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3_9 悪役令嬢不在中 ナーラック決戦

「おおお!!」

ネイミは目の前の光景に興奮の叫びをあげる。

森林が次々と圧縮されてそのまま消し炭となっていく。

それを見たベヘモスは回避に入るが、一体は間に合わずにそのまま半身を吹っ飛ばされて、倒れ伏した。

血煙が竜巻のように巻き上がり、さながら地獄の様相を呈している。

それを見た残りの2体は少しだけ後ずさって慎重にこちらを見る。

「1匹やれただけで重畳。これで怯えて少し時間は稼げるか。」

ハノイは気絶しているリアを抱え上げる。

「魔力枯渇まで頑張るとは。」

はぁとため息をついてスゥスゥと寝息を立てるリアの頭をなでる。

「ネイミ殿。」

「はっ。お任せを。」

ネイミの部下が恭しく受け取り、背中に括りつける。

「可能な限り遠くに頼む。」

「承知いたしました。」

魔力枯渇までやるのは性格として分かっていた。そして両親をおいて逃げないことも。

気絶している今だからこそ安全な土地に逃げさせることが出来る。

「恨まれるかな。」

「恨まれないように頑張りましょう。」

「どちらにしろな気はしない?」

「まあそうね。」

ハノイとテレジアはお互いの顔を見て苦笑する。

「じゃあ後ほど。」

「またね。ネイミは此処をお願い。」

「承知いたしました。」

ネイミにナーラックの避難の続きと、邸宅を任せ、二人は別々にベヘモスに向かう。


ベヘモスはざっくりいうと、しっぽのある巨人である。

巨体を二本の足と、巨大なしっぽ、そして魔力で支えており、体の大きさに見合わない動きの速さを持つ。

「足をやることができたら此方の勝ちね。」

テレジアと、数人のネイミの部下達は間合いを取ってベヘモスを見る。

「ううっ、見てるだけで震え上がります!」

既に半獣人と化しているデミフェンリル達は尻尾が下に降りている。

実際のベヘモスを見て本能は委縮してしまっている。

と、バアン!とテレジアは鞭を地面に振るう。

魔力の波が空間を揺らす。

「気持ちで負けたら終わりよ。気合を入れなさい。」

テレジアの魔法の一つである。魔力の衝撃で自分よりも精神的に低位な人間の能力を一時的に引き上げることができ、敵の能力を下げる。ただし怖い。

『ハッ!』

「グオオ‥‥!」

ベヘモスはテレジアを敵と認識した。

「グオオ!!」

ベヘモスは体を回転して、凄まじい勢いの尻尾をテレジアにぶち当てる。

「ぬうっ!!」

ドゴオオン!と地面を揺らす音をたてて、それを上に受け流す。

「うそぉ!?」

デミフェンリル達は信じられない映像に悲鳴を上げる。

「魔力強化しただけよっ!!!。」

透かされてバランスを崩したベヘモスの足を思い切り蹴りつけるが、体重差が激しすぎてビクともしない。

「クッソ頑丈ね‥‥!」

其の隙にデミフェンリル達も足に噛みついたりするが、かすり傷程度である。



「ハノイ様! どうするんですかぁあ!!。」

「グオオオ!!」

暴れまわるベヘモスの攻撃をひょいひょい避けるハノイ。

「自慢じゃないが俺は戦うのには全く向いてないんだよ!!!」

「だからです!!!!」

「本国やアステアラカからの救助が来るまで逃げ回って、ナーラックを守るのが俺たちの仕事だ! 何故なら倒せないから!!」

「すがすがしいまでに開き直ってますね‥‥。」

「人類領の僻地の男爵に無茶を言うんじゃないよ‥‥。」

「そう言えばそうでしたね。」

嫌そうな顔をするハノイのすぐ横をベヒモスの拳が掠る。

普通の人類がこれだけ避けることが出来るのだろうかとふと疑問に思うデミフェンリル達であった。

「動きは単純だからさんざん煽って山奥に連れてくぞ!」

『ウッス!』


実際ベヘモスとナーラックの戦力差は比にならないレベルであったが、初撃の衝撃がベヘモスを及び腰にしていた。

フェンガルの知識から人工的に作られたベヘモスは親を知らない。よって戦い方自体フェンガルやドップネスに教わったかりそめのものでしかない。

それもあまり目立たぬようにひっそりと暮らしていたため、本来のポテンシャルからはほど遠い力であった。

それでもその力は神話レベルの強さ。フェンガルならいざ知らず、ゲーキや人類に後れを取ることは無い。

よってその結果は火を見るよりも明らかであった。



「うぐっ!!。」

受け流しきれなかった衝撃で吹っ飛ぶテレジア。

岩肌で体の半身がおろされるが、何とか地面に両足で着地する。

「テレジア!」

そこに逃げてきたハノイが合流する。

「なんでこっちに!」

「お互い様だ。生きてるか?」

「なんとかね。」

ハノイもズタボロである。

「攻撃通じる?」

「無理ね。」

テレジアは首を振る。

当初は動きが悪かったベヘモスもだんだん動きが洗練されてきた。

元々の生命体としてのポテンシャルが異なる。

一撃死の攻撃が来ないと見たベヘモスはその動きは最早ナーラックの面々が避け切れないレベルになってきている。

「避難完了予定まであとどれくらいだ?」」

「3時間くらいかしら。」

「はぁー、長いなぁ。」

ハノイはテレジアの手を握る。

「何?」

「頑張ろうぜ。」

「そうね。」

テレジアもハノイの手を握り返して、ベヘモスを見上げる。

「行くぞ!」

「ええ!」

ハノイはベヘモスの攻撃を誘導する。

そこに渾身の力で尻尾の攻撃をずらすテレジア。

「今っ!」

「もう少し!」

だが攻撃を当てるためにはもう少し引き付ける必要があった。

「馬鹿!!!!!!」

ベヘモスの尻尾の一撃は、もう片方のベヘモスとハノイを纏めて吹っ飛ばした。


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