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3_18 悪役令嬢と顕現する創造神

世界も止まり、ライネイもヴァンドゥークもストルミも誰も動かない。

「え?」

「あれ、私たちは動ける?」

レンツとヴィルは首をひねる。

その瞬間、聞いたことのある声が響く。

『ハァー。チートコードのエラーが出たから何かと思ったら。』

空には巨大な人影が居た。

「‥‥創造神‥‥。」

ヴィルは目を見開く。

『チートは禁止。デバッグ。』

創造神が巨大な指で魔法陣に触れると、魔法陣は砕け散った。

「何を!?」

『これ以上バグが増えるのは困るんだよねぇ。下手くそが作ったソースコードなんだから全く‥‥。僕にも他にも仕事があるんだよねぇ。』

創造神は此方の声が聞こえていないかのようであった。

「ハァア‥‥?」

『直接介入し過ぎると世界が壊れちゃうからこれ以上はやめてほしいんだよねぇ‥‥。』

此方に気づく事もなく、そのまますっと消えていった。


「あれ?」

ストルミは手を振る。

「あれ? あれ?」

封印の魔法陣が出なくなった。

「えええ! 私の技術の結晶が!!!」

「どういうことだ?」

ヴァンドゥークとストルミは首をひねるが、はっとするストルミ。

「‥‥介入された。でしょ?」

ストルミは一瞬目を閉じると、ヴィルを見る。その目は魔力の残滓で揺らめいていた。

一瞬で予見した様子。停止した時間帯も見えるのか。それとも今後の行動から推察したのか。

「ええ、創造神が出てきたわ。私たちはなぜか動けたけど。どうやらこちらには気づいてなかったみたいですが。」

「‥‥、なるほど。」

ストルミの目が鈍く光る。

「あなた混じってるわね。昔のヴィルとして再構成されているけど、恐らく結局ベースはあの訪い人。異性体のようなもの‥‥、と予見したけれど、私にはわからないわ。ただ、その血肉を受け継いだこの子もこの世界の外の存在として認識されていたということ。ふむ、それはとても面白い話ね。」

眉間にしわを寄せていたストルミは一転、ニヤァと笑う。

その顔はまさに悪役王女。

「どういうことなのだ?」

ウィリアムはヴァルヴィオに尋ねる。

ゲーキの王とベルクートアブル王子の会話である。

「我が妹がああいう表情をしているときは、大体ろくでもない悪だくみを思いついた時だ。」

「笑える範囲か?」

「今回のは世界の存亡に関わるレベルだな。」

「頭が痛い。良い胃薬があったら輸入するから教えてくれ。」


その目の前ではゆっくりと再構成していく魔王。

『ああ、創造神め、何故生きている‥‥!!! 憎い、憎い。我を、あの子を! わたしを、ああ、憎い!!!!』

自分の顔に指を立てて叫ぶ魔王。

『死ねぬなら、死ぬことが許されないのなら、せめて目に入るすべてを殺しつくすしかあるまい。』

黒い涙を流し続ける少女の姿をした魔王。

そのサイズは普通の少女の大きさになっていた。

ただその身に内包する魔力量は尋常ではない。

「ただの訪い人がそこまで変質するなど、どれだけの地獄を味わって来たのか。」

ヴァンドゥークは眉間にしわを寄せる。

「方針は?」

レンツはヴィルに聞く。

「みんながんばれ、かしら。」

「取りあえずは一旦申し訳ないけど退場してもらって体勢を立て直すのが一番かな。」

レンツの発言に頷くストルミとヴァルヴィオ。

「それでは、戦神と呼ばれた我らベルクートアブルと、あとヴィルの眷属?か。世界を守るぞ。」

ヴァルヴィオはレンツの背をたたく。

「元々男爵領の用心棒だったんだけどねぇ‥‥。」

「終わったら褒美は取らせるから安心しろ。」

「平和な日常ってやつ?」

「それは最高だな。では行くぞ!!」

ヴァルヴィオの手から炎が飛ぶ。

それを振り払う魔王。だが手についた炎がなかなか消えない。

「我はしつこいからな。」

ヴィルを見ながらそういうヴァルヴィオ。

「その様で。」

「お兄ちゃんもあんまりやると嫌われるわ、よっ!!!」

小さな太陽が複数飛んで魔王に直撃する。

『ぐううう!! ガアアッ!!』

魔王はそれをはじき返してくる。

ドップネスの屋敷はさらに吹っ飛び、もはや更地の様相であった。

其の隙に懐に転移したヴァンドゥークは魔王の首を切り落とす。

「ぬっ?」

魔王の首は、自らの右手で受け取られ、そのまま手に吸収されたかと思うと、新しい頭が生えてきた。

「あれは少女の形をしたスライムみたいな不定形生物だと思った方が良いな。」

「道理でヴィルさんの頭が吹っ飛ばされて生きていたわけだ。」

「それを先に言え!!」

そのまま反撃されて吹っ飛ばされたヴァンドゥークからクレームが飛ぶ。

「言ったらお父様、正気を失うでしょう?」

「それは否定はせんが。」

ギリギリと歯ぎしりをしてレンツをみるヴァンドゥーク。

知らないうちに仲のいい異性が出来ていてお父様は心中穏やかではない。

「あなたも創造神にあまり良い感情が無いのでしょう? なのに何故その意を組むような行動をとるのです?」

ヴィルの質問に歪んでいる顔をさらにゆがませる魔王

『下らん質問だ。』

魔王は自分の首を軽く指で突くと、そこには淡い魔法陣が2つ浮かび上がった。

「隷属の‥‥!?」

「いや、恩寵ではないのか?」

ライネイの疑問に、ウィリアムは尋ね返す。

「恩寵とは?」

「古い知識だが、創造神の眷属の証とも言われている。その証を賜ったものは世界を率いる運命を‥‥、ああ、成程。結局は良いコマということか。」

『その通りだ。哀れな道化の最後の演目を目に焼き付けよ。』


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