23 悪役令嬢と大司教
「お久しぶりですヴィルヘルミーナ嬢。覚えておいででしょうか、エシオンで御座います。」
大聖堂につくなり、第三王子であるエシオン・ドラッド・セントロメア様が丁寧に礼をされます。
「お久しぶりでございますエシオン様。お元気そうで何よりでございます。私の事はヴィルとお呼びくださいませ。また話し方も砕けていただければと存じます。そして此方はここまでの旅を共にしてくださった、レンツ・アリサ・ソーマの3人でございます。」
「二人は初めてだな。今はアイオイ様の護衛をしているため、エシオンと呼んでくれ。」
「「過分なご配慮、ありがとうございます。」」「ありがとうございます!」
三人は頭を下げる。
アイオイ様はこの前の事やら、その他雑務のためにこのヴランヴィディア聖国に来ているとのことだった。
「それでヴィル嬢。残念な話なのだが、父上等とも話してはみたがやはりベルクートアブルという国は知らないとのことだった。」
「さようでございますか‥‥。それは残念でございます。まあ、神様にでも聞いてみましょう。」
ふい、と大聖堂の奥を見る。大本尊への長い道に礼拝者が並んでいる。
「大盛況でございますわね。」
「だい‥‥、まあ、大本尊は拝むだけでも多少の癒しの効果はあるとは言われているからな。ささくれ程度だと多少直りが早くなるぞ。」
「それは良いことを聞きました。お肌にもよいかもしれませんわね。後でアリサ様も一緒にお参りいたしましょう。」
「いや、アタシは‥‥。」
「私の趣味でございます。」
アリサ様の頬を指でかるくなでますと、日焼けのせいか少しだけ傷んでおります。
光老化はバカにできないと先達から教わった記憶があります。
「ね?」
「あ‥‥ああ、うん‥‥。」
アリサ様は顔を真っ赤にして俯かれます。
「ヴィルさん、他の人にやっちゃだめだからね。危険だからね。」
「? わかりました。」
レンツ様の意見は聞いておいて損が無いのは分かっております。素直に従っておきましょう。
「ああ、ゴホン。あとアイオイ様は昼はお勤め中のため当分会うことは出来ない。すまないな。その代わりに、メトスレ大司教様がお会いになられます。」
「簡単に言うと、ここで一番偉い人だよ。」
レンツ様が小声で補足してくださいます。
「過分なご配慮、ありがとうございます。ちなみになのですが、何をする感じなのでしょうか?」
聖女の鑑定については、ナーラック領の皆さんもご存じないようでした。そもそもがかなり稀な事のようです。
「基本的に聖女様は、多少でも感覚が鋭い人間が見ればすぐわかる。理由はない。ああ、聖女様だな、とみな理解するのだ。」
エシオン様の言葉にみなうんうんと頷いていらっしゃいます。
「私は良く分からないのですが‥‥。」
「そこが今回問題でな。ヴィル嬢も聖女だとは思われていなかったのだろう?」
「そうですわね。レンツ様は何か感じることはありましたか?」
「うーん、最初は何の力もない普通の平民というか、魔力無しだと思ってたんだけど、時々御貴族様みたいな魔力の気配をしてたりと不思議な感じだ‥‥でした。この前の一件以来はそれにたまに聖女様っぽい雰囲気を感じることもあったんですが、違和感というか、聖女様のようで違うような‥‥、言語化は難しいのですが‥‥。」
「その気持ちはよくわかる。」
エシオン様は頷かれます。
「あまりの神々しさに、もはや神がご降臨されたかと思ったくらいだった。最初は。ただ途中から貴族のような魔力が混じったり、それとはまた異なる異質な気配を感じたりと‥‥。なので今回此方に来てもらったわけだ。」
「感覚的ではなく定量的に測る道具が存在するという事でしょうか?」
「うむ。遥か昔から伝えられてきた古代の魔道具だそうだ。中級以上の聖女様は、その鑑定で一定を超えた者だけが認定される。」
「それは貴重でございますわね。」
「そのため、正直下級の聖女だった場合は分からないこともあるのだが、ヴィル嬢のアレを見た以上少なくともその可能性はないだろうという判断だった。」
「正直大半アイオイ様の御力な気はしますが。」
「アイオイ様も力を尽くされたのは間違いないが、アイオイ様にあそこまでの力は無い。私はそれで苦悩されているのを見ているからな‥‥。」
「‥‥失礼いたしました。」
力が無い者の苦悩ですか。私には推察することしかできません。いや、最近だと金欠の時の気持ちのようなものかもしれませんわね。
「真面目な顔してるけど、多分違うと思うよ?」
「さようでしょうか。」
「とりあえず、メトスレ様がお待ちですので此方へ。」
と言い、手を差し出してくださいます。
「ありがとうございます。」
「エスコートがサマになってるなぁ。やっぱりマジの貴族は違うね。」
「アリサも負けてないぞ!」
「ありがとね。ソーマもだよ。」
「俺も仲間に入れてよ。」
「自分の場所は自分で探すんだよ。」
「へいへい。」
大本尊からは外れた廊下を通り、外廊下を通り、小さな林を通りすぎ、離れたところに小さな塔がございました。
「何やら厳重な気配を感じますわね。」
周りを見回しますが、妙にキラキラした気配を感じます。
「流石だな。今は失われた聖なる結界が張ってある。悪しきものは近づけないようになっている。」
「どういう条件なのでしょう? 罪のない人間など居るのでしょうか。」
「失われているためにわからんが、悪意の有無ではないかと推察はされている。さあ。」
エシオン様は扉を開けられます。
中は、上まで吹き抜けのようになっており、周りに小さな部屋が連なるような螺旋階段で出来ているようです。壁には良く分からない文字がびっしり書いてあり、中央には謎の水晶が刺さっております。
「遥々ようこそ、野生の大聖女様。」
中央で頭を下げられているのはメトスレ様でしょうか。
「初めまして。此方ではヴィル・ロゼリアと名乗らせていただいております。」
本当かどうか分からない貴族の位を気にされなくてもよいとの表明でございます。
「ふむ。柔軟な良い子じゃな。」
悪い顔をして笑われます。




