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25 悪役令嬢と通信障害

「そういえば御本尊を見に行きたいっていってなかった?」

レンツ様がポンと手を打たれます。

「すっかり忘れておりましたわね。」

「御本尊になにかあるのかの?」

メトスレ様は不思議そうにされます。

「空白の記憶の合間に御本尊を見に行けというのがございまして。」

我ながら胡散臭いことこの上なしでございます。

「ふうむ。ま、よかろ。こっちじゃよ。」

メトスレ様は山へ向かわれます。

「大聖堂ではないのですか?」

「何百年か前に壊したバカモンがいてな。今は山奥に安置されておる。大聖堂のはその後につくられたやつじゃ。まあ何をもって本物というかは悩ましいところじゃがな。とりあえず暫定的には古いほうがこっちじゃな。」


山の上まで登りますと、木々のない一角が見えてまいりました。石で作られた泉の横に、また小さな石造りの祠がございます。

「侘び寂びでしょうか。とても落ち着きますわね。」

「実際ここらへんは浄化されてるみたい。聖女様が通ったあともこんなかんじだよ。」

アリサ様は周りをきょろきょろ見回されております。

「路上も等間隔で御本尊を配置したら安全になるのでしょうか?」

「気の遠くなる話だねぇ。まあ他のところでは聞いたことが無いからここだけの特徴じゃない? 御本尊で浄化というか浄化されたところに安置されているみたいな。」

「レンツ頭いいな!」

「実際どっちかは判らんのじゃよ。浄化の力は目に見えるものでもないし、調べるのも不敬ちゃうかみたいに上からストップがかかったようじゃしな。」

「まあ見えないならしょうがないよね‥‥。」

レンツ様が何かいいたそうにされてはおります。

その間にメトスレ様が扉に手を当てられますと、ゆっくり入り口が開いていきました。

自動ドアのようでございます。

「わしと、一部の人間以外開けることはできん場所じゃ。申し訳ないがヴィル殿以外は遠慮してくれ。ああ、念のため護衛にそこの少年とエシオンは許可する。」

醜聞対策と安全対策でございましょうか。エシオン殿はAランク程の強さはありそうでございますね。


石の祠の中は、下に降りる階段になっております。

壁に埋め込まれている石が淡い光を放っております。

「壁のは聖石じゃよ。聖なる力に反応して光を放つ石じゃ。ある程度退魔の力をもあるので、聖女はみなこの石を練り込んだ服を着ておる。ついでに白さも際立つので驚きの白さになるぞ。」

「お化粧品としてもよさそうですわね。」

「流石に不敬では‥‥。」

エシオン様は引きつっておられます。レンツ様は聞かなかったことにするご様子です。

「さて、そろそろ見えてきたぞ。」

そこにはエシオン様二人分程度の大きさの淡く光る石像がございました。

まあ確かに神様?ぽいきもしないでもない見た目でございますわね。

「作者は実物をご覧になったことが有るのでしょうか?」

「わしはインテリジェントデザイン説をそこまで推している訳では無いんじゃがのう。ただ御本尊はいくつがあるが、其れ等すべて同年代に出来ていて、国交の薄い国でも似たような姿をされておるらしい。」

「お会いされたのでしょうね。ちなみにここ最近で創造神にお会いになったかたっておられます?」

「多分おらんな。」

「成る程。」

経過によっては不味いことになりそうですわね。

まあしかし既に大聖女扱いである以上毒食わば皿まででしょうか。

「お祈りしても?」

「もちろん構わんぞ。そういう場所じゃからな。」

「では失礼して。」

御本尊の前に膝をついて静かに目を閉じ祈ります。

(言いたいことが山程ございます。反応されたし。反応されたし。反応‥‥)


