48 悪役令嬢尋問タイム
「まずはわが母国ゲーキでございますが、魔族領をそう申します。連合国が一番近い表現でございます。そして我々の国々を統治されているのがフェンガルという存在でございます。魔神様と呼称することが多く、我々とは桁の違う存在でございます。」
レムは身振り手振りを加えて説明する。
「つまりそのフェンガルがベルクートアブルと?」
「いえ、噂程度なのですが、フェンガルの方々も神を抱いて居ると聞き及んでおります。それこそがベルクートアブルとのことでございます。」
「ほぼ都市伝説の怪談レベルですわね。」
実家はムー大陸と言われたレベル
「私のような木っ端貴族には及びもつかないことで御座いまして‥‥。」
レムは困り果てた顔をする。
「因みになのですが、レム様はなぜこちらにおいでに?」
「恐れ多くも、ヴィルヘルミーナ様に歯向かった愚かなクラーケンと、その操り主が死亡してしまいましたので、原因究明と、後釜の補充、契約魔獣の捕獲でございます。」
「あのクラーケンはやはり人為的であったのか。」
エシオンは唸る。
流石にあのレベルの魔獣がホイホイ出没してたら海運業は全滅である。
「昔より紫の大司祭と呼ばれるものがその役目を負い、国防を担っておりました。今は代替わりしております。」
「私でございます!」
土下座をするウェアウルフがそう叫ぶ。
知らないうちにラウンドの一人をボコボコにしていたようだ。
「勢力を伸ばす赤の大司祭の手駒と勘違いし、危害を加えようといたしましたこと、誠に申し訳ございません!」
「凄まじい勢いの自白だねコレ。」
レンツはドン引きだ。
「我々魔族は相手の心のゆらぎも見ることが出来ます。故に隠し事をするとすぐ解るのです。特に力の差が強いと顕著でございます。」
難儀な一族である。
「こちらこそ知らぬとはいえ、申し訳ないことを。先代の方にはお悔やみ申し上げます。」
「いえ勿論正当防衛ですゆえコチラからは‥‥。」
「ん? つまり、魔族は昔から人類と取引していたのか。ん? 魔族は滅んだと言われていたのは何だったのだ?」
エシオンは首をひねる。
「大変言いづらいのですが‥‥。」
レムはひきつりながら口を開く。
「人類領は全て魔族の植民地でございます。」
「「はあっ!?」」
ヴィル以外は全員絶句。
「数百年前の人魔大戦の結果、魔族の勝利となりまして、隷属の呪いをかけた勇者一味と各国首脳陣に統治させて引き上げることにしました。以降半不可侵となり、問題が出れば介入する程度となっております。」
「なん‥‥と‥‥!」
王子であるエシオンは絶句。
「なんでまたそんなことに‥‥。」
「魔力の衰退とともに人類との差は開き続けた結果ではないかとの学者の見解でした。」
「つまり国王は?」
「言葉を選ばずに申しますと3大大国と呼ばれるものはすべて傀儡政権でございます。」
「なんとまぁ。」
引き継ぎと同時にそういった知識の継承があるとのことで、国王の疲弊はこれのせいであったらしいとのこと。
「魔族領では魔力の衰退や最近の増加は何が原因と??」
「それについては原因不明とだけしか。何分世界規模でして、場所の特定なども難しく。」
「魔王の復活とか言われてたよね。」
「各国魔王様は皆御健勝でございます。」
「世界滅びるコレ。」
「得にならないことは致しませぬ。環境問題は最近の流行りですゆえ。持続可能な開発がモットーでございます。」
「人間負けて問題なさそうじゃない?」
アイオイはぶっちゃける。
「各国の魔獣被害は?」
「流石に野良の雑魚魔獣までは手が回っておりませんが、王族にそれとなく手助けやアドバイスはしております。あまり手出しをしすぎると現地の産業が滅びますゆえ。」
「ハルカのような対聖女とは?」
「もともと聖女は魔族に有利な属性です。危険視するのは当然かと。それゆえ勇者の何人かを本国で暗殺者として鍛えております。まかり間違っても反逆などせぬよう。」
「うおお、怖!」
流石の植民地扱いである。
「聖女とは?」
「わかりませぬ。ただ人魔戦争以前のどこかで急に現れたと言われています。そのため魔族は大打撃を受けたとの記載がございました。」
「それまでは人類は魔法だけで戦っていたのか? 無茶だな。」
「? いえ、魔法など有りませんよ。なぜなら魔法を使うのは魔族だけです。それゆえ魔族と呼ばれております。」
「ん? ならば貴族はなんなのだ?」
「統治後、為政者は全て魔族と混血になりました。その名残でしょう。純粋な人類は魔法が使えないはずです。」
「頭がいたい。」
魔族の血を入れることで相互に嘘をつけなくし、心理的にも縛り、戦力的にも差をつけて転覆させられないようにしているとのこと。
「成る程。高位貴族が魔力が高いのはそういうわけか。ならば当時は魔素を取り込む肉体強化のみということか。」
