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2_58 悪役令嬢達とフェンガル達

『オイコラ! ここを通せ! どうなっとるんだ!!』

次元?の裂け目の向こうで騒ぐドップネスだが、ライネイ達と異なり通れないようである。

「これは?」

「バリアの条件の一つでございましょうか。そう、である者とその連れ以外は入れないように設定されているのかもしれません。いずれにしても来られないなら重畳。」

『蘇生希望。このままだと本体が滅びる。』

「ヴィルさん、可愛そうだから戻してあげよう。」

「正直敵側なのでそこまで情けをかける必要もない気はしますが、とはいえ既に支配下でございますし良いでしょう。」

ヴィルが手をふいっと振るうと、クリスタルがぐったりしている男の中に入り込む。

「‥‥、蘇生問題なし。」

すっくと立ち上がって手を握ったり開いたりする男。

その身にまとう魔力はライネイと比べても遜色がない

「さて、そういえばお主の名前はなんなのだ?」

「ダリクシュ。」

「此処はどこだ? 何をする場所だ?」

石造りの建物を見回してそう尋ねるライネイ。

ただ継ぎ目の無い不思議な石である。くり抜いているわけでもなさそうではある。

「フェンガル。その中でも最も外に近く、バリアの穴が近い場所。0番地と呼ばれている。」

「味もそっけもない名前だな‥‥。」

ライネイは理解困難という顔をする。

「フェンガルの規模は?」

「ゲーキの100分の1も無いのではないか?」

「そんなに小さいのか‥‥。」

「質問があるのであれば上司のほうが詳しい。」

ダリクシュは静かに頷く。

「上司とは何者だ?」

「上司は上司だ。此方だ。」

ダリクシュは歩き出す。

「コレが言ってた人間性の喪失ってやつ?」

「四角四面な回答しかせぬところからはそうなのかもしれぬが‥‥。」

レンツの質問に渋い顔をするライネイ。


「な‥‥!?」

扉を開いて外を見たライネイは絶句する。

そこには、虹色の壁に囲まれた、王都のような景色が広がっていた。

「コンクリート造りの比較的近代的な都市でございますわね。」

ヴィルはふうむ、と見回す。

「こんくりーと?」

「石ではなくて、人工の石のようなものでございますわね。」

「へぇー。道理で。」

レンツは壁を触る。

「いや、問題はそこではないだろう?」

すたすた歩いていくダリクシュを指さすライネイ。

その周りには不思議な格好をする人間が蠢いていた。

全身タイツのようなものに身を包み、並んで歩く人たち。

空を飛ぶよくわからない機械の上で飛び回る人たち。

水の中でくるくる回る人たち。

「なんかのお祭り?」

「こんなディストピアみたいな祭りがあってたまるか。」

ライネイはレンツをジト目で見る。

「ダリクシュも大概だが、此処にいる奴らの魔力量はさらに上だな。」

「取りあえず敵意は無さそうだから進んでみる?」

「そうだな。」


すたすた歩くダリクシュを追う一同。

大きな建物の中に入っていくが、だれも止めに入る気配はない。

「此方だ。」

無骨な部屋を指さすダリクシュ。

「入っても?」

「許可について指示はされていない。」

「私がまず参りましょう。」

ヴィルは扉を開く。

そこはかなり大きな広間に、一つだけポツンと机が置いてある殺風景な部屋であった。ただ埋め尽くすような資料が置いてある。

「ん? ん?」

資料を見ていた男は顔を上げる。

「フェンガルの民ではない。何処から来た?」

不思議そうに首をひねる男。

「私はベルクートアブルから。此方はゲーキと、人類領から参りました。」

「ん? ん? んん??? バリアを破壊した?」

「私が破壊いたしました。」

「おお! なんと! 流石魔王様!」

男は破顔してヴィルの手を握ってぶんぶんふるう。

「魔王なのか?」

「記憶には御座いません。」

「我等魔王様の言いつけ通り、歪んだ世界を清めようと力を蓄えておりましたが、まさか魔王様が先にンガッ。」

ヴィルが男の顔をつかむ。

「何やらよくわからないので取りあえず支配下に置いておきましょう。」

男の首に隷属の呪いが浮かび上がる。

「あんまりホイホイ使うものじゃない気もするんだけれど‥‥。」

「概ね自白していたので緊急事態ということでそこは。」

「ンンン、ンン!?」

男はぱっと目を開いてきょろきょろする。

「魔王様の気配がしなくなりました‥‥。」

急にしょんぼりする男。

「あなたは何者ですか?」

「魔王の副官をしていたシラヴィジャです。」

「魔王の副官‥‥!? 100年前ごろからか?」

「何年かは分かりませんが初めて此方に魔王様が現れて以来私が副官です。」

「‥‥お主何歳なのだ?」

「さて、2千か4千の間だとは思いますが。」

不思議そうな顔をするシラヴィジャ。

「フェンガルの者は不老なのか!?」

「いえ、流石に数万年もすれば滅びるとの試算です。」

「‥‥まさか‥‥。」

ライネイはおずおずと言い出そうとする。

「お主らフェンガルの者は、人工的に生み出された生命体なのか?」

「我々は神になろうとして失敗した者の集まりです。」

何ともないかのように言うシラヴィジャ。


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