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3_14 悪役王子の身の上話

レンツはポンと手を打つ。

「ああ、えっと、回復の奇跡を使える存在を概して聖女って言ってるんだ。」

「回復? 自然治癒ではなく?」

「あー、そう言えば人類領以外に聖女って居ないんだっけか‥‥。」

レンツはかいつまんで説明する。自分のことやエシオン、アイオイの事も。

「ふうむ、怪我を治す力か。人間は放っておいたら切られた手足は生えてくるのか?」

「そんなわけないよ。」

「であれば聖女の力は癒しではない。巻き戻しか、創造のような別の物だ。回復なら傷跡に皮膚が張って終わりのはずだろう。それは世界のあり方を変えてしまう危険な力ではないのか?」

真面目な顔のヴァルヴィオに首を振るレンツ。

「そんな複雑に考えたことなかったよ。そんなもんだなーくらいだったし。」

「全く。ベルクートアブルを封印しておいた割に神々は何をしているのだ。」

ヴァルヴィオは舌打ちをする。

「そんなに危険な話なの?」

「我々ベルクートアブルのものは世界の在り方に関わることが出来ないように被造物のレッテルを張られてしまった。そして聖女は世界の在り方に介入できる。つまり我々より上位の力ということだ。我々を封印しておいてそんな危険な存在を野放しとは割に合わないではないか。」

「まあ、異世界の人間が増えたというか増やされたというか‥‥。」

「微調整をせねば滅びるぞ。」

「なんか発言が神様側だね。」

「元々そういう事も我々もやっていたからな。太古の時代は神と呼ばれていたこともある。」

ヴァルヴィオは遠い目をする。

「前に言ってた堕ちた神ってやつ?」

「‥‥まあそれだ。結局のところ管理者争いに負けて、権限を取り上げられた敗北者が危険物扱いとして封印されていたのがベルクートアブルというものだ。悲しい話だがな。」

「ん?ってことは創造神様とほぼ同列なの?」

「いまは違うな。元はそうだったが。というより元々序列などは無い。動物と同じだ。発生段階では上下は無いが今は家畜とその飼い主のような序列が出来ている生物があるだろう。まあ、ザックリいうとそういうことだ。」

「あれ、ってことは現在の世界にとっては邪神みたいな存在なのでは‥‥??」

「まあ、あー、そうかもな。」

ヴァルヴィオは渋い顔をする。

と、ふとヴィルの体を見ると、なにやらジワリと靄のような何かが出てきていた。

「何事だ?」

「いやさっぱり。」

レンツはその靄に手を伸ばそうとする。

その瞬間、ヒュっと靄がレンツのほうに伸びてきた。

「え?」

「防げ。」

ヴァルヴィオは自分とレンツの間に障壁を産む。

靄はその障壁をガリガリと削ろうとする。

「無茶苦茶魔力削っていくぞこれ。ちょっと引くぞ。」

「え、ヴィルさん置いといて大丈夫なの!?」

「我々のほうが大丈夫ではない。何事だあれは。」

みるみるヴィルの周りの植物や土塊が風化していく。

「根こそぎ魔力を奪い取っている。何事だあれは‥‥。」

ヴァルヴィオは冷や汗を流す。

「取りあえず生きているみたいだね。」

「お主、神経の太さ3mくらいあるのではないか?」

ジト目でレンツを見る。

「フェンガル自体飲み込む可能性があるな。一旦逃げるぞ。お前の家はどこだ?」

「え、ゲーキ側ならこっちだけど、ヴィルさんが封印しているんだけど。」

「向こうから来れないだけだろう。こっちからは行け‥‥、無いな。」

ヴァルヴィオは透明な壁をつつく。

「どうする?」

「この程度なら破る。お前、我をなんだと思っているんだ?」

ヴァルヴィオは右手に炎を纏わせる。

「有を無に、固を波へ、我が敵を滅ぼせ。」

右手を振りかぶる。

「伏せとけ!」

そして振りぬいた拳から生まれた不可視の破壊はヴィルの結界を吹っ飛ばし、その向こうのドップネスの屋敷も半分吹っ飛ばした。


「何事だ!?」

ゲーキのほうに逃げ出すと、ライネイ達が武器を持って取り囲んでいた。

「今の攻撃は!? はっ! レンツか! 無事か!?」

「無事‥‥とも言えないけれど、ナーラックは!?」

「大丈夫だ。エシオン殿とアイオイ殿が間に合った。」

それを聞いてヘナヘナと座り込むレンツ。

流石に緊張の糸が切れた。

「不幸中の幸いか‥‥。ハノイ様達も無事なんですか?」

「その様だ。危ういところだったようだが‥‥、人死には居ないと聞いている。あの戦力差で奇跡だな。ナーラックは本当に人類なのか?」

「どうでしょうね??」

実際他の領と比べても戦闘力が高すぎる気はしていたが、言われてみれば確かにという気がしてきた。

「所でヴィルヘルミーナ様は‥‥? それにその方は。見覚えがあるような‥‥?」

「さっきまでドツきあいしてた元ドップネス。今は元の人格に戻ってるから多分安全?」

「不安そうな顔で此方を見るな。紹介が遅れた、我が名はベルクートアブル大帝国、皇帝が長子、ヴァルヴィオ・ベルクートアブルである。」

「ベルク‥‥!?」

ライネイは顎が外れたのかというくらい口を開けて固まっている。

「あとヴィルさんはドップネスに頭を吹っ飛ばされていまフェンガルに居る。」

「なんと‥‥。」

「ただ生きているみたい。」

「‥‥なんと‥‥???」

ライネイはヴァルヴィオを見る。

「ベルクートアブルの者とはいえ頭が無くて生きている者はおらん。なので今のヴィルヘルミーナ様は特殊な状態にあると言える。正直我には状況が分からぬ。いま周囲の魔力を吸収し始めている。フェンガルの者が無事かは分らんが。」


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