26 悪役令嬢はよくわからない感じ
「結局ヴィルさんって何者になるの? 聖女?貴族?」
レンツ様は首をひねられます。
聖女と勇者の能力を出現させたメトスレ様は王位から去るレベルでございます。私はどうなるのでしょうか。
「どっちでもあるのう。わしみたいなのの延長かのぅ? わしの場合は聖女だからというよりは魔力がないからみたいなことを言われた気がするのじゃが‥‥なにせ前例がわしもなくてな。聖女自体まれじゃからなぁ。」
「王族の方はお持ちなのでは?」
私は小声で尋ねます。
「前にも言ったが全員ではないが王族は聖女の力を持っている。が聖女ではない。正確に言うなら聖女の力を行使することは出来ん。癒やしの技が使えない聖女だと思ってもらえば良いと思う。」
「聖女から癒やしを抜くと何が残りますの?」
「ストレートな疑問だな‥‥俺以外には口が裂けても聞くなよ。感知のような受動的な行為は可能だ。前にファストロットで言ったのはその力を使っただけだ。癒やしの技が使えるものは時折出るが漏れなく魔力はほぼゼロになっている。相性のようだな。機密だから墓まで持って行ってくれ。」
「お気遣い痛み入ります。」
聖女とは聞くほど不思議な存在のようです。
元々稀な存在やら、多忙やら、聖なる力のためか、普通の方よりはやや子を成しにくいなどあるとのことでございます。特に上級聖女は顕著のようで、聖女の力も遺伝にはなるけれどもあまり発現もしないとのこと。そのためか数はゆっくり減っているようでございます。なのでメトスレ様のような強力な聖女の力は小国の王族よりもよほど大事とのことでした。
「なかなか難しい話でございますわね。」
「慣習だと大聖女のほうがおそらく優先されるだろう。」
エシオン様は顎に手を当てて思案されております。
「ただ、両立が不可能かはわからぬ。おそらく国の方針によるのではないか? ヴィル嬢が聖女に興味がないのであれば貴族位を与えても囲いたい国はいくらでもあろう。父上もそう仰っていた。」
セントロメアも、とのことですわね。
「何れにしてもアステアラカに行ってから考える形でございましょうか。何かしらご連絡いただいているとのことで早めがよろしいかと。」
「それもそうなんじゃがこれがこんな感じてほったらかしにするとワシも流石に言い逃れが難しくてのう。」
木っ端微塵の御本尊を見ながらため息をつかれます。
「とりあえず反応がよく分からなかった程度の聖女に与える見習い聖女の印は授けるので、それを身分証にすると道中はスムーズじゃろ。」
「叔父上。見習いで宜しいのでしょうか?」
「そりゃそうじゃ。よくわからない反応だったじゃろ?」
「まあよくわからない感じでしたが‥‥。」
「アタシが思うに言葉遊びにも程があるきがしない?」
「でも、うそじゃないぞ。」
「だから尚更たちが悪い気がするんだけど。」
「本来なら大聖女としてアステアラカの大司祭様にパレード付きでお送りもできるが‥‥。」
「それはご遠慮致します。」
「まあ向こうで動きにくくなるじゃろうからな。ただ創造神様がご連絡なさるなら大司祭じゃろうて。」
「ううむ‥‥‥。」
「とはいえただの見習い聖女がホイホイ会えるわけでもないからわしが紹介状を書いておこう。」
「よろしいのですか?」
「自由の価値はわかっとるつもりじゃよ。」
メトスレ様はおちゃめにウインクをされます。
「叔父上は十分自由にされているように思えますが。」
「だからいつまでもお主はヒヨッコなんじゃよ。アイオイに言いつけるぞ。」
「んなっ!?」
「ついでじゃ。お主もアステアラカまで同行せよ。そのほうがスムーズじゃろ。」
「「ぇぇ!?」」
みんな驚いていらっしゃいます。
「大本尊破壊事件は責任者不在ですっていうのを手紙だけで済ますわけにも行くまい。」
「他国の私がいくと問題になりませんか?」
「まあ、わしの血縁じゃし、アイオイもつけるぞ?」
「えぇ!?」
「やつの実家はアステアラカじゃろ。なんか知らんが最近魔獣も落ち着いてるようじゃし今のうちにたまには家に顔を出しておけと言っとる。お主が【実家】まで送ってくれれば安全じゃしな。」
「あれ完全に遊んでるよね。」
「人の恋路はなんとやらだぞ。」
「まあ背中を蹴りたくなる気持ちはわからんでもないね。若人だねぇ。」
「アリサも然程変わらないでしょ。」
「俺らと同い年だぞ。この前聞いた!」
「若いねぇ。」
「レンツは老けすぎなんだよ。」
「ぐぬぬぬぬ!」
小さな聖堂なのでヒソヒソ声は丸聞こえであった。
「私としてもお知り合いがついてくださると安心いたしますわ。何せ右も左も分からぬ身でございまして。」
「あとはお主を野放しにしておくとなんか大変そうな予感がしておる。」
「まあ叔父上の言うことも分からないではないが。」
「個人的にはなるべく穏やかに生きていこうとはいたしてはおりますが。」
「本人の希望が現実にそぐうか否かを決めるのは第三者じゃてな。」
「なかなかままならない話でございますね。」
「とりあえず叔父上。このようなところで長々するのもあれですから一度上にいきましょう。」
「そうじゃな。ついでにお主はアイオイも呼んでくるが良い。」
「了解いたしました。」




