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35 悪役令嬢と夜遊び仲間

翌日の予備日ですが、本日は視察となっております。

とはいえ、港町なのでそこまで大きな差は無さそうに見えますが、エシオン様曰く、船着き場の形等が大事だとのことでございます。

「レンツ様、この干物などはお土産によろしいのではないでしょうか?」

「そうだね。でもまあ食品だから帰りに買おうか。だから一旦手を下ろそうね。」

「馬車の中で食べるというのは?」

「多分においがえげつないからシバかれるとおもうよ。」

「世の中ままなりませんわね‥‥。」

「まあ、昨日のチーズパンでももらって行こうね。」

「ふむ。とてもなんだか元気が出てまいりました。」

と、なにか懐かしい気配を感じました。

「どうかした?」

「はて、何やら懐かしい感覚が‥‥、何とはいいがたいのですが。」

「気配は探ってはいるけど、特に不自然なことはないなぁ。遠くまでいくとちょっとわかんないけど。」

「‥‥、もう消えましたわ。何だったのでしょうか。」

「なんだろうね。ちょっと気にしながら行くのがいいかな。あとでエシオン様とアイオイ様にも伝えておこう。」

「気のせいかもいたしませんが、まあ、念のためですわね。」

その程度で目くじらを立てるような方々では御座いません


「特に敵意があるわけではないのだな?」

エシオン様は渋い顔をされております。

「特に此方にどうのこうのというよりは、なんだか母国にいたときの感覚と申しますか。」

「創造神様がわざわざこの国を選ばれたということは、ひょっとしたらなにかつながりがあるのかもしれぬな。敵意が無いのであれば過度に警戒することもあるまい。いつも通りがむしろ一番よいであろう。」

「まあ、念のため聖女の力ちょっと強めに出しとくね。」

アイオイ様はぐっと力こぶを作られます。

聖女の力は筋力なのでしょうか?

「そういえばアイオイ様とエシオン様はなにか面白いものは見つかりましたか?」

「そうだねー。海産物が多いけど、やっぱり種類が違うからみてて面白いね!」

「回遊魚が多いからか赤身の肉が多い印象だな。産卵のために来ている魚も居るようで、なかなか脂がのっていた。」

「今日の晩はそれにいたしましょう。焼いて塩をかけただけがとても良いと思いますわ。やはり素材の味をみるのであれば塩。塩にまさるものはございません。取り過ぎはむくみやらなんやらで体に悪うございますが。」

