2_01 悪役令嬢と長閑な(主観的)一日
「わーい! まてー!」
「はっははー、リア様此方ですよー! いや、あれ、マジで早ッ!!!。ちょ! 私元勇者!! マジで!?」
お久しぶりです、ヴィルで御座います。
なんやかんや御座いまして、ナーラックに戻ってまいりました。
現在、メイド見習いになったハルカ様とリア様の鬼ごっこ中でございます。
「あのぉ、気のせいかも知らないんだけど、リア様の動きが速すぎない?」
レンツ様はジト目で此方を見られます。
「学園でリア様が恥ずかしい思いをしないように、一緒にかけっこの練習を致しました。」
「いやお前、練習とかいう次元じゃないからねあれ。元暗部に追いつく練習って何?」
「おはようございます、ハノイ様。」
ナーラック領領主ハノイ・ナーラック男爵様で御座います。
遠出をする前と比べて若干痩せて見えます。
「目の下にクマができておりますわよ。昨晩は夢見悪うございましたか?」
「いや夢見っていうかなんていうか、俺の手に余る物事が多すぎてね。」
二コリと笑いかけていただきますが、何やら危険な気配を感じますわね。
「遠出から帰ってきて疲れているかなとおもって聞かないでいたんだけれど、幾つか質問いいか?」
「何でございましょう?」
「うちの娘が人外魔境の能力を持っているのは何でなの?」
「はて。Sランク程度ではございませんでしょうか?」
「1桁女児がSランクなんて前代未聞なんだけど!」
「レンツ様のほうが御強いですよ?」
「いや10代男子の中でもかなりの特別製だからねレンツは。」
レンツ様は少し赤くなってそっぽを向かれております。
「座学はベルクートアブル準拠になっておりますが、そこまで無茶はしていないつもりでございますが。」
「こっちの文化レベルと違いすぎるのかもしれないが、家庭教師が感激していたからそれはそれでよい。問題はあの身体能力だ。」
ハノイ様の指の先には、逃げ惑うハルカ様と、追いかけるリア様の愛らしいお姿が。
「可愛らしいですわね。」
「いやそうなんだけどね。元でも勇者に追いつける身体能力って何なの?」
「ただの身体強化では?」
「魔力が無いうちの娘がなんで身体強化使えてるの!?」
「レンツ様のと似たような話でございますが。」
「え、俺? え、リア様も人間やめてるの!?」
「え、レンツ、お前人間やめたの!?」
「あ、言ってなかったでしたっけ。」
「いや、そんな実は引っ越ししてましたくらいの軽いテンションの話なの?」
「ではなくて、グランヴィディアのアレでございます。」
「あー。」
「お前ら二人で納得してないで、ほう!れん!そう!」
「あのー、グランヴィディアのメトスレ大司教から、魔力が無くても魔力を使う方法を教えてもらったんです。」
「ふむ、あとで教えて。」
「特に口止めされて無いので良いですよ。」
「よし。で、リアはその状態なの?」
「若干異なっておりますが。」
「お前の若干ってすんげぇ怖いんだけど。」
「幼少期だけ出来るのですが、イニシエーションという技がございまして。」
「怖い怖い怖い。」
「自分の魔力が大きくなるまでの小技と言いますか、自然に周囲の魔力を集めて使えるように、親や近しいものが子供に魔力の流れを作ることが御座います。もともと強い魔力を持つものはあまり必要ないのですが、少なすぎる場合はそういうことをする場合が御座います。おおよそ成人側の1%程度を毎時間回復といいますか、無制限で使えるような感じでございますわね。結構ややこしい技でございまして、相性が悪いとできなかったりするのですが、私とリア様はこれ以上ないほどの相性でございました。流石リア様。」
通常では血縁関係以外は難しいのですが、そこはやはりリア様。まさに天使でございます。
「ん? それって、要は発動に自分の魔力じゃなくて周りの魔力を使うってこと?」
「さようでございます。」
「‥‥なんか遥か昔に途絶えた精霊魔法ってのがあるんだけどそれじゃね?」
ハノイ様は遠い目をされております。
どうやら精霊におねがいすることで魔法を使ってもらうという技があったようでございます。精霊がなにかは分かりませんが、似たようなシステムなのかもしれません。
「ん? あれ、ってことはうちのリアは例えば4日くらい魔力貯めたらお前の全力と同じくらいの魔法が使えるってことなの?」
「いえ、1%を超えるとあまり溜まりませんので、頑張っても5%程度かと。」
「あー、よかった、びっくりした。」
ハノイ様は安堵のため息をつかれます。
「ん? でもその1%で元勇者に追いつく力出してるの?」
「私も自分の魔力がいかほどあるのか良くわかってはいないのですが、そのようでございますわね。あ。」
勢い余ったリア様に追突されたハルカ様が悲鳴を上げて飛んで行っております。
「あー! ハルカ! ごめんまってー!」
「ぐえぇ‥‥。」
「多分なんだけどさ。」
レンツ様が言い難そうにされております。
「ヴィルさんの1%って、多分それだけで人類最強レベルだと思うよ。」
「うちの娘が人類最強に‥‥!?」
「それとなんですけど。」
「まだあるの?」
「人類最強の魔力が無限ってことでは。」
「‥‥。とりあえずリアには入学までに手加減を覚えてもらわなければ‥‥。」
「今の勢いで突っ込んだら普通の子供は多分千切れますね。」
「どうしようもない場合は魔力封じの枷をアステアラカからもらってきておりますが使われます?」
もらってきているというよりは、壊れたのが荷物に紛れ込んでいたが正しいのでございますが。
「帰り際時間が余ったので修理してみました。」
「何でもできるねほんと。」
「可愛らしくネックレス型に改造してみました。」
「懲罰用の枷にかわいらしさっているのかなぁ。」
「まあ、普段はそれを付けていてもらうか‥‥。庭の地形が変わっちゃう。」
はぁーとハノイ様はため息をつかれます。
「逆にフルパワーで暴走しないようにそこの見極めもやっておかないとな。」
「さようでございますね。レンツ様が丁度よろしいのではないでしょうか?」
「え、フルパワーで?」
「恐らく。」
「マジで!?」
レンツ様も驚愕されております。
その後中庭で行ったレンツ様VSリア様のガチ腕相撲は引き分けになっておりました。
なお、土台にしてた岩が砕けてドローという感じでございました。




