表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/138

30 悪役令嬢の戦場

「ヴィルさん!! このクソタコがッッ!!。」

レンツは刀に力を込めようとしたが

「ガハッ!」

「うわあ! 癒やしよ!」

アイオイは慌てて、ゴン!と頭から音を立てて崩れ落ちたレンツに駆け寄る。

ドボドボと口や鼻から赤黒い血が流れ出ている。

「ううう重症じゃん!。」

「蛮勇だ! 魔力が無いものが使う技ではない!」

なんとか駆け寄ってきたエシオンはレンツを横向けに寝かせる。気道を塞がないためだ。

「魔力が無い分命を持っていかれるぞ。馬鹿者が‥‥。」

「私が診てるからエシオン様はヴィル姉を!」

「そう言えばヴィル殿は!?」

「あっちにふっ飛ばされ‥‥て‥‥?」

大穴が空いている船室からゆっくり歩み出る人間がいた。

「せっかくの服が汚れてしまいました。」

全くの無傷のヴィルであった。

「ぇぇ‥‥。いや、聖女は頑丈だけども‥‥。」

ふるふると頭を振って、木くずを落とす。

「水もあのような速度だと中々な力ですのね。私びっくり致しました。」

「そうだ!! びっくりしている場合じゃない!!。」

アイオイは完全に忘れていたクラーケンの方を向く。

先ほどまで水弾を打っていたクラーケンは、静かにこちらを見ていた。

「はて、そういえばレンツ様は‥‥?」

ヴィルがきょろきょろと周りを見回して、血だまりに伏しているレンツを見つけた。

「レンツ様?」

「癒しでなんとか峠は越えたよ。」

レンツを後ろに庇いながらいつでも防護を出せる態勢でクラーケンを見るアイオイ。


ヴィルはふっと、顔を上げてクラーケンを見つめる。

クラーケンもヴィルの方を見て、目が合っているように見えた。と、エシオンは後に語っていた。

次の瞬間、クラーケンは伸ばしていた足を引っ込め、激しい音を立てて海中に消えていった。


「逃げた?? 見逃してくれた‥‥?」

アイオイはへなへなとへたり込む。

「久々にかなりの力使ったから疲れた‥‥。」

「ヴィル殿! お怪我は!?」

エシオンはヴィルに駆け寄り、失礼にならない程度に見回す。

「かすり傷一つない‥‥。大聖女というよりもはや大勇者レベルではないか‥‥!」

「ですが水と埃でぐちゃぐちゃでございます。」

「その程度なのが異常なのだが。」

「私、割と頑丈でございます。ところでエシオン様。あのクラーケンはどうなったのでしょうか? 居なくなって見えますけれども。」

「ああ。逃げたか‥‥見逃してくれたか‥‥。」

「さようでございますか。」

ヴィルが手をすうっと上げると、ヴィルの体から埃まみれの水が吸い上げられ、ひと塊になる。

「ほう。便利な技だな。風呂の代わりになりそ‥‥。」

ヴィルが手をぐっと握った瞬間、塊の水が氷に変わり、ギチギチと聞いたことのない音を立てて小さくなっていく。

「ヴィル殿?」

「ふうむ‥‥。」

更に力を込めると、最初の半分程度の大きさになった。

「ヴィル殿!?」

「お礼です。」

ヴィルが手を前にふい、と動かすと、キイン!と高い音を立て、小さな槍のようになった氷は海に突っ込んで消えていった。

「ヴィル殿!?!? あれは‥‥」

エシオンが何かを言いかけた瞬間、ドウン!と、低い音とともに船が一瞬浮き上がる。

「うわぁ!、なんだなんだ!?」


「海が盛り上がったぞ!?」

「海底から何か上がってくる!。」

「泡!?」

「やば!神のご加護を!」

少し離れた海面を見ていると、上がってきた気泡がちょっとした丘の様なサイズになり、バアンとはじけて、船の上に海水が降り注ぐ。

「熱!!熱!!熱!!。」

「熱湯だ!。」

「なんか混じってるぞ。タコの欠片‥‥??」

「まさか‥‥。」


「ヴィル殿。今のは‥‥。」

「レンツ様のお礼と、後顧の憂いを無くしただけでございます。初めて攻撃魔法なるものを使ってみましたが、思ったより思い通りにはなりませんわね。」

ヴィルは手をわきわきさせながら不満顔をする。

「微調整は難しいものでございます。」

「微調整‥‥。」

どう見てもSランク魔術師数人分の全力攻撃に近いレベルであるが、これが微調整。

「友人の王女様は目線だけで小山を吹き飛ばすことができました。懐かしい思い出でございます。」

「どんな魔界から来たのだお主は。」


後日、王都の一角である男が果てていたのが見つかる。

事件と自殺の両面から捜査はされたが、密室でもあり、結局は自殺ということで決着がついた。

ただそれだけの話。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