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19 悪役令嬢は身の振り方を考える

お久しぶりにお会いしたナルクル様はとても顔色がよろしくなっております。


「お久しぶりです、ヴィルヘルミーナ嬢。いろいろ鑑みた結果このような喋り方になるのが良いかなと思ったのだがご容赦願えるだろうか。」

「ご配慮くださりありがとうございますナルクル様。私も現状自分自身の立場どころか正気を担保できていない状態でございます。」

それを聞いたナルクル様は苦笑されます。

「自分自身が何者かわかるものなど居はしないだろう。それが分かるのは死ぬときだけだ。」

確かに、一度死んでいろいろ気づくことがありました。

「お気遣い痛み入ります。」

「いずれにしてもそれだけの魔力持ちだ。普通の民草ではあるまい。まれに市井でも生まれる者はいるが、その使いかたを学ぶことが出来るのは貴族かそれに準ずるもののみだ。」

「なるほど。という事は私がそのような存在であったことは疑いようのない事実という事ですわね。」

「まあ、正直、あー、ヴィルヘルミーナ嬢は‥‥。」

「ヴィルとお呼びくださいませ。」

「ああ、ヴィル嬢はそのような小手先の腹芸が得意には見えない。生来の性格か、生まれ持った圧倒的な立場ゆえか。私のような木端貴族には分からぬ事ではあるのだが‥‥。いずれにしても貴方はとてもまっすぐな性格をされている。私が信じる理由があるとすればそれで十分ではないかな? どう思う? ハノイ殿。」

「嘘をつけるほど器用なら苦労はしておらん。」

静かに話を聞いていたハノイ様は、特に悩むこともなくそうおっしゃられます。

「クックック。それはそうだ。」

「いまいち同意しかねる気もするところではございますが。」

「クックック、その通りだ。ヴィル嬢に失礼だ。クックック。」

ナルクル様は楽しそうに笑われます。

「ああ、こんなに楽しい気持ちになったのは久しぶりだ。」

「色々大変でございましたからね。」

「まあ、‥私の事以外‥‥にもな。魔獣の被害は私だけではないからな‥‥。」

「これは、考えが及ばず。」

「いや、他国の方が知っている方が国防に問題があろう。な?」

「ご配慮有難うございます。」

「ところで、ベルクートアブル大帝国、だったか? 私のほうでも調べてはみたが、今のところ何も情報はない。申し訳ないな。」

「いえいえ、やはり何の情報も無いのですね。」

「差し支えなければ、どのような国だったか教えていただけませんか?」

ナルクル様は急に言葉遣いを変えられます。

いやなら断ってもよいという表明でしょうか。

「とはいえ、私もあまりさほど語ることはありません。あまり他国と仲良くしていた記憶はございません。皆様にはご不快な思いをさせるかもしれませんが、ベルクートアブル以外は小国という教えがございました。実際国外に出たものは貴族ではほぼ居ないのではないでしょうか。今思うとややそこも不自然な所ではございましたが。技術レベルは、そうですね、恐らく此方の300年ほど先にはなるのではないでしょうか。」

「さんびゃく・・!?」

ハノイ様は驚かれます。

私も正直馬車なるものを初めて見たときに同じような思いをした記憶がございます。

「詳しいシステムまでは把握しておりませんが、地面や建物はほぼ全て石や金属で作られておりますし、馬車の代わりに魔力で動く車が存在いたします。空を飛ぶ車も御座います。」

「ぇぇ‥‥そこまで‥‥??」

ハノイ様は驚いた顔をされておられます。

「まあ、文化的な背景等いろいろあるとは思いますわ。明らかに違うことが一つだけあるのですが。まず私の国には魔力を持たない人というのが存在いたしません。」

「ふむ。」

ナルクル様は難しい顔をされています。

「ならば私の知る限りそのような国はやはり無いな。魔力を持っている人間は何処にもいるが、基本的に貴族ばかりで平民にはほぼ居ない。」

「私が不思議なのはそこなのです。基本的に魔力は親の遺伝などが強いとは言われますでしょう?」

「例外もあるが一般的にはその可能性が高いといわれているな。」

ハノイ様も同意されています。

「無魔力というものが顕性遺伝の可能性はありますが、こちらの例を見る限りはそうではないようではありますし。であれば、一般的に混血が進めばみな魔力を持つはずなのです。ですが、そうなっていないという事は、混血が阻害されているか、魔力持つもの、または持たないものが共存するのが比較的近しい世代であるかのどちらかだと思いますわね。」

「ふむ、貴族社会がその弊害となっている可能性か? だがヴィル嬢も貴族社会であったのであろう?」

「そうですわね。私の国はもう少し厳格でした。上下関係は鉄と言われておりましたわね。鉄のように強く、破ったものは鉄の味を味合わせられるという。」

「やっぱり魔境から来たよね。」

ハノイ様はいやそうな顔をしています。

「独裁者が圧倒的な強者であれば独裁政治は保たれるものでございます。それの是非はなんともでは御座いますが‥‥。」

「実感のこもったセリフはやだなぁ‥‥。」

いずれにしても無能がトップに立つとろくなことになりません。独裁であろうとなかろうとではありますが。

「急に魔力持ちが現れて建国をしたという英雄譚のような話などありますでしょうか?」

「聞いたことはないな。とはいえあまりにも古い場合は話が残っていない可能性はあるが‥‥。一番古い国で3~400年前が建国だが、そのころには今のような貴族制度はあったとは聞いている。」

「となると打つ手なしですわね‥‥。」

「何か手掛かりはないのか?」

「実際論理的な話ではないのですが、大聖堂の本尊というところに行くべきだという淡い記憶がございます。」

細かく離すとボロがでますのでぼかして話します。

「行くと何かあるのか?」

「全く分かりません。」

「フワフワした話だな‥‥。」

ハノイ様は何やら考えている様子でございます。


「よし、ヴィル、少し用事を頼まれてくれないか?」

「なんでございましょうか?」

「リアが入学に当たって、大聖堂から護符を買ってきてくれ。」

「お気遣いはありがたいのですが‥‥。」

「なに、ついでに土産でも買ってきてくれ。それに立場上公爵令嬢を使用人のままにしておくわけにもいくまい。いや、迷惑と言っているわけではないが、お前は多分使用人としてではなく、本来の立場があるだろう。」

「そうですわね。実際義務を蔑ろにし続けるのは私の本意ではございません。」

色々と謎も問題も残っていることですし。

「いずれにしても大聖女の鑑定はその大聖堂で行われる。場所はグランヴィディア聖国。遥か昔勇者が建国したと言われる国だ。」

勇者、初めて聞きますわね。


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