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3_17 悪役令嬢と懐かしい人たち

『聞こえるか全ての生きとし生けるものよ』

空から高いような低いような声がする。

うごうごと蠢いていた肉塊はゆるゆると小さくなっていく。

『我は魔王。全てを滅ぼすもの。』

どんどん小さくなっていき、屋敷サイズより小さくなる。

そしてゆっくり地面に降りてくる。

『勇者の敵。世界の敵である。』

さらに小さくなり、その体は黒い涙を流していた少女の姿となる。

ただ、そのサイズはナーラックに現れたベヘモス程度の大きさであった。

『今より世界を破壊し、再生する。それこそが我が望み。』

右手に白い魔力が集まる。

『まずは人類よ。歪なまでに増えたイレギュラー共よ。塵となれ。』

魔王の右手から放たれた光線はエプラスを吹き飛ばした。


「あれはどういうこと?」

ヴィルは眉を顰める。

「不要になったムゲラルを処分したんじゃない?」

「成程。血も涙もない話ですわね。」

ほうほうと頷くヴィル。

「お主ら何をのんびりと‥‥。」

真っ青な顔で詰め寄ってくるライネイ。

「まあ、此方にはヴァルヴィオも居ますし、それにヴァルヴィオの話では私を殺したのが王女殿下ですが、多分魔王を殺すために止む無しだったのでしょう。あの方は魔力制御で有名ですが、何方かと言えば頭の回転のほうが空恐ろしい方でしたから。」

「つまりどういうことだ?」

「つまりは、全て王女殿下の計算通りの可能性があるということ。ほら。」


ヴィルの指の先に凄まじく巨大で繊細な魔法陣が無数に浮かび上がった。

その瞬間、ボンッと音を立てて研究員のコンソールから煙が上がった。

「うわあ! 魔力測定が焼き切れた!!」

「え? あれ何?」

レンツの疑問にヴァルヴィオが答える。

「あれは我が妹の最強奥義だな。多分根こそぎの魔力をつぎ込んでくるぞ。余波は止めるがみんな眼を瞑れ。」

ヴァルヴィオが魔王とゲーキの間に見渡す限りのバリアを張る。

その瞬間、目の前に二つ目の太陽が現れた。


「ああああ! 目が!!」

間に合わなかったゲーキの人間の何人かが目を押さえて転げまわっている。

「後でアイオイ様にでも癒しを頼んでおきましょう。雪目のヒドい版みたいになっている可能性があるわね。」

「惨い‥‥。」

転がるゲーキの面々をみて引きつるレンツ。

そこに空から100人単位で飛んでくる影が見えた。

「あれは、王女殿下と、お父様ね。」

「え!?」


「ヴィル!!!!!!!!!!!!」

凄まじい勢いで突撃してヴィルにタックルをする男。

ヴァンドゥーク公爵その人であった。

「おおお!!ヴィル!! 本当に生きていた!!! お父さんは、お父さんはな、お父さんは‥‥うううう。」

シクシク泣き出すヴァンドゥーク公爵。

「お父様。キャラが崩壊しておりますわよ。」

「娘が死んだかもしれんと聞いてキャラもクソもあるものか!!!」

とそこに2人目がタックルしてきた。

「わー! お久ー! 元気してた!?」

ヴィルより少し年上の垂れ目の女、ストルミ・ベルクートアブル王女であった。

「元気もなにも、あなたに殺されたようなのですが。」

「だってしょうがないじゃん! それ以外だと滅びる未来しか見えなかったんだし。」

「王族だけの秘密だが、我が妹は予見の魔力を持っている。史上初の魔法だ。」

ヴァルヴィオはこっそりと耳打ちする。

「はっきり見えてるわけじゃないんだけどねぇ。」

首をすくめるストルミ。

「だから魔王の動きを先回り出来たってわけ。」

「あのえげつない魔法は?」

ヴィルの質問にストルミはケラケラ笑う。

「生まれてすぐくらいからずっと魔法陣に魔力を貯めてたんだよねー。王城の地下の大半私の魔法陣で埋め尽くされてるよ。封印と今のでほぼ全部使っちゃったけど。」

「時間停止なんて無茶苦茶な魔法どうやったと思ったらそうだったのね。」

ストルミを撫でるヴィル。

「どうやら助けられたみたいね。」

「私のほうがお姉さんなんですけどぉー!」

プリプリするストルミ。ヴィルと比べると頭一つ小さい。

「此方で少しだけ時間が経過したから差は縮まっているわよ。」

ヴィルのセリフに泣くヴァンドゥーク。

「うう、我が娘が知らないうちに大人に。」

「聞こえの悪い単語を選ぶのはやめてくださいまし。」

「それになんだこの男は!」

ヴァンドゥークはレンツを指さす。

「この服からこいつの魔力を感じ‥‥、こいつから若干ヴィルの魔力も‥‥!? お前は‥‥我が孫?」

「違います。」

「あー、で、アレどうする?」

混乱している面々をぶった切ったライネイの指の先には半分消し炭みたいになっていた魔王。

「出オチみたいで申し訳ないけど封印させてもらうよー。」

王女の手から魔法陣が飛ぶ。

軽くやっているように見えるが、本来なら10人位の専門家が1日やる作業である。

『貴様‥‥! 王女め‥‥!』

「平和な世界に君はもう不要なんだよ。ごめんね。」

魔法陣が光り輝くにつれて魔王の姿が薄れていく。

『我が‥‥! 消える‥‥! やっと‥‥ 消えれる‥‥。』

ゆっくりと崩壊する魔王。

とその瞬間、魔法陣がピタっと止まる。


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