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2_49 悪役令嬢と根回し


「「‥‥。」」

ゲーキの方々はピクリとも動かずに、黒色の薔薇の形をした何かよくわからないものを見ていらっしゃいます。

元はオリハルコンだとは思うのですが、すでに最早何か別のものになっているような印象です。

「あー、ヴィルさん。触っても大丈夫? コレ?」

「特に魔力を外には漏らしては無さそうですので大丈夫かと。」

重さも当初の金属インゴットとは思えないくらいの軽さになっております。どういう作りなのでしょうか。

「どうぞ。」

「なんだろう。ガラス細工みたいで壊しそうで怖いんだけど。あ、でもめちゃくちゃ固いねこれ。ピクリとも動かない。」

レンツ様は花弁をもってぷらぷらさせております。

「ちょ! 爆発したらどうするのだ!?」

その手をがしっと掴んで叫ぶのはレム様でございます。

「え、爆発するの!?」

「多分しないかとは。」

「多分!?」

ヒィッと悲鳴を上げるのはウロウ様。

「ええと、ご注文の品は此方でよろしいでしょうか?」

フリーズしていらっしゃるライネイ様に尋ねますと、はっと目を開いて頭を振って頷かれます。

「十二分かと。ただ此処までだと話が大きくなりすぎるやもしれんな‥‥。あまり派手に動くとドップネスに気づかれるやも‥‥、いや、ことここに至っては変わらぬか。」

「まあ、今まで割と大暴れしてきたからねぇ。」

レンツ様はため息をつかれます。

「必要経費でございましょう?」

「まあ、そういう表現も間違ってはないかと。」

「フェンガルはゲーキで多少騒乱が起きたところで気にはしまい。と、仮定して動こう。とは言えわざわざ派手にする必要もあるまい‥‥。内々に国王にアポイントをとっておこう。申し訳ないが1日だけ時間をいただけまいか?」

「やむを得ないと理解しております。よしなに。」

「感謝します。ウロウ、レム、これを持ってアポイントを取ってくるのだ。」

「はっ!」「承知しました!」

ウロウ様とレム様は猛ダッシュで消えていかれます。

「さて、夕食までまだ時間が御座います。お部屋を案内いたしましょう。お二方を‥‥、別々のお部屋でよろしいでしょうか?」

「勿論です。」

レンツ様は頷かれます。

「ではお二方を客間へ。湯あみの用意もさせましょう。ひと段落する頃には夕食の時間になっていると思います。お荷物は‥‥?」

「手ぶらなので大丈夫です。」

「流石ですな。」

「あ、空港のドマリクさんと、リーレンさんにご迷惑をかけているとおもうのと、空港に風龍の御者のミトさんを置きっぱなしなので、出来れば一報入れていただけると‥‥。」

「承知した。何か託は?」

「いえ、お世話になりました、と。」

「了解いたしました。ではお二方を。」


屋敷の使用人の方に連れられて、久しぶりに大きめのお風呂に入れていただきました。

アステアラカよりかなり大きめでございます。使っている石鹸の質もよろしいですわね。ただベルクートアブルの桃の香りのする石鹸が懐かしくなってまいりました。


湯あみを終え、用意していただいたドレスに着替えて夕食会場に向かいますと、すでにツルツルに磨かれ終わったレンツ様が居られました。

「レンツ様もすっきりされているようでなによりです。」

「いやぁ、こんなすごいお風呂入ったことないから‥‥。ここぞとばかりに洗って来たよ。」

「洗いすぎもお肌を痛めますが、健康な方ですと問題ないかと。」

「なるほど。ほっぺたがしっとりする。」

レンツ様はほっぺたをおしたりされて確かめておられます。

ナーラックの石鹸はわりと脱脂力が強いですので、微調整が難しいところでございます。

「済まない、書類仕事でお待たせしたかな?」

そこにライネイ様が現れました。

「いえ、丁度素晴らしいお風呂のお話をしていたところです。」

「気に入ってもらえたのなら何よりです。本来なら妻と子等も紹介すべきなのですが、本宅の方に居ますのでまた落ち着いてからにしましょう。」

「そうですわね。これからも何度か来ることになるとは思いますので。」


急に用意していただいたにもかかわらず、素晴らしい料理が出てまいりました。

レンツ様もナーラックでマナーを学んでおりますのでそつなく食べていらっしゃいますが、いつもより速度が速くなっているように見えます。

「ふむ、このワインはアステアラカのものでございましょうか。見覚えが御座います。」

「流石ヴィルヘルミーナ様。アステアラカのワインは質が良く、輸入させていただいています。」

ライネイ様は頷かれます。

本来存在すら秘匿される国々とはいえ、このようにやり取りがあるのは面白い事でございます。

「あ、そういえばなのですが、私のお世話になっているナーラック領にリア様というとても利発な子が居られるのですが、シーリカ様とも少しお話したのですが、此方に留学というのは可能でしょうか?」

「ほう。ヴィルヘルミーナ様が利発と仰るのであれば、此方でもやっていけそうですが、魔力を使う授業が多いのですが、そのリア嬢は普通の人類の方ですか?」

「うーん‥‥。もともとは普通の人類だったんですが‥‥、ヴィルさんの謎の力で尋常じゃない力を持つようになっちゃって‥‥。6歳だっけ? で、ペリュトンをワンパンで倒すレベルになってます。」

「それはそれは‥‥。」

ライネイ様はシブい顔をしております。

「まだ力不足でございましょうか?」

「いや、それだけの力があれば魔力量だけでいうと最高学府の受験資格はあるかと。また試料等お送りすることにしましょう。シーリカといえばウロウ付きですな。バックとしては弱いでしょう。私も連名にしておきましょう。」

「お手数をおかけします。」

「その代わりといってはなんなのですが、ベルクートアブルのお話を聞かせていただければ。」

「私のわかる範囲でよろしければですが。」

「十分です。」

その後、懐かしい昔話をしつつ、その日は終わりました。


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