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3_7 悪役令嬢の危機

『ガアアアア!!』

ドップネスの拳が地面を吹き飛ばすが、レンツとヴィルは軽く回避する。

「急にテレフォンパンチになりましたわね。」

「動きが見え見えだね。」

「とはいえ、馬鹿にならない攻撃力ですが。」

ヴィルはドップネスの顔面に光線を打つが、燃え上がる魔力なのか何なのかよくわからない陽炎に阻まれて霧散する。

「これってメトスレ大司教の技みたいな感じ‥‥?? それとは比にならないけれど‥‥。近づくだけでダメージ食らいそう。」

「ただ此方もあまり長くは持たなそうですわね。」

『アガアア‥!!』

ドップネスはフラフラしている。

「限界が近いのか、それとも拒否反応でしょうか。本体の力を解放した結果異物が排除されつつあるようです。が‥‥!」

一瞬で詰め寄ってきたドップネスの蹴りをモロに食らうヴィル。

「このっ!」

レンツの刃を正面から弾き返し、裏拳でレンツを吹き飛ばす。

「何方の時間が先に尽きるか‥‥。」

ヴィルは折れた両手に癒しをかける。

「かなりの魔力ですわね。おかげで治療が進みません。」

「オエッ、ぐうう‥‥。」

『ガアッ!』

「ぐおっ!?」

血反吐を吐きながら何とか転がって逃げるレンツ。

掠った背中の皮膚が焼けただれる。

『ガアゴオ!?』

追撃しようとするドップネスをヴィルの蹴りが吹っ飛ばす。

「チッ、足が。」

蹴りが当たった右足が焼けただれたように皮膚がずり落ちる。

「炎に腐食の魔力も乗っている‥‥? どこかで‥‥。」

「ヴィルさん!!」

「あ。」

一瞬、他のことを考えた瞬間。

『ガアッ!!』

ドップネスの右手がヴィルの頭を粉々に打ち抜いた。

「ヴィルさん!!!!!」


その頃、ドップネス領に転がり出たライネイは周りを見回す。

「まあそうだな‥‥。」

ライネイの周りはドップネスの私兵で囲まれていた。

「無断侵入ですぞライネイ殿!」

「それどころではない。お主らの主、ドップネスが死にかけている。」

「なんですと!?」

嘘ではない。放っておくと死にそうであるのと、ヴィルが殺しかけているので嘘ではない。

「フェンガルで暴れまわるわけのわからん生物のせいでドップネス含めフェンガル自体が危機だ。今はベルクートアブルの英知によってゲーキへの影響を止めているところだ。国王に報告せねばならぬ! 邪魔をするなら貴様ら全員外患誘誘致で死刑になるぞ!」

「なんだと‥‥!?」

私兵はザワザワする。

「お前、ドップネスの私兵長だな。国王に会いに行くのに付いてこい。私は今はもう魔力がない。先触れよ!」

ライネイは国王当てに先触れの魔法を飛ばす。

情報量は全く乗らないが、緊急の用事の時に飛ばす魔法である。

「‥‥、承知した。何人か付いてこい。急ぎですな?」

「その通りだ。あとこの手紙を人類領へ。急ぎだ。中を見ても構わん。」

その場でサラサラと書き上げてドップネスの私兵に渡す。

「承知。急げ! 複写の魔法を使え。」

内容確認よりも、複写を優先した私兵長の判断に安堵する。

「では参りますぞ。」

「頼む。」


ライネイはふぅと息を吐いた。

ドップネスが思った通りの慎重さを持っていた事に対して。

あのようなわけのわからん力はどう考えても国家転覆を考えているとしか思えない。それを個人で所有しているのか、領としてやっているか。

案の定、用心深いドップネスは腹心にすら何も伝えていなかった様子。

これで領としての計画なら恐らく出てきた瞬間串刺しになっていただろう。

部の悪い賭けではなかったが、それでも緊張した。

あとは手紙の先、アステアラカがどれだけ早く動くかだが、神にでも祈るしかない。

神‥‥、か。

「城に向かう途中に大神殿があったな?」

「そうですが何か?」

「5分ほど時間をもらえぬか?」

「その程度でしたら‥‥、何があるのですか?」

「いや、神頼みをな。」

「は?」



ナーラックではテレジアとリア、シーリカの部下のネイミの3人が庭で軽め?の運動をしていた。

「ハァ、ハァ‥‥、リア様もそうですが、テレジア様も人間とは思えない動きです‥‥。」

デミフェンリルのネイミはゼエハァと息を上げる。

「リアと一緒に運動したせいかしら。全盛期より力がある気がするのよね。」

シュシュっとシャドーをする男爵夫人。

流石元Sランクである。デミフェンリルよりは若干元々強い程度であった。

「リア、どうかした?」

眉をひそめて周りをきょろきょろするリア。

「‥‥、遠くから変な気配がする。あっち。」

リアは遠くの山のほうに指をさす。

「‥‥まだ私だと分からないわね。あなた、わかる?」

テレジアはノンビリお茶を飲んでいたハノイに話しかける。

「居るな確かに。」

ハノイは力のない男爵ではあったが、その危機回避能力の高さで今まで生き残ってきた猛者である。ヴィルのおかげで色々危機ってなんだっけ状態であったが、索敵能力自体は元々ぶっちぎりで高い。

「私ですら分からないのに‥‥!」

ネイミはわなわなする。

「どの程度?」

テレジアの疑問に苦虫を嚙み潰したような顔をするハノイ。

「シーリカさんより強いのがダースで居る。」

「マズいわね。アステアラカに連絡送って間に合うかしら。」

「無理だろうな。とはいえ連絡は送ろう。ネイミさん。部下の中で一番足の速い人にアステアラカに連絡を。」

「承知いたしました。2人組で2ルート、計四人でアステアラカへ。手紙をもって駆けよ。片方は王城へ、もう片方は大神殿へ最短で。あと一人はセントロメア王へ。アイオイ様やエシオン様が居れば可能な限り連絡を。」

『はっ!』

ネイミの部下たちは一気にはける。

「ナーラックはだいじょうぶ?」

リアは心配そうにテレジアを見る。

「だいじょうぶよ。ヴィルちゃんが安心して帰ってくるまでナーラックを好きにさせるわけにはいかないわ。」

テレジアはリアを撫でる。


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