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3_19 悪役令嬢と懐かしい感じ

「ぐおっ!?」

魔王はヴァンドゥークの腹を蹴り破る。

「お父様!?」

その反動を使ってストルミも蹴り飛ばすが、ストルミはなんとか防護障壁で耐えきる。

「カスっただけで魔力が根こそぎ持ってかれるんだけど!!!」

「私も攻撃の時に根こそぎ持ってかれました‥‥。」

ヴァンドゥークは血を吐きながらそういう。

腹から内臓が飛び出ているが、魔力で抑え込んでいる。

「申し訳ないが戦線離脱だ‥‥。」

『流石ベルクートアブルのつわもの共。潤沢な魔力だ。』

やや大きい少女のような形だった魔王は縮んでいき、ウィリアムに似たような青年に変わる。

「‥‥、まさか‥‥、フリードリヒ様!?」

ウィリアムは叫ぶ。

「誰?」

「‥‥ゲーキ初代の王だ。最も長く魔王として君臨されていた方でもある。」

ヴィルの疑問に答えるウィリアム。

『我は魔王。フリードリヒでもあり、そして数多の魔王達でもある。あらゆる意識を共にする者だ。』

フリードリヒは手を握り、感覚を確かめている。

『魔力が満ち、意識が清明になり、我の自我も明瞭となる。そして我が願いが叶う。』

「お前の願いとは?」

『それは秘密だ。』

「ナメてるの?」

ヴィルのこめかみに青筋が浮かび上がる。

『知りたくば力づくで来い。』

魔王はヴィルに魔力の塊を打ち付ける。

ヴィルは右手で軽くはたいて散らす。

「さもなくば?」

『人類が滅びるだけだ。』

「ナーラックに手を出すなら殺すわよ。」

『あの地に恨みはない。だがあの地のみ生き残らせるほど器用な真似もできぬ。』

「あなたを殺したくないわ。」

『この肉体が訪い人だからか?』

「そうよ。」

『フ‥‥。』

魔王は優しく笑う。

『私は運が良い。』

「‥‥。」

ギリッとかみしめた奥歯から鈍い音がする。

「これ以上は無駄ね。」

ヴィルは両手に魔力を漲らせる。

「我儘な子供は拳で躾けることにしているの。」

『さすがは悪役令嬢か。』

クックックと笑う魔王。

『来い。』

次の瞬間、ヴィルと魔王の拳がお互いの顔面にめり込む。

「ヴィル!?!?!?」

ヴァンドゥークは自分の回復を中断して、ヴィルに治癒促進の魔法をかけようとする。

「邪魔よ!」

ヴィルの顔が光ると一瞬で治癒された。魔王も同様に回復する。

「訪い人の力‥‥。」

ストルミは驚愕する。

『つまりは‥‥。』

「根性勝負よ。」


1分が1時間にも感じる濃密な時間、お互いに必殺にならない攻撃を繰り返していた。


『ガハッ‥‥グウッ‥‥。』

先に膝を付いたのは魔王だった。

「その子を大事に思っているならもう諦めなさい。」

ヴィルは魔王を蹴り転がす。

『グッ‥‥フフフ‥‥。』

「何が楽しいのよ、魔力ももう殆ど残ってないでしょう。」

ヴィルは鼻血を拭いながら、不快に眉を顰める。

『お前には悪いと思っている。』

「はぁ?」

『ヴァンドゥーク公爵にもな。謝って済む問題でもないのも重々分かっている。だが、間違っていたとしても、無駄ではなかった。』

魔王は泣きそうな顔をして笑う。

「何を‥‥。」

『これで最後だ。勇者よ、見事魔王を打倒してみよ!』

そう言った瞬間、魔王の魔力が爆発的に膨れ上がる。

「なっ!?」

『ガアアアアアアアアアアッ!!』

技も何もない魔王の右拳をとっさに両手で受けるが、血煙となって両腕ははじけ飛んだ。

「ぐっ! おのれっ!」

がら空きの鳩尾にヴィルは蹴りをたたき込んで距離をとる。

だが、四つん這いで着地した魔王は、獣のような速度で襲い掛かってくる。

「早ッ!?」

「よいしょぉ!!」

それを、レンツはいなして、方向を変える。

余波だけで地面がえぐり消える。

「ちょっ! 死ぬわよ!?」

ヴィルは叫ぶ。

「どのみちでしょ。」

レンツは首をすくめる。

「それにナーラックでも魔獣相手にはたまに戦ってたしね。」

そう言いながら魔王の猛攻を受け流す。

「当たったら死ぬわよ!」

ヴィルは腕を回復しながらそういう。

それを聞いたレンツはビックリした顔をする。

「あのぉ‥‥ヴィルさんは知らないかもしれないけど、普通の人類って魔獣相手だと大体そんな感じなんだけど。」

「そ‥‥、まあ、そう‥‥だけど‥‥。」


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