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3_3 悪役令嬢の拳

「なれば我、真・マスク・デュ・ソレイユの最終奥義を見せねばならぬ!」

「要らないので帰ってくださいませんか?」

「正義が悪にしっぽを巻くなどあり得ぬ!」

「街を破壊するお主も大概悪な気がするが。」

「正義のためならやむなし! 今貴様らを滅ぼさねば、無辜の民が」

「現在進行形で無辜の民が吹っ飛んでいる気がするんだけれど。」

「ええいええい! 貴様ら正論ばかり述べおって! 犠牲無くして正義なし! つまり、犠牲があるということは、それ即ち正義!」

「千年たつと対偶の概念も崩壊するのでしょうか?」

「いや、こ奴の脳みそがその程度ということだろう。」

「貴様らー!!」

ドカーン!とマスクマンの背後で爆発が起きる。特に意味のない爆発のようである。

「言葉は無粋! 拳で語れ!」

マスクマンの拳に大量の魔力が集まる。

「キャラがブレブレだよね。でも魔力の使い方は参考になる。」

レンツも拳に魔力を集める。

「ほう! 貴様! やるではないか!」

マスクマンは右手を腰だめに構える。

「行くぞ!」

「良しこい!」

マスクマンとレンツの拳が互いの胸に直撃して、お互いを吹っ飛ばす。

「ぐほぉ! なんという密度! 魔力量はそこまででもないが貴様やるな!」

胸を押さえて荒い息をするマスクマン

「おえぇ‥‥。」

レンツはゲロゲロと胃液を吐いている。

「急に身の丈に合わない魔力を練るからだ。魔力量と出力量は別物だぞ。練習あるのみだな。」

ライネイはレンツの前に出る。

「こうか?」

ギィィィ!と硬質な音が鳴る。

「なんという魔力濃度!!」

「数千年の研鑽の差であろう。一人で出来ること等たかが知れていよう。」

ゴン!と地面が吹き飛んだ次の瞬間には、ライネイの拳がマスクマンの顔面にめり込んでいた。

「ぬうん!」

「ぶおおっ!?」

地面を削りながら吹っ飛んでいくマスクマン。

「ふむ、わりと使い勝手のいい魔法だな。呪文が不要というのが良い。」

手をにぎにぎしながら思案するライネイ。

「純粋な身体強化の亜種という感じでございましょうか。」

「ヴィル殿は使えるのですか?」

「似たようなものであれば多少は。」

「落ち着いたらまた教えて頂ければ幸いです。」

「そうですわね。」

マスクマンが吹っ飛んでいった方をみる。

今のところは気絶しているのか反応がない。

「レンツ様、大丈夫ですか?」

「なんとかかんとか‥‥。魔力酔いみたい‥‥。」

「マスクマンに殴られた場所は大丈夫ですか?」

「頑丈さはマスクマンよりは上っぽいので、それは大丈夫。」

パンパンと胸の汚れを落とす。

「我々が神と崇めるフェンガルの一撃で無事とは‥‥。」

ライネイはじっとレンツを見る。

「‥‥殴らないでよ?」

「耐久テストをどこかでしてみたいのはまあ、間違い無いが。」

「テストならヴィルさんのほうが妥当な気はするけれども‥‥。」

「進んで怪我をするのはお断り申し上げます。」

「耐久に耐えうる機器を開発するところからな気はするが。さて、無駄話をしているおかげで迎えが来たようだぞ?」

研究所の中から、ボサボサの髪をした男が現れた。

「振動があると実験の邪魔になるのでどこかに行ってください。」

「研究のお話です。あなたたちは集めたクリスタルで何をしようとしているのですか?」

「バリアの破壊と、神への進化ですが? はて、あなたたちは‥‥フェンガルの外から来たのですか? どうやって!?」

「バリアをこじ開けて。」

ヴィルは手をすいっと動かす。

「なるほど。その魔力量ならば可能でしょう。ふむ、仮説は正しかったということですね。あとはアプローチだけですね。もう一度やってもらってよいですか?」

「それよりもう一つ、あなたたちは魔王派閥ですか?」

「どちらでもあります。私はこの所長です。部下は二分していますが、研究の内容は同じですので、特に問題はありません。」

「では、穏健派と呼ばれるものが膨大なクリスタルを要求している理由は?」

「バリアの破壊です。」

「それは今の話と矛盾しませんか?」

「しません。前者の魔力量における破壊とは、ゲーキや人類間です。後者の破壊に関してはベルクートアブルのバリアです。」

ライネイの眉がピクリと上がる。

「ベルクートアブルにアプローチできたのですか?」

「僅かですが。ただ今は反応がありません。」

「というと?」

「存在を瞬間的に認識できましたが、その後は全く此方とベルクートアブルの繋がりが出ません。」

「何故認識機出来たのだ?」

「戦争の際に放たれた魔法でヒビが入ったようです。」

「‥‥我々と同じか。それが魔王か?」

「そうですね。いわゆる急進派と穏健派はトップが相打ちになっておりますので、現在は特に平和には暮らしております。」

興味無さそうに言う男。

「ただお互い戦争のためのアプローチとしてバリアの破壊と、業の克服というものがありますので、それは引き続き研究中です。前者に関しては形骸化してはいますが、後者にも繋がる話ではありますので。中止要請も出ていませんし。所でお手伝いいただけないのでしたら研究に戻りますが。」

「これ、手伝ったらヴィルさん実家に帰れるのでは?」

レンツはヴィルにいう。

「確かにそうですわね。」

と、頷いた瞬間、施設が吹き飛ぶ。

「ハーッハッハ! 我! 正義の力得たり! 真マスク・デュ・ソレイユ改め、マスク・デュ・ウニベーソ!」

漆黒のオーラをまとったマスクマンが爆風の中から現れた。

「正義のクリスタルの力、我に宿り! 悪を倒せと叫ぶ!」

「ちょこちょこ集めていたクリスタル全部使っちゃった感じ?」

レンツはあきれ顔。

「あああ! 研究資材が全部! 何ということを!」

「正義の前の些事! 我、全知なるウニベーソが貴様らを倒す! 倒すが、なんで倒す予定だったのか、はて?」

マスクマンが首をかしげている瞬間、ヴィルが襲い掛かる。

「流石に放置すると不味そうな魔力量ですので、申し訳ございませんが。」

「ぬ?」

「失礼。」

ヴィルの拳がマスクマンにめり込み、爆音を置き去りにして吹き飛ばした。

「うわあ‥‥。」

ライネイはドン引きである。

「これ、スカイドラゴンの時より魔力込めてない?」

「比ではないほどの力でございますゆえ。」


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