーローズはかなり古い歴史のある貴族だ。先祖が裏切られたため男爵をしているが、数百年前は侯爵だったらしい。

それゆえ考え方は男爵にしてはかなり貴族寄りである。とはいえ、この面々に毒されていまはかなりフランクにはなってきているが。

「とりあえずリアは間違いなくアステアラカの学園、ソレイユ・ド・アステアラカの受験が決まっている。これは王命以上だ。逃げ場はない。」

ハノイは真剣な顔で言う。

「そしてだな、友人もつれてこいと言われている。」

一緒にいる面々もごくりと唾をのむ。

アステアラカ・ド・ソレイユといえば、アステアラカ最高の学園だ。小国なら王族でもないかぎり受験資格すらない。将来のアステアラカ圏を率いる面々を鍛え上げる少数精鋭の学園という名前の職業訓練校のようなものである。

他の学園と異なり、王家の秘伝や危険な歴史も含めすべて教え込まれる特殊な学校である。

既に手紙で知らされていたが、口に出されるとなお胃に来る。

「ちなみにだな。入試に忖度はないらしい。」

「じゃあ無理じゃないか?」

ヒマキはため息をつく。

自分の娘の出来が悪いとは思ってはいない。まあ若干特殊ではあるが、セントロメアでは上位に入る、男爵令嬢としては出来の良い娘だと思っている。

だが、小国で出来が良いのと大国で出来が良いの間には大きな壁がある。

「だがな、思い出してほしい。」

ハノイはにっこり笑う。

が、目は全く笑ってない。

「王命なんだ。王命なんだよ。落ちることは、許されないんだ。本来はお前らを呼ぶつもりはなかったんだが、なんとな、昨日、この件に関してもヨツトセ・ミューズ・セントロメア王からお手紙をいただいていてだな。貴殿らの子らがアステアラカで活躍するのを期待している、とのことだ。」

ハノイがニコリと笑うと、他の全員の顔から表情がストンと抜けた。

「無理を言う‥‥。受験はデビュタント直後だろう? いや、デビュタントをアステアラカでやるっていうだけでもアレなのに、さらにコレ!?」

ジルは悲鳴を上げる。

「安心しろ。憐れんでくださったエシオン様からドレスなどの手配はして頂いている。既に全力で動いでくださっている。つまりそれがどういうことか、わかるな?」

ハノイは笑う。笑ってないが笑う。というかもう笑うしかない。

「なんだ、これは褒章にみせかけたおとりつぶし案件か?」

ヒマキは眉間にしわを寄せる。

「いや、尋常じゃない忖度の結果だ。恐らくゲタは履かせないとは言っているが、最悪履かせることになるだろう。だがそれでは問題が出る。」

「セントロメア王の顔に泥を塗ることになる‥‥か。」

ふう、と鼻からため息をつくナルクル。

「今から詰め込んでどうにかなるのか?」

「結果的に今このタイミングで集めておいてよかった。自分ながら神の采配だとおもうよ。で、だ。この話は口外無用、一切無用、誰にも、ペットにすら言うな。」

ハノイは全員を見る。

静かに全員はうなずく。

「ヴィルが鍛え上げてくれる。1か月もあれば入試に受かる程度はできると言っていた。ただ、ちょっと急ぐ必要があるのでちょっとだけ大変かもしれないと言っていた。何があったか知らんがアステアラカに貸しを作るレベルの大問題を大変と一言も言っていなかったヴィルが大変かもと言っていた。わかるな?」

耳鳴りがするほどの静寂が訪れる。

「命の安全は‥‥?」

ナルクルは震えた声で絞り出す。せっかくマンティコアから生き残ったのにバイクの顔が見られなくなるのはイヤだ。

「それはないとは言っていた。手を変え品を変え10回くらい聞きなおしたが無いと言っていた。」

「ならばもう選択肢はないな。明日からお願いしてもよいのか?」

ジルは覚悟を決めた顔で見る。

「ああ。善は急げだ。とはいえ今から連絡して集まるのにタイムラグがある。ので、本意ではない、全く本意ではないのだが、どうもヴィルが足を用意してくれる、そうで‥‥な、うん、まあ、あれだ。お前ら、気付けの薬いる?」

