24 悪役令嬢は聖女で貴族
「わしはメトスレ・ドラッド・グランヴィディア。とはいえ王族ではなく、神職の身として此方の国にいる。このエシオン・ドラッド・セントロメアの叔父にあたるものじゃ。」
と言って、エシオン様のお尻をパーンと張ります。
皆様ぎょっと目をむかれました。
「叔父上!?」
「おぬしはもう少し肩の力を抜くことを覚えよ。」
「叔父上が奔放過ぎるだけでは‥‥?」
「まあ、否定はせんがの。さて、取りあえずまずは用事を済ましてしまおう。ヴィル殿、此方の水晶に手を当ててくれんかな? ちなみに聖女の力があればこのように光る。」
メトスレ様が水晶に手を当てると、水晶は淡い青紫の光を放ちました。
「青は聖女、赤は勇者の力と言われておる。わしは両方の力を持っていたためこのようなところでのんびり暮らしているというわけじゃ。ちなみにこの光の強さは中級下位程度じゃな。」
「回復も攻撃もできるのでたまにこっそり騎士の相手をしていただいております。」
エシオン様は眉をひそめてメトスレ様に視線をおくりますが、メトスレ様はふいとそらされました。
「老人には運動が必要なんじゃよ。」
「この前騎士団長放り投げてましたよね?」
「老人以下の体力しかないんじゃろ。運動せい。」
「アリサから見てどう?」
「純粋な戦闘力だとBプラスくらいかしら。ただ色んな技が使えるなら私にはわかんないね。」
「強そう!」
「あとでソーマに稽古つけてくれないか聞いてみようかしら。」
「流石に不敬極まりない?」
ひそひそ相談していると
「べつにええぞ。」
ニヤリと此方を向いているメトスレ様にと目が合った。
「も、申し訳ございません!」
「なに、食後の運動じゃから、あとで3人纏めて遊んでやる。仕事があるからちょっとだけじゃがな。」
「「「有難うございます!。」」」
「エシオン。おぬしもやるか?」
「午後の護衛に差し支えますのでやめておきます。」
わちゃわちゃと楽しそうですわね。此方の王族の方々はかなりフランクなご様子です。
「おお、すまんすまん。ではヴィル殿、此方にお手を。」
「失礼いたします。」
内部に微細な光が回っている水晶に手を付けます。
「‥‥、特に何も変わりませんわね。」
「ふうむ、今のところ何の反応もないのう。前の癒しの力を使うとき何を思ったか覚えておるか?」
「この世にこのようなことがあってはならぬと思いました。」
リア様やバイク様の姿を思い出すだけで、胸の奥がざわざわ致します。
と、その瞬間、水晶が真っ青の光を放ちました。
「おお、何と純粋な青い光!」
「私の感情が関わっているのでしょうか?」
「その可能性はあるのう。普通は常時力が漏れているものじゃが‥‥。」
一旦その気持ちは封印して、逆に実家のお父様の顔を思い出します。
威厳の奥にやさしさを称えたあの瞳。もうあれから季節一つ以上経ったのですね。
「青い光が消え‥‥、黄色?」
黄色い光が立ち上がっております。
「そういえば黄色は何の色なのでしょうか?」
「魔力を持つ者の色じゃな。大体の貴族がそうじゃ。わしは聖女の力のためか魔力は全くないのじゃが。」
だから王位継承権を失っていると首をすくめられました。
入り婿として此方に来られているとのことでした。
「うーむ、切り替えている感じじゃろうか? 聖女と魔力は相反すると言われておるからな。」
ふむ、ならばひょっとしたらこの体の持ち主は聖女なのかもしれませんわね。
「ちなみにわたくし、一度さらわれたことがございまして。聖女様が襲われたりした等の話は聞いたことはございます?」
全裸で放置されていたことは黙っておきましょう。
「普通すべての聖女は大聖堂が管理しておる。下位の聖女でもかなり貴重な存在じゃから、全員に護衛を付けておる。前線では兎も角、それ以外で害をなされたことは記録上ないはずじゃ。」
「なるほど‥‥。」
ではこの体は、イレギュラーな管理されていない大聖女のものであった、という事でしょうか?
「ちなみに大聖女相当の者が市井で平和に暮らしていくことは可能だと思いますか?」
「普通は無理じゃろうな。おぬしみたいに出したり引っ込めたり出来るなど聞いたことが無い。基本的には出しっぱなしじゃからそやつの周囲は異様に清められた状態になる。大聖女レベルなら居るだけで恐らく村一つは余裕で払えるじゃろう。流石に誰でもわかる。」
凄まじいレベルの空気清浄機みたいですわね。
「なるほど。ところで私の力はどの程度なのでしょうか?」
「普通に余裕で大聖女レベルじゃな。国王自ら保護するレベルじゃ。うちの国がオススメじゃが、どこの国でも准王族か、まあ、おぬしの見た目からだと即王女じゃな。」
メトスレ様は首をすくめます。こうしてみると大司教というより庭師のおじさんと言われた方がしっくりくるレベルでございます。教育係は泣いていたのではないでしょうか。
「なるほど。それは困りますわね。私実は実家を探しておりまして。」
「聞いておる。ベルクートアブル大帝国じゃろう? 残念ながらわしも聞いたことはないのう。ただ、国家間は特に戦争はないが、安定しているがゆえに相互の干渉はあまりなくてな、知らないうちに国が興っている可能性もゼロではないかもしれん。3大大国以外は正直そこまで他の国に興味が無いというのが実情じゃろうか。魔獣被害も増えてきているので内政を図れとのお達しもあったしな。」
「お達しですか。」
「上意下達じゃな。セントロメア王国は小国扱いじゃから、直属の上は、ソイニュル王国じゃな。グランヴィディア聖国は中級国じゃな。そして共に上にアステアラカ王国が居る。アステアラカは知っておるか?」
「名前だけでございますが。」
さらに北の厳しい土地の大半がアステアラカ王国で、武勇に長けており、嘗て勇者とともに戦った戦士が興した国だそうです。
「おぬしの希望があれば、アステアラカに口利きもできるがどうする?」
「貴族としてでしょうか。」
「まあそうじゃな。というよりは多分王族になるとは思うが‥‥。情報収集はしやすくはなるぞ?」
「その代わり身動きも取れなくなりますわね。」
ふうむと考えます。
「とはいえ結論は出ておるのじゃろう?」
「そうですわね。私身分は興味がございません。リア様のばあやで居ることができればとりあえずは十分でございます。」
「やっぱりばあや設定大好きじゃん。」
「雛の刷り込みというやつでしょうか?」
「親が良くてよかったね。」
アリサ様は首をすくめます。
「本当に。」
本当にその通りです。
立場よりなにより、人との出会いのほうが私にとっては大事でございます。
とはいえどういたしましょうか。