「‥‥ょっと! うるさくて耳‥‥!」

真っ暗い部屋で、ぼんやり光る人形の何かが騒いでおられます。

「季節一つ前におあいした方でしょうか?」

「そう‥‥よ! 声が‥‥、大声で!」

どうやら電波が届きにくい様子ですわね。

「この程度で!宜しいでしょうか!」

「ギャア! 耳! もうすこ‥‥控え!」

「なかなか面倒ですわね。まあ聞こえていれば宜しいでしょう。創造神様でよろしいでしょうか?」

「そうだよ!」

「実家が消滅している訳は?」

「間違いなくおな‥‥時間も同じ‥‥、事情が‥‥。」

時間と空間は同じ様子ということは純粋な距離でございましょうか。

「どうすれば帰宅できますの?」

「アステアラカの‥‥に! 連絡‥‥とくか‥‥! ザザッ‥‥。」

「アステアラカのどなたです?」

「ザザー。」

「もしもし!」

人形ヒトガタの何かを叩いてみましょう。

修理手段がない以上叩くことしかできません。

「ザザー‥‥‥‥‥。」

そのまま消えていかれました。

「やはり素人が手を出すとだめですわね。」

そして闇がどんどん明るくなり


「るさん! ヴィルさん!」

目の前には心配そうなレンツ様の顔が広がっておりました。

「ご機嫌ようレンツ様。どの程度時間が経過しておりました?」

私は跪いた姿勢から立ち上がります。なにやら体の節々がギシギシ言いますわね。

はて、そういえば皆様服がやや異なっているような。

「驚くなよ。2週間じゃ。」

メトスレ様ははぁとため息をつかれておられます。

「はて?」

どうやらあちらとこちらの時間は異なる様子。


「2週間の間ヴィルさんはピクリとも動かず御本尊共に光り輝いてたんだよね。」

レンツ様はげんなりした顔をされます。

「それはそれは‥‥、まさか皆様2週間のあいだこちらに?」

「いや流石に。アリサとソーマも手伝ってもらってちょいちょい見に来てたよ。衰弱してる気配はなかったからさ。心配はしてなかったよ。」

「わしはたまたま見に来ておったが、今日集まったのは、山の頂上から光が立ち上がって、こうなっておったからじゃ。」

目の前の御本尊は木っ端微塵になっておりました。

「わしが証言するが、頭の天辺から砕け散ったぞ。わしが見ておらなんだら大不敬で投獄じゃよ。」

「成る程。通りで途中で会話が出来なくなっていたわけですわね。」

あちらとこちらの連絡はなかなか負荷がかかる様子ですわね。そういえばそんな事言われていた気がしますわ。

「ちなみに砕けたあとから大聖堂のほうがかがやきだしたので、移動したと考えておる。」

「補欠繰り上げみたいなものでしょうか。」

「かもしれんが、神のみ心を量るのは不敬というものじゃろう。」

はぁとため息をつかれます。

「わしこんな敬虔な信徒じゃなかったんじゃが。おぬしなにものじゃ?」

「記憶がないのであれなのですが、どうやら創造神様に命を助けられていた様子でございます。それ以上は聞き出せませんでした。」


「聞き出すとか言わなかった?」

「アリサ。そこはスルーだ。」

アリサ様とソーマ様はヒソヒソされています。


「聖典に加えたいから何の話をしたかだけ聞いても良いかの?」

「自身が創造神であること。私はこの世界この時代のものであること、アステアラカに何かしらのヒントがあってご連絡頂けるとのことでした。そこから先はうんともすんとも。」

「ふうむ。あんまり追加情報はないのう。」

「私利私欲で申し訳ございません。何分連絡手段がこれしかないと言われておりまして。」

「御本尊が使い捨ての手紙みたいなもんなんじゃろうか。いやしかし昔壊れたあとは修理の記載がなかったから時間経過で戻るんじゃろうか‥‥??」

メトスレ様は木っ端微塵になった旧御本尊をみて重いため息をつかれます。

「こりゃ忙しくなるのう。」

「叔父上、お手伝いいたします。」


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