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3_1 悪役令嬢達とフェンガルの人々

「とはいえ、初代の方々は滅び、人工的に作り出された我々はこの様ですので、ロクな情報は残っていません。なぜそうなったかは現在伝えるものもおりませぬ。」

シラヴィジャは首をすくめる。

「人口は、そういった者に特化したような人々によって数は担保されていますが、結局はあまりコントロールは出来ていませんね。」

資料を出しながら細かい出生動向について説明してくるが、それをヴィルは抑える。

「ところで話は変わるのですが、人類を滅ぼす目的は結局何なのですか?」

ヴィルは尋ねる。

「魔王様がお望みだからというところ以上は存じませんが、魔王様の力があれば我々は神に至れると言われております。そうすれば滅びゆくこのフェンガルに未来が見えるというものでございます。毎日毎日、日々すり減るリソースを眺めるのはつろう御座いました。この資料をご覧ください。」

シラヴィジャはうつろな笑顔を浮かべる。

「ですが!」

ばっと手を広げる。

「魔王様に比肩する! いや、それ以上の力をお持ちの神が現れました! フェンガルは救われたのです!」

「ふむ、話が通じんな。そもそもが我々はお主らの敵対勢力であるぞ?」

ライネイは頬に手を当ててため息をつく。

「具体的に魔王様なるものはあなたたちをどうやって救う予定だったのですか? 神になるとは?」

「分かりません。私は政治と補佐の能力はありますが、それ以外は管轄外です。」

シラヴィジャは首をひねる。

「技術に詳しい方はおられますか?」

「研究所に2名いるはずです。」

「ではとりあえずそちらに話を聞きましょう。」

「主よ! 私はどうすれば!?」

「取りあえずゲーキと人類領への攻撃は辞めてくださいませ。」

「承知いたしました。そののちは?」

「方針が決まるまで待機です。」

「何時間ほど待機いたしましょうか?」

「‥‥、レンツ様。」

珍しくヴィルはレンツに助けを求める。

「日常業務が終了するまでに帰ってこない場合は通常ルーチンを継続、帰ってきた場合は適宜方針変更で。」

「承知いたしました。」

シラヴィジャは書類業務に戻る。

「ところで研究所って何処に御座います?」

「現在業務中のため、質問はルーチン業務外でお願いします。」

シラヴィジャは顔を上げずに返答する。

「‥‥とりあえず外の誰かを捕まえよう。」

「さようでございますわね。」


「フェンガルってどういう国なんだろう?」

外を歩きながらレンツは首をひねる。

「力の代わりに人間性を失った国‥‥。」

ライネイは考える。

「力を求めたのは何故だ? 戦争か?」

「基本的にそれ以外には考えづらい話ではございますわね。不老長寿の副産物という可能性も御座いますが。」

ヴィルはふうむと考える。

「どうにも話の通じない面々なのにゲーキと折衝が可能だったことや、ゲーキ以上の魔力を持ちながらもバリアに穴をあけることが出来なかったのは恐らくすべて魔王なるものの影響でしょう。魔王なきフェンガルは自発的に何かをすることが不可能のようでございます。恐らくゲーキに来た者たちも魔王の指示を守っているだけなのでしょう。」

「我々のほうにきた、いわゆる穏健派に関してはどう思う?」

「対魔王として動く人々が動き続けているだけなのでは? 外部から何かの指示がない限りは永久に変わらずに指示を守り続ける人々、ということでございましょう。」

「なるほど。」

ライネイはフェンガルを見回してため息をつく。

「フェンガルは滅んでいたのだな。」

「今のままでは、でしょう?」

ヴィルの視線に静かに頷くライネイ。

「ふとした疑問なんだけど、ひょっとして俺って、そのいわゆる神、になるわけ?」

レンツは眉間にしわを寄せて考え込む。

「どちらかかと言えば、でございましょうか。まあ、フェンガルの方よりはちゃんとはしているとは思いますが。実際はどうなのかは私にはわかりかねます。」

ううむと唸るヴィル。

「ただ‥‥フェンガルの技術で再現が可能かと言われますと‥‥。あれはほぼ生贄の儀式みたいなものでございます。恐らくアイオイ様の命を捧げて3人纏めて転生したようなものでございましょう。解毒と言いますが、要は細かい生命操作に長けたアイオイ様有っての奇跡みたいなものでございますからね。」

ヴィルは首をすくめる。

「起こった事象は再現可能であるという名言も御座いますが、かなりの屍山血河は覚悟する事項でございますわね。ただまあ、キーである私が手伝う気がさらさらないのでいずれにしても不可能だとは思いますが。」

「ヴィルヘルミーナ殿は、恐らく現在のフェンガルにおいて支配階級と考えられるシラヴィジャを手にしています。生かすも殺すも自由ではありますが?」

ライネイは言外にフェンガルをどうするつもりなのかヴィルに尋ねる。

「さて、フェンガルは私には所縁のない土地。用事が終われば去りましょう。リア様が心配されます。」

ナーラックに敵対したフェンガルにかける情けは無いと、此方も婉曲的に伝える。

「そういえばリア様大丈夫かな。元気にしてるかな。」

レンツは素直にそういった。

ナーラックのノンビリした生活から離れすぎていて、正直ホームシック気味である。

「ゲーキに戻りましたら、私の腹心をナーラックに送りましょう。ゲーキと比べると魔獣の強さも低めとはいえ心配でございましょう。」

ライネイはヴィルにそういう。

「護衛もそうですが、これ以上魔力が増えると恐らくレムやシーリカあたりではコントロールを教えるの困難になるのでは?」

「確かにそうでございますわね。私もさほど教えるのがうまいわけでもございませんし。またナーラックの皆さまに相談いたしましょう。私も久々に手紙でも書こうと思います。」

「俺はハノイ様に胃薬でも差し入れしてあげようかな‥‥。」


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