38 悪役令嬢と暗躍する人々
翌朝、マルチア宅で。
「報告です。紫のは食あたりで倒れてるだけでした。」
朝食中のマルチアにハルカは昨晩不眠不休で調べた内容を話す。
「あとレムですが、外国の貴族のようですね。騎士団をつれて来ているようです。あまり柄は良くない感じですが、御落胤なのかわりと実際の身分より高くは扱われているようです。どこの国かまではわかりませんでした。既存の国ではなさそうです。」
「この時期にとなると、例のベルクトアーブルなる国の可能性は?」
「ベルクートアブルですよ。まぁ、なんとでもというところでしょうか。」
「目的は?」
「修理っぽいことを言ってましたね。古代の魔導具関連かもしれません。」
切れ目なく繋がる外壁など、アステアラカなどには古代の魔導具が存在する。はるか昔の人魔大戦の頃のものとも言われているが定かではない。大国以外では保管・保持が困難なため中小国ではほぼ存在しないが。
「ふむ。タイミングは偶然という事か?」
「ぱっと見はですが。ご神託関連の可能性もあります。」
「まあ、理由が一つとは限るまい。」
「まあそれはそれとして、ヴィルはどうしますか?」
「敵意はないのだろう? 予定通り午後に来てもらおう。どうやら御本尊を介して創造神様にお話しかけができるのは事実のようだ。せっかくだからアステアラカになにか神託の一つでも私の名前で頂いておこう。」
「流石ですねぇ。」
「金も時間も限りがあるからな。手段を選ぶほどヒマでもない。」
「結局なにがなんだってんだ?」
青年と老人が向かい合う。
「私にも分からん。わかる範囲のことは伝えてあるじゃろう。」
「文字で理解できても書いてある意味が要領を得なけりゃどうしようもないだろう。」
「なにせ当の本人は死んでおる。あとは伝聞であるからして‥‥。」
「とりあえず後任を選んでもらおう。一番似てるのはどれだ?」
青年の後ろには何人もの男が並び、次々と声を出しては控える。
「右から3番目じゃな。一番似ておる。」
「よし。お前が後任だ。しっかり働け。」
「仰せのままに。」
3番目の男は頭を下げる。
「あと、やることは2つか。」
「坊ちゃま。この男の処遇がまだでございます。」
執事がすっと、老人の首に指を這わせる。
「ヒッ!」
「まだ利用価値は有るだろう。」
「お優しい坊ちゃまに感謝なされ。」
すう、と執事は壁に戻る。
「ユーズゥ。お前は後任を見つけて話を付けてこい。」
「仰せのままに。」
執事はバルコニーに向かって去って行った。
バサァ!という、羽音がし、月明かりが一瞬遮られる。
「あの者は‥‥??」
「長生きしたいなら知りたがりは辞めとくんだな。」
若者の後ろに控える男たちは歯をむき出しにして笑う。
「俺は面倒事は嫌いなんだよ。な?」
老人は青い顔をして何度もうなずく。
「そんなこんなで夕方にまた迎えに参りまーす。」
昼食を頂いておりますと、いつの間にかハルカ様が混じっておられました。
「おおっ!? いつの間に!!」
エシオン様は全く気づいておられなかったようでございます。
「心臓に悪いから普通に現れてくれない?」
「レンツ少年、これは私なりの意趣返しですよ! でもヴィルには気づかれていたようだけどー。」
「天井からカーテン裏を伝って降りるところまでは。」
「ほぼ全部じゃん!」
「ヴィルさんって謎に鋭いよね。普段はなんかあらゆるものにそこまで執着なさそう‥‥いや、食事は別か。」
「万が一ホコリが混じらないかと気が気ではございませんでした。」
「そんなヘマはしないよー。」
「ところで話を戻してよいか? 国王と謁見になるのか?」
「うーん、それがいまちょっと立て込んでてー。国防の話だからあんまり言えないんだけど、とりあえず赤の大司祭マルチア様と愉快な仲間たちがお出迎えですー。」
「ラウンドということだな。まあ小国のものがいきなり国王に会うわけにも行かぬか。」
「実際そういう面もないことはないんだけどいやほんといま忙しくてね。ごめんごめん。」
「場所は王宮か?」
「いや、ホントはそうなんだけど、事情が事情だから大神殿ですー。大本尊もあるよ!」
「なるほど。ヴィル殿。できればこれ以上大本尊は壊さぬように‥‥。」
「愛護的に扱えばよろしいのですね。了解いたしました。」
「むしろ愛護的に扱ってなかった‥‥?」
レンツ様はなにか言いたそうにこちらを見ておられます。
「不可抗力でございます。」
「ばあやの次に気に入ってるでしょそれ。」




