27 悪役令嬢とゆかいな仲間(ゴリラ)たち
「ということでアステアラカ王国へ行くこととなりました。」
エシオン様は真面目な顔でアイオイ様にそう告げます。
「へぇっ!?」
突然のことで変な声を出されております。
ファストロットの時とはかなり雰囲気が違いますがやはりこちらが素なのでしょうか。
「まあ事情はわかっ‥‥ごほん!、了承いたしました。道中の身の安全はおまかせくださいませ!」
アイオイ様は胸を張って笑いかけてくださいます。
「アイオイ様は戦われますの?」
「聖女の力は生命に関わる力ですわ。自らに向けると身体能力の強化になります。私程度でも片手でエシオン様を持ち上げることはできる‥すわよ。」
「あの、普段通りの話し方でも大丈夫でございますが。」
「あ、やっぱり? なかなかなれないんだよね。ごほん。とりあえず私とエシオン様が居れば大概の魔獣は大丈夫です! どーんとおまかせくださいませ!」
後でエシオン様に教えて頂いたのですが、聖女様はほぼ戦闘などしない平民の方が多いため、剣など扱えない事が殆どとのことでした。腕力ゴリラのため聖女様の武器は棍棒かメタルナックルだそうです。それを聞いたレンツ様は遠い目をされておりました。
「アステアラカまでは船が出ております。秋までまだ時間はございますので問題ないでしょう。アステアラカは冬になると雪と氷に閉ざされます。とはいえ中央は地熱の影響かそこまででもないのですが、周囲の山々はそうは言えませんので、封鎖されたような形になります。天然の要塞と言われますね。」
エシオン様は地図を指さしながらお教えくださいます。
「秋でもたまに結構冷えるのでマフラー1個あると便利ですよ。」
アイオイ様は神妙な顔をされております。
「本当に冷えるとき冷えるんですよねあの辺。ヴィル様のご実家は冬とかどんな感じでした?」
「ヴィルとお呼びくださいませ。そこまで冷えたり暑かったりした記憶はございませんね。部屋の中は空調も効いておりましたし。空気を冷やしたり温める魔道具がございました。」
「それ便利だねー。アステアラカでは王宮にはあるらしいんだけどねー。まだまだ庶民には手の届かないブツだねえ。ヴィル姉さまのところもそんな感じでした?」
「下町でも販売していたような記憶はございますが正直あまり出歩いていないのでいまいちわかりませんわ。」
「しれっと姉さま扱いされてるけど良いのかな?」
「レンツ君は私のことをアイオイ姉さまとよんでもいいですよ。」
「流石に不敬が過ぎると思うのですが。」
レンツ様はエシオン様に目線を送る。
「な‥‥ならば私の事ははエシオン兄と呼んでくれてもいいのだぞ?」
そわそわしながらエシオン様はそういいます。
「エシオン様。正気に戻りましょう。」
多分あれは兄ではなくて義兄と呼んでほしいやつだなとレンツは思った。
「あー、で、アタシらは一旦ナーラックに戻るね。」
アリサ様とソーマ様はそうおっしゃいます。
「一旦ハノイ様に色々伝えなきゃだしね。私らは足手まといになりそうだし。」
「足手まといなんてとんでもございません。アリサ様にはとても助けられましたわ。」
「ああうんありがとう‥‥。」
アリサ様の手を取ってそうお伝えすると顔が赤くなっております。
「ヴィルも実家に帰れるといいな! 実家が分かったら教えてくれ! 世話になったからお礼に行くぞ。」
ソーマ様はそういって握手して下さいます。
「皆様のご恩情は忘れませんわ。」
「平民がほいほい行ける程度の敷居とは思えないけれど‥‥、まあ無粋なことは言わぬが花かな‥‥。」
「レンツ様、何かおっしゃりました?」
「ん、いや。俺はヴィルさんを送ってくよ。護衛だしね。この2週間でちょっとは鍛えられたし。」
私が彼方に行っている間にレンツ様やアリサ様、ソーマ様はメトスレ大司教にみっちり稽古を付けられたとのことでした。
「普通の人間は魔力を持たぬが、持たぬからといって使えぬわけではない。大気に薄く存在する魔力・魔素を使うことができれば一段階強くなるぞ。アリサやソーマ、おぬしらは弱いが自分の魔力を持っている。それと大気内の魔力を認識すればもっと効率よく動けるようになる。」
死屍累々の3人の前でメトスレはそう教える。
「流石にレンツ、おぬしみたいな無魔力では炎を出す等は無理じゃろうが、肉体強化には使えるじゃろ。深呼吸して肺から魔力を取り込むんじゃ。」
「さっぱり感知できないのですが‥‥。」
「まあ、こればっかりは自力でどうにかせねばならぬが、大体こういう場合は死にかけると出来るようになるのがセオリーじゃてな。感知できるまでボコるだけじゃ。さて、第4ラウンドじゃ。逃げ延びよ。」
メトスレが右手にはめているメタルフィストが神々しい光を放ちます。
「なあに、重傷程度ならわしが治してやるぞ。」
「「「ヒィィィ!」」」
「思い出したくない記憶の一つになったよ‥‥。」
レンツ様は遠い目をされておられます。
「でもわしのおかげで2週間目には身体強化使えるようになったじゃろ。平民でも使えるように鍛えるのはわししかできんのじゃぞ。」
「とてもありがたいのも重々承知です。」
「そういえばレンツ様は冒険者ギルドの更新があったのでは?」
出発時に何かそのような話をしていた記憶がございます。
「ああ、もう済ませたよ。おかげさまでAランクまで上がれた。だから今回ついていくってのもあるんだよね。大聖女の護衛は最低Aランクだからさ。」
一応見習い聖女の筈ですが、完全に対外的な話だけの様子でございます。
「聖女の力は魔を払うが、その力はやろうと思えば無辜の民に向けることも可能じゃ。念のためにってことじゃよ。」
「安全を期してならば私はむしろお願いする方でございます。」
「殊勝じゃのう。」
「皆様には恩がございますゆえ。」
0の人物紹介を記憶の整理がてらちょこちょこ変えてます




