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3_15 悪役令嬢はなんだかよくわからない

「あー、それなんだが。」

ライネイは庭を指さす。

そこには静かにしている元フェンガルらしき、若干正気を逸している服装の人々が居た。

「其方で戦闘がおこったときに、恐らく避難指示があらゆる支持の上位に来たのだろう。全員そろって行儀よく此方に逃げてきていたぞ。」

「ならまあ良いか。フェンガルは多分今から滅びる。」

「は?」

「凄まじい勢いでヴィルヘルミーナ様?が魔力を吸っている。恐らくあの勢いででは早晩フェンガルは消滅するぞ。」

「まあ、うーん、良いのか何なのか‥‥。」

ライネイは悩む。

「ただフェンガルが滅んだ先、バリアを破壊してヴィルヘルミーナ様が現れた場合人類領とゲーキも滅びる。」

「無茶苦茶な‥‥。」

ライネイはがっくり肩を落とす。

「ふむ、ふむ、お困りですね?」

そこにはフェンガルで見た研究員が鼻息荒くたっていた。

「なんだお前は?」

「おお! ベルクートアブルよ! 素晴らしい力だ! 因果を書き換え得るその力! ああ、羨ましい。」

「良いから話を続けろ。」

ヴァルヴィオは指1本で研究員の胸倉を釣り上げる。

「あれは本来あるべき姿に戻りつつあるだけです! ほら、このデータを!」

パネルを見せる研究員。

「何故わかる?」

「お渡しした指輪にはスキャンの術式が掛かっております。体調もわかる優れものですよ。」

「お前がヴィルヘルミーナ様に指輪を渡しただと!?!?!?」

「はいはい、話がややこしくなるから。」

レンツは研究員を下ろす。

「ベルクートアブルに突入するためのバリアの指輪のことだよね?」

「その通りです! すごいでしょう!」

「うんうん、凄い凄い。で? そのデータが何を示しているの?」

「元々の数字がこれ、コレが恐らく全快の状態の魔力キャパシティです、で現状がコレ。ぐんぐん増えているでしょう?」

「怪我で減った魔力を増やしているってこと?」

「ん? 怪我で魔力はへりませんぞ。元々枯渇状態だったのでしょう。今やっと4%超えた位ですね。」

「え? あの、え? あのヴィルヘルミーナ様の魔力が 枯渇状態だった‥‥!?」

ライネイは引きつりながら尋ねる。

「データ上はそうですね。地上やゲーキ程度の魔力濃度ですと自然回復に任せていたら百年単位はかかっていたかと思います。」

「道理で。最初と比べてどんどこ魔法が派手になっていったのはそれか‥‥。」

レンツは遠い目をする。

「つまりあれで、1%前後くらいだったのか‥‥。」

「ちなみに我はどの程度の魔力だ?」

「ふむ、素晴らしい! ヴィルヘルミーナ様の2%程の魔力ですぞ!」

「それは凄いのか‥‥?」

ヴァルヴィオは首をひねる。

「ええ!ええ! フェンガルの者でも恐らく0.05%あれば強い方でしょう!」

「それなら我々は‥‥。」

残務処理でゲッソリしているレムはボソリと呟いた。

「ううーむ、すみません。低すぎて測定外です。」

「酷い‥‥。」

レムはがっくりと項垂れる。

「史上最強と言われるだけあるねえ‥‥。」

レンツの呟きに首を振るヴァルヴィオ。

「いや、我を平民かなにかと勘違いしてないか? いくら何でも我の50倍も魔力があるか。そんな存在は別の生命体だ。いくら腕力等と比べて振れ幅が大きいとはいえ限度があるぞ。そもそも魔力量でいうと我もベルクートアブルでは5本の指に入るのだがそれを踏まえて考えよ。」

「うーん、結局なんだかよくわからないってこと?」

「まあそうだな‥‥。」

「わかりますぞ。」

「え?」

研究員はこともなげに言う。

「肉体の構成は異世界人100%ですな。多少見た目は変形していますが。」

「え、100%?」

「は?」

「100%だと!?」

そこに割り込んできたのはゲーキの王 ウィリアム。


「千年の苦しみから解放して差し上げるのが、我々の償いではないのか?」

ムゲラルはハァとため息をつく。

魔力に満ち溢れたこの地ではお互いに決め手に欠ける。

「そちらの都合等知ったこと無いわ。」

黒と白の魔力がせめぎあう。

「ふうむ、1対1だとキリが無いな。」

ムゲラルは首をすくめる。

「あなたの本体が亡びるまで我慢比べよ。」

「我が本体はもう数日ももたん。」

「なら私の勝ちね。どうせ負けるなら今すぐ消えなさい。」

「貴様らが滅びなければ人類に未来はない。」

「共存の道もあるでしょう?」

「これだけ力の差があるのにか?」

「個々でもそうでしょう。原始共産主義者が教皇とは面白くないジョークね。」

「差が大きすぎる者とは共に歩めぬといっているのだ。」

「自己の経験談かしら? 老人の失敗話は不愉快になるだけなのよ。」

「私だけでない。歴史的な事実だ。この世界がそう作られているからな。戦い続け、増える魔力を捧げ続けるための生け簀。生贄の園。」

「次はポエム?」

「お前は我の先代と聞いているが?」

「何を?」

「記憶が無くなっているのか。ふむふむ、王女様はお優しいと見える。」

「思わせぶりな単語ばかりを‥‥。」

手を振り上げようとすると、後ろからその手を抑える者が居た。

「無礼な。何者?」

男のような女のような、じっと見ても常に変わり続けて何かわからない存在が居た。

『我が名は魔王だ。』

その表情は伺い難いが、全ての絶望を詰め込んだような顔だなとヴィルは思った。


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