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3_8 悪役の思惑推定と悪役令嬢の弟子 大暴れ

「無茶苦茶な‥‥。」

ゲーキの王、ウィリアムは眉間を抑えてため息をつく。

「な‥‥な‥‥!」

ライネイの報告を聞いたドップネスの私兵長も絶句している。

「今の弱った私の魔力量ならそれがウソかどうかは分かるでしょう。」

「ぐ‥‥なぜ‥‥ドップネス様‥‥!?」

膝を付いて頭を抱える兵士長。

「ヴィルヘルミーナ嬢は勝ち目があるのか?」

「それは‥‥。」

ライネイは渋い顔をする。

最早自分の関知できるレベルの戦いではなかった。

「ヴィル殿が負ける姿は思いつきませんが、あのドップネスも同様です。」

「そこまでか‥‥。」

「フェンガルの者たちが木っ端のように吹き飛んでおりました。」

「ヴィルヘルミーナ嬢が負けた場合を想定しよう。ドップネスは何を考えている?」

ウィリアムは兵士長を見る。

「畏れながら、ドップネス様は愛国心の強いお方でございます! ゲーキに害をなす事など私には思いつきませぬ‥‥!」

「で、あろうな。余もわからん。逆に言うと表に出てこない奴の弱点があればそれが原因というわけだ。何か思いつくことはあるか?」

「私は何か家族に有ると思っているが。」

ライネイはそういう。

「‥‥、ドップネス様にはかつてお子様が居られました。不幸がありましたが‥‥。」

「遺体は見たのか?」

ライネイの言葉に、反射的ににらみつける兵士長。

「! いや‥‥、密葬だった。」

「生きている可能性はあるか?」

「何のために!? あの後のドップネス様の憔悴を見ていないから貴様ッ‥‥!」

ライネイに噛みつかんばかりに激高する兵士長。

「死因はなんだったんだ?」

「病死だ‥‥。」

「何の?」

「貴ッ様‥‥。」

「面倒だ、すり合わせだと思え。特に他意もなかろう。」

ウィリアムはライネイを見る。

「その通りです。今は時間が惜しい。」

「細かくは伏せられている。」

「だがお前は知っているな?」

ウィリアムは兵士長を見る。

「未知の病気でした。魔力のコントロールが出来なくなり、四肢が膨れ上がり‥‥。お美しかったあの姿が‥‥。口性ない者たちは呪いだのなんだのと‥‥。」

うっと声を詰まらせる兵士長。

「魔力の‥‥。」

ライネイは首をひねる。

「ひょっとしてその前後にクリスタルを集め出していなかったか?」

「時期的にはそうだが‥‥。」

兵士長は眉を顰める。

「生きている可能性があります。クリスタルの研究を見返りにフェンガルに力を貸していた可能性が。その呪いなるものは恐らくヴィルヘルミーナ様が仰っていた魔力のコントロールができなくなり爆発する感染症でしょう。魔力が多いものほど発症するといわれています。強大過ぎる魔力を代々隠して生きてきたドップネスにとっては表に出せない病だったことでしょう。いや、本人がそれを望んだか‥‥。」

「そんな事が‥‥!」

「ふむ、魔力の多さが原因であればクリスタルで奪い取れば進行が抑えられるということか。」

「仮死状態となっている可能性もありますが。いずれにしてもゲーキの魔力量では症例がなかったことでしょう。なのでフェンガルを頼ったのだと思います。ただ直接交渉するとそういう事情が表に出るため裏での交渉になったのでしょう。」

「しかしそれがどうしてフェンガルでヴィルヘルミーナ嬢を襲うことにつながるのだ?」

「一つはフェンガルで直接交渉するとそれが表に出るため、証拠隠滅でしょう。もう一つは証拠が有っても問題ない状態になった可能性があります。」

「ゲーキとフェンガルを手中に収める、ということか。」

「そうすれば表立って娘を治療できることでしょう。そのため一番最初に邪魔になる存在と言えば、現状恐らく最強の魔力を持っているヴィル嬢でしょう。ひょっとしたら同じ症例の検討用に捕まえるつもりもあったのかもしれませんが。」

「全ては空論ではあるがな。今すぐドップネスの屋敷の者全員を捕まえよ。兵士長、お前も一緒に行け。無実を信じているのならば証明せよ。」

「はっ!」

兵士長は近衛兵たちと共に走り去っていく。

「あとはナーラックだったか。間に合うか?」

王城にたどり着く前に手は打ってはあるが、心配そうにするウィリアム。

「ナーラックが滅びたらヴィルヘルミーナ嬢が敵に回る可能性があるぞ。」

「恐らく大丈夫だと思います。」

「というと?」

「神のご加護というやつでしょう。」

「は?」


「うおおお、武者震いしますねえ!!」

屋敷の上で遠くを見るネイミはそう叫ぶ。

地平線のかなたには巨大な魔物が3体居た。

恐らくベヘモスと呼ばれる神話の生物である。ゲーキでも遥か昔に滅びたといわれていた種属である。

その身長は小山程あり、ナーラックの屋敷の倍くらいはありそうであった。

その目は薄い魔力濃度のせいか血走っており、美味しそうな魔力を持つ此方を見ている。

「ベヘモスってゲーキだとランクでどの程度?」

「シーリカ様が本気でA+ですが、ベヘモスは噂程度ですが少なくともS++は有るかと。」

テレジアの質問にへの字顔になるネイミ。

「ちなみにあなたは?」

「‥‥B+です。」

「どう?」

テレジアはハノイに目を向ける。

「まあ、妥当な所かな。話を聞く限り今のネイミ殿ならA位はあってもよいと思うが。」

「ほんとですか!」

キラキラした目でしっぽを振るネイミ。

「何方にしろキツいのは間違いないけどな。」

ハノイはちらっとリアを見る。

巨大な魔法陣の中でブツブツと呪文を唱えるリア。

未成熟な体の代わりに練り上げた魔力を一時保管する魔法陣である。

ただ、ゲーキでも最大に近い魔法陣だが、ギリギリと悲鳴を上げている。

「取りあえずは先制でシバいてあとは大人のお仕事だ。」

「四の名をもつ重きもの、その力けんげんせよ! リア・ナーラックの名において! グラヴィオン!」

その瞬間、ナーラック領の一角は消し飛んだ。


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