「やっぱり食だと饒舌だねぇ。」


その晩も特に問題もなく、平和な夕食でございました。

そして目がさえてしまいました。

となるとやることは一つでございます。

「さて、やはり夜遊びは大人のたしなみというやつでございましょうか。」

窓からすっと飛び出して屋根の上に登ります。

石造りの家々の向こうに、少し大きめの砦が見えます。

交易の要所は勿論逆に言いますと攻められやすいという事でございます。

大きな戦争自体は記憶のある限り存在しないとのことですが、魔獣被害もやはりあるとのことで防御はしっかりしているとのことでした。

「ところで夜空いている店などございますでしょうか?」

私は背後に立つ方に話しかけます。

「あ、気づいてるのね‥‥。」

黒づくめの方、声からは女性でしょうか。は、あきれたような声を出されます。

「私結構敏い方のようで御座います。」

「はぁー。一応敵じゃないからね。国王から護衛と、まあ、一応監視を承ってるからね。言い訳じゃないからね。」

手を挙げてはぁーとため息をつかれます。

「というか護衛要ら無さそうだねこのメンツ。田舎とは思えないくらいの強さじゃん。」

「ご時世的に鍛えざるを得ないようでございます。恐らく田舎は都会ほどの人手が無いからではないでしょうか。」

「まあそうだろうね。で、夜遊びのお誘い?」

「まだ右も左も分かりませんもので。」

「はぁー。じゃあ行こうか。美味しいお酒‥‥は無理か。ジュースもおいてるところあるから行こうか。」

黒づくめの方はくるりと回転すると、普通の町娘のような格好に変わりました。

「魔法ですの?」

「いや、これは単なる技術。じゃあ行こうか。飛び降りれるでしょ?」

「勿論でございます。」


港町は夜中とはいえ、にぎわっております。

昼夜逆転しているような船乗りの方相手がメインとのことでした。

お酒を飲んで上機嫌の方や冷えた空気をものともしない薄着の女性等が雑多に存在していて、とても興味深い光景でございます。

「お嬢様には刺激が強いんじゃないかい?」

「とても興味深い光景でございますわ。ところで何とお呼びすれば?」

「ハルカ。まあ、偽名だけどそう呼んで。」

「了解いたしました。私の事はヴィルと。」

「ヴィルね。OK。とりあえずナンパが来たら蹴り飛ばしていいからそれだけ覚えときな。」

「ナンパですわね。本で読んだことがございますわ。」

「多分本になるようなきれいなナンパしてくる奴はいないだろうけれどね。まあ、でも杞憂かも。ほれ、ここの店だ。」

「貝のマークですわね。」

「ムール貝が有名なんだよ。白ワインで煮たやつがうまいんだ。おい、オヤジ、いつもの! あとぶどうジュースな!」

ハルカ様は店の前のテーブルに座ると、ランプに火をつけ、奥に向かって叫ばれました。

「うるせえやつら相手だから耳も頭もバカになってるんだよ。」

「誰がバカだボケが。店長と言え。」

奥から現れた巨躯の男は、ゴン、とジョッキをハルカ様の頭に落とされます

「なんだよオッサン、金づる連れてきたってのによ。」

「お前本人目の前に金づるとか言うなよ。どこかのいいとこのお嬢ちゃんだろ。こんな辺鄙なところにきたらこいつならいいんだが、お嬢ちゃんなんてすぐにナ‥‥。」

目が合った瞬間、店長様は手に持っていたジョッキを落とされます。

「オッサン、おーい、オッサン、目を覚ませ。」

「はっ! てめえの顔をみたら正気に戻ったぜ。こいつはすげえド美人じゃねえか。船に乗り出したガキみたいな気持ちになっちまったぜ‥‥。」

「でしょー。私も遠くで見て正気失いそうだったもん。」

「ヴェールでも被っておいた方がよろしいでしょうか?」

「それはそれで変なのが来そうだからヴィルはそのままでいいと思うよ。見てよあそこの酔っぱらい。さっきまでゲヒゲヒいってたのに背筋伸ばしてチビチビウイスキーなんて飲んでら。」