「え、なに、無茶苦茶怖いんだけど。」

全員が震え上がった瞬間、ドアがノックされた。

その音で全員ビクっと飛び上がる。

「今お時間よろしいでしょうか?」

当のヴィルヘルミーナの登場である。

「ああ、丁度こちらも話がついたところだ。」

「それはよろしゅうございました。こちらも手配が丁度ついたところでございます。」

にこりとヴィルは笑う。

傾国の美貌に本来なら鼻血を吹いて転げまわるはずだが、全員それどころではなかった。

「ヴィルヘルミーナ・ローゼンアイアンメイデンでございます。ジル様、ナルクル様はご健勝で何よりでございます。ヒマキ様は初めまして。皆様にお会いできて光栄でございます。さて、お時間もないことでございます。皆さま中庭へどうぞ。」

「中庭?」

ヴィルについてぞろぞろ中庭に出ると。

そこには巨大なドラゴンが何匹も居た。

「「ぎゃああああああ!!!」」

全員悲鳴を上げて戦闘態勢に入る。

魔力を消していたのか全く気付かなかった。

「ユーズゥ様、皆さまをお連れしました。」

「ヴィルヘルミーナ様。私に様は不要でございます。ところであの、其方の皆様をお送りするとのことですが、何やら恐慌状態になって見えますが。一応驚かさないように可能な限り魔力を抑えているのですが‥‥。」

未だにトラウマがあるのかカタカタ震えながら、さらに震える面々を指さす。

「龍種を見るのが初めてなのでございましょうか。大きい生物をみるとびっくりしますわよね。」

「そんな感想を持ってるやつは多分おらんぞ。」

ハノイはため息をつく。

「ユーズゥ殿、この度はご足労いただき感謝する。」

ハノイはひと際大きい赤い龍に頭を下げる。

既に話はある程度聞いていた。

「ヴィルヘルミーナ様のご家族同然の方に様を付けていただく必要はありませぬ。ユーズゥとお呼びください。」

「では私もハノイと。さて、この程度でビックリされていてはこの先が思いやられるが、とりあえずユーズゥのお仲間に送ってもらえ。」

「えええええ!? ま、まさか、まさか、え、マジで? マジでこ‥‥、え?」

ヒマキは初めて見る龍もそうだが、言ってる意味を理解して震える。

「ああ、龍に乗って送っていくので、そのまま折り返して帰ってきてくれ。」

「マジか!?」

ジルはちょっと嬉しそうな顔をしている。

「ジル、あなたは適応能力が高すぎでは。」

ナルクルはため息をつく。

「ユーズゥ殿ですかな。お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。」

深くお辞儀をする。

「うむ、人間。安心しろ。先ほど地図を見せてもらったが、夕までには全員往復可能であろう。おぬしらは移動の間に家族や使用人へ良い言い訳を考えておくのだ。」

ユーズゥは手を振るうと、風が巻き上がりジルらを龍の上に乗せる。

「うお!?」

「風の守りだ。速度が速くなると人間は息ができなくなるらしいからな。では、ヴィルヘルミーナ様。」

「はい、よろしくお願いいたします。」

「この名に変えましても。ではお前ら、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれもけが人を出すなよ。」

『ヴォオオオン!!』

地響きのような咆哮とともに、それぞれの領地に向かって飛び立っていった。

なにやら悲鳴みたいなのが聞こえた気もする。

「うわああ!! すごいすごい!」

自宅の部屋から見ていたリアも大喜びだ。

「さて、これから一仕事だな。」

「今からお仕事ですか?」

ヴィルはハノイを見る。

「ああ。領地に龍が現れた言い訳を多方面にしないといけないからな‥‥。」

「その視点はございませんでしたわ。」

「もうちょっと広い視野をもとうね。」

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