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3_16 悪役令嬢復活

「魔王??」

「来るのが遅いぞ。」

『ベルクートアブルの封印が解けるのに思ったより時間がかかったからな。あの王女様は凄まじい。だからこそ惜しい。』

優雅にムゲラルのほうに歩む魔王。

その合間に少女に一瞥を向ける。

「成程。その謎の知識の出所は古くから存在する魔王そのものだったというわけね。」

ヴィルの言葉に笑うムゲラル。

「その通り。とはいえ私と連絡が取れたのはほんのひとかけらでしか無かったが。」

『お主、ヴィルヘルミーナ。お前とともに人類領にやってきたのは良いが、あのクリスタルが良くなかった。魔力で構成される我の大半はナーラックのクリスタルに奪い取られていた。』

「それを回収した私が増幅しながらなんとか解析していたというわけだ。」

手を上げるムゲラル。

『我が母体の魔力は王女が貴様を殺したときに奪い取られていたからな。やっと封印がとけて母体と接続して十全とまではいかぬが戻ってきたというわけだ。』

「なるほど、つまり‥‥。」

ヴィルはムゲラルを見る。

『その通り。こ奴は我が僕。』

そのセリフだけ聞こえていないかのようなムゲラル。

「なかなか精度の高い洗脳ね。」

『それが我が力だからな。自覚が無いだろう? 世界に混乱と滅びをもたらす。それが我が主から賜った使命。』

「魔王、の主?」

その瞬間、魔王は片方の唇だけを上げるような笑みを浮かべる。

『その通り。創造神様だ。』

「最悪のマッチポンプ。」

ヴィルが吐き捨てる。

それを聞いたのか、黒い涙を流していた少女がすっくと立ち上がる。

『哀れな少女よ。お前の力を貸せ。憎しみは消えぬ。』

「ダメよ。こんなゴミクズみたいな大人の言うことを聞いたらダメ。」

『ゴミクズ‥‥!?』

少女は闇の瞳でヴィルを見て、少しだけ微笑む。

「ごめんなさい。」

「貴方‥‥。」

ヴィルは少女に手を伸ばそうとする。

「ごめんなさい。でも私、許すことはやっぱり出来なかった。ずっと我慢していたけどダメだった。優しい人もいっぱいいた。でもダメ。この世界がが存在しているだけで私は正気をずっと失い続けていく。」

「‥‥。」

「ごめんなさい。私の遺言を伝えて。子孫でもいい。フリードにごめんなさいって。ガデルにありがとうって。ジョセフにお酒はほどほどにって。フェルス村のみんなにありがとうって。」

少女がヴィルに手をかざすと、急に世界が遠くなっていく。

ものすごい勢いで後ろに吹っ飛ばされているような感覚だ。

「このっ‥‥バカ!!!!!!!」

ヴィルは生まれ変わって初めて、一筋だけ涙を流した。


「成程。世界の終わりか。」

ヴァルヴィオは突如ヒビが入って割れた空をみてそうつぶやいた。

そこには巨大な人間の形をした粘土を子供がこねくり回した後のようなよくわからない肉の塊が浮いていた。そのサイズはちょっとした小国サイズはありそうだ。

「落ちてくるだけでゲーキが吹っ飛ぶな。」

ウィリアムは王だけあって避難の指示を出す。

「ありがたいことに浮いてはいるみたいだけど。」

レンツは空を見る。

「ん?」

肉の島から何かが落ちてきた。

「あれは‥‥ヴィルさん!?!?!?!?」

レンツは地面を蹴り、空中でヴィルをキャッチする。

「ヴィルさん! 生きてる!?」

レンツは上着を全裸のヴィルに巻いて地面に着地する。

「何とか首の皮一枚で生き残っているみたいね。」

ハァとため息をつくヴィル。

「なんかキャラまた変わった?」

「変わったというよりは、此方が元々ですわね。肉体に引っ張られていてあのようななんちゃってお嬢様口調になっていただけで。」

ヴィルは指を鳴らすと、レンツの上着が溶け、シンプルなドレスに変わった。

「ふむ。魔力は使えるようね。」

首をすくめるヴィル。

「うーん、なるほど。」

「何が成程なんですの?」

「あんまり変わってない気がする。」

「‥‥。そう。」

プイと横を見るヴィル。

「あ、でも前とちょっとだけ違うね。」

「そうかしら?」

指を鳴らすと目の前に鏡が現れる。

「こんなものでは?」

「若干釣り目になってるのと、ちょっと身長が高くなってる。あとあの、あんまり口に出すのもあれなんだけど、体のサイズも‥‥。」

レンツは言い淀んでいた。

以前も絶世の美女で市井を困惑の坩堝に叩きこんでいたヴィルの体が、実物はさらにえげつないレベルだったということに。胸が大きいことが正義とは言わないし、人の趣味も色々だとは思うが、以前より2サイズは大きくなっていた。

「ふむ、自分ではよくわからないものね。」

「自己の認識に合わせた外見になってたのかも。」

「なるほど。あの存在をみるとそれが正しい気がするわね。」

ふむふむと二人で納得する。

「ヴィ・・・ヴィルヘルミーナ様! ご無事で!!!」

「ああ、ヴァルヴィオ。あなたのおかげで無事とは言い難かったけれど生きてるわよ。」

「うぐっ!」

ヴィルの言葉に胸を押さえてうずくまるヴァルヴィオ。

「あなたを追って此処まで来たのです。」

「遠路はるばる大変なことですわね。」

興味無さそうなヴィル。

「あのー、婚約者だったのでは‥‥?」

おずおずと尋ねるレンツ。

「見合う家格が私しかいなかった結果よ。お互い別に恋愛感情なんて無いわ。」

「え!?」

ヴァルヴィオが石のように固まった。

「そうでもなさそうだけど。」

「大げさなだけよ。」

「あとで話す時間取ってあげてね。」

「ナーラックに戻って一息ついてからね。」

首をすくめるヴィル。

「ベルクートアブルに戻らなくていいの?」

「それどころではなさそうだし、丁度いい機会だわ。」

悪い笑顔を浮かべるヴィル。

「うん、悪役令嬢って呼ばれてた意味が分かった。」

「顔つき?」

「かもね。」

「ふうむ。前と同じような表情を意識しましょうか。」

顔をもむヴィル。

首をすくめるレンツ。

「なにを!のんびり!しとるのだ!?!?!?!?!」

叫ぶライネイ。

「そう言えば世界終わりかけだったね。アレなに?」

「多分訪い人の成れの果てですわね。」

眉間にしわを寄せるヴィル。

「ついでに中に魔王が居るわ。」

「ついでが大きすぎない!?」

叫ぶウィリアム。


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