「うちの店をお上品にするのはいいんだが、金は落としていってくれよ。」

「お味期待しておりますわ。」

「お‥‥おう。待ってな。」

店長さんは同じ方向の手足をだしながら店の奥へ行かれました。

「アッハッハッハ!! 思春期のガキかよ!!。爆発したゴーレムみたいな見た目の癖に!。」

「なかなか覚えやすい見た目の方ですわね。」

「いや、ヴィルが言うそれ? っていうか何処の人なの? あなたみたいな見た目の貴族がいるなんて聞いたことないんだけど。」

「ベルクートアブルというところなのですが、皆様誰も知らないようでございます。」

「聞いたことないねー。ここら辺?」

「どうやら海のど真ん中のようでございます。」

「アッハッハハ! わけわかんねえ!。じゃあ海底からようこそアステアラカ!」

ビールの入ったジョッキと、ぶどうジュースのグラスが音を立てて、夜の闇に消えていきます。

「ほれ、バゲットもつけておいたぞ。このバゲットは奥のアホから、スープは1個手前のアホからプレゼントだとよ。」

奥を覗くと、顔に傷のついた巨躯の方が、小さく縮こまって、顔の横で小さく手を振っていらっしゃいます。

「ご厚意有難うございます。」

私も手を振り返しましたら、その二人とも倒れてしまいました。

「アホはほっといてたべよたべよ。」

「よろしいのでしょうか?」

「頭打ったところで、中身入ってないからもんだいないっしょ。ほれ、貝で身を挟むのが本場の食べ方だよ。」

「トングのようですわね。ふむ、これはとても美味しいですわね。チーズと米があれば‥‥、いや、パスタか‥‥、醤油と日本酒で煮込んでもおいしそうですわね‥‥。」

「何をブツブツ言ってるの。ああ、でも最後シメでリゾットにしてくれるよ。」

「なるほど。早く食べましょう。」

「いや、無くならないから。欲しかったらおかわり頼んであげるから。」

「ふむ、アステアラカ。良い国ですわね。私とても気に入りました。」

「魔王みたいな言い方するのやめよっか。」


「そんなこんなで仲良くなりましたハルカ様です。」

朝皆様にご紹介いたしました。

「ハルカでーす。本当はひっそり護衛するはずだったのに速攻で見つかって正直なんて言い訳したらいいのか良く分からない状況でーす。あ、Sランクだから安心してね。」

「お‥‥おう。」

アイオイ様はドン引きしておられます。

「まあ、アステアラカのご厚意ととらえておく方針で良いのではないか?」

エシオン様はいろいろかんがみた結果そう結論づけたようでございます。

「それが良いと思うよー。私結構すごい人だから。本当はね。いや、言ってて悲しくなってくるけど。」

「まあ、深くは気にしない方がいいよ。」

レンツ様はハルカ様の肩をポンポンと叩かれます。

「まあ、さすが託宣の巫女って感じですかね?」

「そのような呼び名に?」

「私も良くは聞かされてないんですが、創造神様が名指しにするなんて前代未聞でしょー。そらもうえらいことですよ。実際の能力なんて無くても大聖女レベルの扱いになるんじゃないっすかね?」

「ふうむ。まあ、ここから先は国同士のしがらみも出てくる。上司に直接話すのがよかろう。」

「そうっすねー。正直私はそういう細かいのは苦手なもんで。得意なのはこんな感じっすね。」

ハルカ様は、地面の石を軽く蹴り上げると、一瞬ブレたようになり

「じゃーん。」

石がまるでポテトチップスのようにスライスされておりました。

「見えないほどの速さだな。お主も聖女か?」

「いや、私は勇者っすね。女性で勇者って珍しいでしょ。」

「なるほど。道理で。」

「まあ、倒す魔族も存在しない時代の勇者って何のためって感じっすけど、こんな感じで国の役には立ってるかんじっすねー。」

「時代とともにいろいろあるのですね。」

魔族という、恐らく人類に敵対する種族がいたのでしょう。

「船の時から気になっていたのですが、魔族とは何でございましょうか?」

「え、魔族って聞いたことない??」

レンツ様がびっくりされております。

「魔獣みたいなものでございましょうか?」

「まあ、似てる‥‥? 人類に敵対する種族って感じなんだけど、まあ、でも正直遥か昔に滅んでるから誰も分からないんだよね。」

「人間の上位種のようなものだったのではないかとは言われているが良くわかってはいない。魔獣との間に生まれた等色んな説はあるが、何ともだな。」

「アステアラカは古い国ですから昔の伝承がのこってるかもっすねー。王様の許可が出たら禁書庫にいってそんな文章みつけて私に教えてくれたらお金払うっすよ。」

「誰に売りつけるつもりなのよ。」

アイオイ様はじーっとハルカ様を半目で睨みつけます。

「情報は金っすからねー。」

「禁書庫の内容が言えないからそこにあるのでは?」

「ヴィルさん。まあ、その通りだろうね。」

レンツ様は首をすくめます。

「取りあえず、腕もわかったから道中頼んだ。」

エシオン様は手を差し出します。

「お任せアレー。」

ハルカ様も握手されます。


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