「メトスレ様が言ってたのは当時の技だったのかもね。」
魔力は放出できずともゴリラな人類と、魔法を使えるゴリラの戦いが、人類と魔族に落ち着いたせいでケリがついたということの様子。
聖女の力が対魔族なら同時発現しにくいのもなんとなく分からなくもない。
「あなたからベルクートアブルに連絡は可能?」
「難しいですが、上に話を通していけば或は‥‥。」
孫請けのバイトに大企業の社長に連絡してというようなもの様子。まず無理。
「ふうむ。とりあえずお父様に宛てた手紙をお渡ししますので、フェンガルの方ともし接触出来そうでしたらお渡ししてもらう形に致しましょうか。」
「ううむ。今のところ不確定要素が多すぎるから無難な選択肢ではあるな。」
エシオンは唸る。
「あの、差し支えなければ一つだけ質問よろしいでしょうか?」
レムがおずおずと手を上げる。
「なんでございましょうか?」
「ヴィルヘルミーナ様はベルクートアブルの方との事ですが、何故聖女の力をお持ちなのですか?」
魔族と聖女は相容れないはずとのこと。
「それは私にもわかりません。」
体の持ち主が恐らく聖女だからとは思うけれども、それならば魔力と聖女の力が共に振るえる理由がない。
魂自体が影響しているのかもしれないがあくまでも確定事項ではない。
「まあ特殊な事例だとはおもいますわね。私自体聖女というものを存じませんもので。」
「ベルクートアブルには聖女は居ないのですね。」
「恐らくは。先程の三層構造が事実でしたら何処かで止まっているのでしょう。」
まあ危険人物は寄せないに限る。
ただ国益的にそのような特殊な能力を無視するなどするだろうか。不自然な話である。
「色々わかったように見えて新しい謎が増えているだけな気がいたしますわね。」
「とりあえずヴィルさんは魔族で、その魔力を受けたから俺らもこんな感じになったのかな?」
レンツ様は首をすくめられます。
「いや、そのような事例はございませんので特殊なケースかと。また、魔族は同族同士は判るのですが‥‥。魔神の方々よりも上位であれば認識できていないだけかもしれませんが‥‥。」
まあ概ねこの肉体のせいだとは思いますが、話すとさらにややこしいことになりそうですわね。とヴィルは思った。
「ふうむ。しかし我々はこのままだと国に帰るのも難渋するな。」
「みんな隠せば良いだけだけど、私とか角生えてるのよ。魔獣扱いで最悪討伐されちゃう!」
アイオイ様はプリプリ怒ってらっしゃいます。
怒っても可愛らしいのは才能でございますわね。
「レム様が変身出来たように、皆様もできるのでは?」
「確かに。」
「魔力を表に出すのは戦闘形態ですので、同じシステムですと、内側に閉じ込めるようにすると戻るかと思います。」
「あ、確かに。」
レンツ様はカンが良いのか直ぐに黒い模様は消えていきました。
「ぐぬぬぬ、どう!?」
「アイオイ殿。むしろ角が伸びております。」
「私細かい作業苦手なのよ!」
グイグイ手で押し込もうとされております。なかなかフィジカルだよりで微笑ましい光景ですわね。
「あのお、因みになのですが我々の処遇は‥‥。いえ、万死に値するのは重々承知なのですが。」
レムはおずおずと尋ねてくる。
「とりあえずは現状維持で良いのではないでしょうか? この国に敵対されているわけでも無いのでしょう?」
「まあそうなのですが。」
「急に重鎮みなさまが塵になられても困るでしょう。ただ、念のため皆様には隷属の呪いをかけさせてもらいます。」
パチンと指を鳴らすとを、全員の首に淡い光が宿る。
「下手なことは考えないことです。」
ニコリと笑いかけると首がもげるかというくらいの勢いで頷く面々。
「あの呪いってそんな簡単にかけれるもんなの?」
「私かけられたとき、なんかまる二日くらい長々した儀式みたいなのあったんだけど。って、あのお、なんか私の呪いのメインが上書きされて主人がヴィルになったんだけど。」
ハルカは首をさすりながら嫌そうな顔をする。
「解呪は面倒ですので諦めてくださいませ。首ごとふっ飛ばすのは可能なのですが‥‥。」
「まあ!見逃されて!文句言う立場ではないけどね!いやほんと!自由ってすてき!チュッチュ!」
目を泳がせているハルカを流石に憐れみの目で見る3人。
「とりあえずここはお開きに致しましょうか。皆様もお疲れでしょう。あ、レム様。地下牢の修繕はお任せしてもよろしいでしょうか?」
「命に変えましても!」「もちろんでございます!」
「あとは地元の方々との相談でございましょうか。そう言えばマルチア様はどうされてるのでしょうか?」
「ああっ!忘れてた!!」
「ハクショイ!」
「マルチア。お主面白いくしゃみをするのだな。」
「カルネイル様にはわからないかと存じますが、年寄りには冷えがつろうございまして。」
「元気そうで何よりだ。」




