28 悪役令嬢と不穏な気配
とある豪奢な一室で。
「神託とはなかなかおしゃれな言い回しじゃな。」
「まあ一神教といえばそうですからなぁ。」
「南方より来るヴィルとやらに注意しろとのことか。」
「先の聖なる力の爆発と関係が?」
「一時的かも知れぬか魔物が減ったと聞いておるぞ?」
「赤の大神官殿も何を企んでいるのやら。」
「あの爆発を意図的に出来るのならば危険視してもやむを得ないであろう。」
「魔獣との共存など夢ではないか?」
「駆逐したところで資源が減るだけだ。それに新しく湧いてくるのは凶悪と言うではないか。」
「南のは未知の魔物と?」
「さあて。何処まで言を信用するかだが‥‥。」
「紫のが絡んでいるとの噂は耳にした。」
「赤のではなくか?」
「謎じゃな。大神官とは言うが紫の奴。聖女の力を見たことはないぞ。」
「紫のは国王以外素顔も知らぬとのこと。」
「赤のやつも何を考えておるのやら。これだから神職の奴らは。」
「紫のはなんと?」
「いつも通りじゃな。安寧を優先せよとのこと。」
「気軽に言いおる。」
「神職にあるものの手が汚れるわけにはいかんじゃろうて。」
「これが海と言うやつですか。」
お久しぶりです。ヴィルでございます。この出だしも久々な気がいたしますね。
現在船着き場に参っております。
アステアラカに向かう主要メンバーは私、レンツ様、アイオイ聖女様、護衛のエシオン王子でございますが、立場が立場ですのでその護衛や世話役のメイドなどで大所帯でございます。
「いや、ヴィル殿、まだここは川というか湖だ。」
「海のあの独特の香りがないですからねー。川魚も美味しいんですけどよく焼かないとヤバいですよ。」
「お二人共詳しいのですね。私も冒険者をしていましたがここまで遠くにはあまり来たことがないです。」
「わたしはなにせ仕事で世界を巡ってますからね。あとレンツくんはもうちょっと砕けた感じにしましょう! お忍びですからね!。」
「私はどういたしましょう?」
「ヴィル殿は何をどうしても平民には見えないので楽な形にするのが良いと思う。」
「それエシオン様もですよ。」
「ぐぬっ。そうか?」
「黙ってるとキラキラ王子にみえますね。」
レンツ様は呆れた顔をされます。
「エシオン様って、喋るとなんか弟を思い出すんですよねー。反抗期になる前位の。実家のみんな元気かな。」
「弟‥‥。」
「あ、あれが船かな!?」
レンツ様が空気を読んで話を変えました。
「大きな船ですね。映画に出てきそうですわね。」
「この辺りは川とは言え水深はかなり深いので、大型船も乗り入れが出来る。」
魔力がある冒険者に手伝ってもらって治水工事もしっかりとのことでした。消波ブロックみたいなのでガードされております。
「これなんでこんな変な岩おいてあるのかしら? お風呂みたいにツルツルにしたら綺麗じゃない?」
「カチカチにすると生態系に良くないらしくこうなっている。」
「ほー。みんな色々考えているんですね。」
皆さん楽しそうに色々見て回っておられます。
「ヴィルさんは海は苦手?」
「川や海と魔力の相性はあまり良くないようで、酔いが酷くなると言われておりまして緊張しております。」
母国のものが外に出ない理由で大きいのはそれでございます。
「確かに王族は船酔いが多い気がするな。引きこもり体質だからかと思っていたがそうでもなかったのか。」
エシオン様は顎に手を当ててふうむと考えられています。
「なるほどー。川をまたぐと魔獣の種類がガラッと変わるのってそれなのかもね。」
「貴族を魔獣扱いするのは辞めてくれないか‥‥。」
エシオン様は嫌そうにされています。
「まあ困ったら言って。ナーラックから酔い止めとか色々持ってきてるから。」
「レンツ様はやはり頼りになりますわね。」
「我々も手持ちの薬はあるゆえ、困ったときは何時でも頼ってくれ。」
「ご厚意痛み入りますわ。」
「とりあえず出航まで時間があるから、あっちで川魚も焼いてくれてるみたい。ヴィル姉は串に指したまんまだけど食べれる?」
「郷に従うのがプロというものでございましょう。さあアイオイ様、参りましょうか。」
「あ、ちょっと待ってください! 歩くの速っ!」
「やっぱりヴィルさんはご飯になるとアグレッシブだなぁ。」
レンツは呆れ半分、元気そうで何より半分の顔をする。
「レンツよ。今少し良いか?」
「何でしょうか?」
「いや、これからはお忍びだから立場をぼやかそう。私も護衛で行くからな。言葉遣いはもう少し砕けておこう。これは仕事の一環だ。」
「了解。エシオンさんの指示に従うよ。慣れてる人に習うのが一番だからね。」
「助かる。そこでだ。ハノイからも色々聞いては居るが荒唐無稽過ぎるので確認したい。立ち入り禁止を区域を半裸で徘徊していたというのは‥‥流石に本当ではないとは思うが実際は何だったのだ?」
「いやまあ、ナーラックにはご存知の災害陥没があるじゃないすか。あそこのほうから木と草で作った胸当てと腰蓑、あと石の槍と斧かな、を装備して村にやってきたところを立ち入り禁止を破った罪で牢屋に入れられてたのが最初かな。」
「なんと‥‥。」
「なんでそこにいたかは未だに謎のままだけど怪我もないから転移か何かの魔法かもとはハノイ様は考えていたみたい。」
「伝説には聞くが使えるものなど聞いたことはないな。」
「ハノイ様は、この前の暴走をみてた。皆さん聖女の力に気を取られていて気づいてなかったら言えと言われてたんだけど、あの時聖女の力は分からなかったけれどかわりにえげつない魔力が出てたらしい。」
「ふむ? ということは、あれは実際は魔力だったのか?」
「いえ、アイオイ様が聖女の力と感知した以上は聖女の力でしょう。エシオン様も感知されたのでは?」
「たしかにそうだな。普通の聖女の力とは違ってはいたが。」
「ヴィルさんは、聖女の力と魔力を同時に使えるのではないか、と考えています。」
「通説が根底から覆されるが‥‥、ならばこの前の鑑定は?」
「単に本人が普段抑えていて、使いこなせてないから片方しか普段は使えない可能性があります。」
「一番可能性は高そうだな。王族から取り合いになるぞ。」
「継承問題がうまいこと行けば減りますからね。」
「メトスレ様も今のように落ち着くまでは荒れていらっしゃったと聞いている。」
「ああ‥‥やんちゃな感じっすね‥‥。」
「何れにせよ、セントロメアは小国だ。アステアラカとはかなり空気が違うのは覚悟しておくと良い。」
「この厳戒体制はそれが原因なのですね。」
「下々の平和とは中間管理職の涙で作られているとわかるぞ。」




