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2_54 悪役令嬢とゲーキの王2

「結局纏めるとどういうことになるんだ?」

レムは首をひねる。

「人類と魔族が戦争をしていたのはいわゆる【魔王】のせい。先々代の次点で【魔王】はゲーキから離れフェンガルに居る様子。恐らくフェンガルの【魔王】は世界を滅ぼそうとしている。」

レンツはそう呟く。

「となると、人類が脅威というお題目自体があやふやになってこないか?」

レムは不思議そうにする。

「その通りでございますわね。世論というものがフェンガルに有るのかは分かりませんが、分かりやすい理由として使っている可能性もあります。まあ、全くの嘘というわけでもないのでしょうけれど。」

ヴィルは頷く。

「そうだな。長命種に関しては殺し合い自体は他人事や歴史の話ではなく実感を持った話だからな。大半ボケてはいるが。」

ウィリアムはそういう。

「王族の方は長命種ではないのですか?」

「普通の魔族は人類と大して寿命は変わらん。魔獣や魔剣等は別だがな。」

「成程。」

「しかしそうなるとエプラスの考えが分からなくなる。人類を滅ぼそうとしている【魔王】に与するということは自らの首を占めることにしかならないのでは?」

レムの疑問にウロウは首をすくめる。

「エプラスだけ助ける、もしくはエプラスの上層部だけ助ける等の話があったのではないか?」

「話が通るなら、そもそも滅ぼす必要が無くならないか?」

「まあそれもそうだな‥‥。何を考えているのやら。」

「恐らく理解外の突拍子もない話が有るのだろう。騙されているとしか思えんがな。」

ウィリアムはため息をつく。

「成程、それでドップネス側のフェンガルに接触しようという腹か。」

ウィリアムはライネイを見る。

「その通りです。フェンガル相手でもヴィルヘルミーナ様であれば恐らく力が通るでしょう。」

「そうだな。ただ此方に来るフェンガルの者は向こうで言う最底辺の者らしいがな」

「あの魔力量で‥‥!?」

レムは引きつる。

「まあ見ればわかるだろうが、魔力はバカ高い。ただ違和感を覚えなかったか?」

「‥‥受け答えがあまり感情を感じませんでしたがそれにかかわる話ですか?」

ライネイはウィリアムを見る。

「そうだ。以前の私なら知らぬ、と言っていただろうが今は特に封じられていないからな。詳しくは知らぬがフェンガルは魔力と引きかえに失ったものがあるらしい。それが何かは人によるらしいが、人間性の喪失をまましているとは聞いている。」

「あの不自然な受け答えはそれが原因でしたか‥‥。」

レムは納得のいった顔をする。

「それでも国としての体を成していると考えると想像もつかぬ話ですな。」

ライネイは不思議そうにする。

「半精神生命体のようになっているとのことだ。それゆえ一時的ではあるが魂を飛ばして此方で受肉することが出来るらしい。実際どのような形態の国になっているのかは分からぬ。私が連絡を取るのは此方に来るものではなく、国政を担う者らしい。名前も知らんがな。」

「どうやって連絡を取られるのですか?」

「呪いを介して会話が可能だ。今となっては連絡がつかない可能性もあるがな。とはいえ連絡が来ることなど1年に1度あればいい方だ。」

「国同士の関りと考えるとありえない話ですな。」

「あっちもあっちで話が通じるようで通じない。こっちに来るフェンガルの奴らは四角四面な会話しかできないし、本国の奴らは気でも触れてるのかと言わんばかりの一方通行だ。」

「なるほど、それゆえ亜神か。出来損ないの神という事か‥‥。」

ライネイははぁとため息をつく。

「亜神?」

「先日フェンガルの人間と話したときに自身のことをそう呼称しておりました。」

「ふむ、であればベルクートアブルはさしずめ神か。」

「恐らくは。少なくともフェンガルの者らはそう信じているのでしょう。」

「ベルクートアブルも周囲にバリア等あるのですか?」

レムはヴィルに尋ねる

「実際に見てはいないので何とも言えませんが、そういった話は聞いてはおりません。ただ人類領の国やゲーキという名もほんのり聞いたことはある程度でございます。全くかかわりがないとは考えにくいとは思いますが‥‥。」

「フェンガルとゲーキのような関りが有るのかもしれないな。であればその様な流れで情報を仕入れているのであろう。とはいえ一般の市民にまで広く開示する話ではないとは思うが‥‥。ヴィルヘルミーナ様は本国ではどのような立場で?」

ウィリアムは尋ねる。

「申し遅れました。改めて自己紹介をさせていただきます。私、ローゼンアイアンメイデン家長女、ヴィルヘルミーナ・ローゼンアイアンメイデンで御座います。ベルクートアブル大帝国、公爵が一人ヴァンドゥーク・ローゼンアイアンメイデンの子で御座います。」

「公爵令嬢‥‥でございましたか‥‥。」

ライネイは驚く。

「ちなみに興味本意での質問なんで‥‥だが、ヴィルヘルミーナ嬢はベルクートアブルで何番目ほどの魔力の持ち主なので?」

ウィリアムは敬語にすべきかどうなのか悩みつつ尋ねる。

「5本の指には入っていたと思います。明らかに私より魔力量が強いと思われるのは王女殿下で御座いますわね。」

「ああ、指先一つで地形が変わると言ってたあの。」

レンツは思い出しながらそうつぶやく。

「‥‥指先‥‥。」

「土木工事には便利でございますよ?」

「まあそうだろうけれども。」

「あとはお父様も私と同じくらいの強さだと思います。とはいえ私は本国では出力に難が御座いましたので、戦闘能力という点では天と地だと思いますが。ヴァンドゥーク、お父様はベルクートアブルの刀と呼ばれておりました。こと戦闘能力に関しては王女殿下とお父様は同程度なのではないでしょうか。」

「ヴィルヘルミーナ殿以上が2人も‥‥。」

ウロウはげっそりした顔をする。

「そういえば思い出したのですが、グランディヴィアのメトスレ大司教がフェンガルが人類を滅ぼそうとしているのにクリスタルを使うつもりと仰っていました。また人類の王族が継承する知識を断絶するのも目的だったと仰っていたのですが、心当たりは御座いますか?」

「‥‥。」

ウィリアムは無表情になる。

「前者に関しては分からない。ただ魔力を貯める性質上、大魔力で何かをするつもりではあるのだろう。地上をシンプルに薙ぎ払うだけなのか、それとも‥‥。」

「バリアをこじ開けて自ら世界を滅ぼすか。」

レムは呟く。

「もしくはベルクートアブルまでその魔力で穴をあけて、ベルクートアブルの力で地上を滅ぼそうとするか‥‥。」

「あまりベルクートアブルが戦争をしているイメージはないのですが。」

ヴィルは首をひねる。

「ただ何かしらの利益があればやるものもいるのでは?」

「そうですわね。ベルクートアブルの階級社会はかなり厳密でございます。」

「その割にはヴィルさんって気さくだよね。」

「私はどちらかといえば例外でございます。とはいえ昔はもう少し苛烈な性格だった気もしないでもございません。平和は望んではいたのですが。」


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