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2_50 閑話 ナーラックの長閑な一日

「旦那さまー、旦那さまー。」

ナーラックも南とはいえ、たまに肌寒い夜が出て食うようになってきた頃である。

少し強い日差しと、涼しい風を受けて、のんびりと家族で午後のティータイムをしているところであった。

ヴィルからの手紙で来年の春ごろまでは魔獣被害も無いだろうとのことで、少しゆっくり目に色々と下準備をしているところである。

来年の春になったところで受肉直後なので脅威度も低めであるので、割とのんびりである。

そしてそういう時に限ってろくでもない話が舞い込んでくるもんだと思っていた。

「ヴィルからの手紙か?」

「そうなのですが、連名ではあるのですが名前しか書いてませんで。」

「ヴィルと‥‥ライネイ?」

「「ゲッ!!!」」

後ろに控えていたシーリカの部下達が一斉にざわつく。

「‥‥。ライネイ様とは何者で?」

ハノイはおずおずと聞いてみる。

「‥‥レム様の上司と言いますか、レム様の上司の上司の上司くらいでございます。ライネイ・フロール侯爵。アステアラカ方面含め、同領域の最高責任者でございます。」

「家になんで手紙が‥‥?」

「私程度では理解は出来かねます‥‥。」

渋い顔をするシーリカの部下達。

「取りあえず中見てみましょう。結構分厚いわよこれ。」

ささっと開けて中身を取り出すテレジア。胆の座り方は流石である。

「入試要項‥‥??」

「ブゥ。」

ハノイは口に含んでいた紅茶を庭に噴き出す。

「いやいや、シーリカさんが言ってたやつ‥‥でなんで侯爵が!?」

「これ、あれね。アステアラカのソレイユ再びね。」

「ああー‥‥。」

渋い顔をしながら資料を読む二人。

ソレイユ学園も大概だったが、それよりも2~3ランク程上に見えるえげつない校舎、尋常ではない入試要項にめまいがする。

「最低の魔力単位の数字がわからん。なんだこの単位。」

「横に換算書いてあるわよ。向こうのB-ランク魔獣程度位みたい。というと‥‥、ユーズゥ様までは行かないくらいかしら。」

「行かないといってもだが。」

うーんとハノイは唸る

「他の皆も行けるの?」

リアの言葉に唸る面々、。

「受験は出来るみたいだが‥‥、他の子らはどう思う?」

「魔力量だとかなりギリギリかと。人間にしては強い方ではございますが。とはいえゲーキで一番となりますと、ほぼ魔神クラスの方々が来られますのでシーリカ様と幼少期から同程度の魔力量を持つ者もおられます。とはいえ、 下の方のクラスであれば何とかといったところでございましょう。」

「詳しいね。」

リアは部下の一人を見て不思議そうにする。

「昔の主人に付き添って通っていた事があります。」

「なるほどー。」

「ちなみにリアは、大丈夫なの?」

ハノイは心配そうにする。

「うーん、正直よくわかんない。通ったこともないし。」

「そりゃそうか。付き添った経験からしてリアはやっていけると思う?」

ハノイは部下の一人を見て心配そうにする。

「問題ないでしょう。王族レベルになると分かりませんが、少なくとも男爵レベルでは余裕だと思います。」

「それはそれで心配なんだけど‥‥。」

「じゃあみんなと受験勉強しなきゃね!」

「そうねぇ‥‥、あなた詳しそうだから手伝ってもらえない? ええと。ネイミさんでしたか。」

「はっ、微力ながらお手伝いさせていただければ。」

シーリカの部下の一人、ネイミは頭を下げる。

「来年の春までに間に合うかなぁ。間に合ったところでその先が大丈夫かという懸念事項も大量にあるが‥‥。」

「まあ、力もコネもあるに越したことはないでしょう。ありがたいことに向こうの侯爵様が後ろ盾になってくださるみたいだし。

「人様の金ってのが一番の懸念事項だけれどね。貸しってのも怖いんだよねぇ。」

「まあもう今更でしょう。ヴィルちゃん自体に借りが山ほどあることだし。」

「そうだなぁ。」

「ですが、懸念事項が一つあります。」

ネイミはそういう。

「というと?」

「ゲーキの存在がそもそも極秘事項です。それゆえ恐らくこの資料にも国名が黒塗りで消されているのでしょう。」

ネイミが指さす場所にはいくつか黒塗りになっている部分があった。

「ああー、なるほど。」

「ですので皆さまには国名は伏せて、ソレイユよりもランクの高い他国の入試の権利が手に入ったと口裏を合わせるのが良いでしょう。国を超えたエリートの集まるためセキュリティが高く直前まで場所も不明と言っておけばまあ、無理やり押し通すのは可能かと。」

「あなた頭いいわね。」

ほー、と感心するテレジア。

「じゃあ、皆用の分かりやすい要項をまとめて送ろうと思うから手伝ってくれる?」

「承知しました。」

「じゃあ、その間リアは魔力押さえる練習しような。」

「えー。」

「えーじゃないの。押さえるほうが将来的には伸びるって言われてるし、リアに必要なのは繊細なコントロールなの。生活魔法がそのうち使えなくなるよ。」

「うー。それは困る。わかった!」

実際問題リアの力は上がり続けており、今となってはリトルファイアみたいな小さな着火魔法で5m位の火柱が立つレベルになっており、逆にまともな魔法が使えなくなりつつある。

まあ、大は小を兼ねるとはいうけれども、と悩んでいる最中であった。

魔封じのネックレスを使えば普通には出来るが、根本的な解決にはなっていない。

可能であれば自力で調節出来るようになればいいのだが、前例も無ければ見たこともない魔力量なので人類に可能なのかもわからない。

たまにアステアラカやセントロメアから魔術の講師をこっそり派遣してもらっていて、エシオン様やカルネイル様には頭が上がらない。

積み重なる恩に頭を悩ませているハノイであったが、国内有数の貴族を助けてもらった恩のあるアステアラカと、個人的に親しい王子のいるセントロメアも貸しとは考えていないのに気づく日は多分来ない。


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