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(本編完結、番外編を更新しています)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?  作者: 水無月 あん
番外編

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閑話 アリスノート 28

よろしくお願いします!

「それにしても、ルイスは、本当にすごいよねー。この魔石を見て、売れるって思うところが控めに言っても天才だよねー」


何が天才だ…。そんな変な魔石を見たら誰だってそう思うだろ? 

俺はため息をついて、兄上にぴしっと言った。


「兄上…。今後、むやみに、俺をほめるのは禁止だ」


「ひゃあ、そんなこと、無理無理無理! ほめずにルイスを語るなんて、できないよー!」

悲鳴をあげる兄上。


「そもそも、俺について語らなくていい」


「ああ、それがいいかもな。静かになる」

と、ウルスが深くうなずいた。


「そんなことしたら、兄様は死んじゃうー! ルイスを語りたい病にかかってるのに、とめられたら死んじゃうから! それでもいいの、ルイス?!」


「病というのは、自覚があったのか…」

淡々とつぶやくウルス。


面倒になった俺は、兄上に向かって適当に答えた。


「兄上はそんなことでは死なない。でも、そうなったら、致し方ない」


「ぎゃー、ルイスが冷たい! …でも、もし、ぼくが死んだら、お棺の中に、ルイスにあげたぬいぐるみだけは絶対に入れてね。子どもの頃、ルイスの誕生日にあげたライオンのぬいぐるみ。ルイスが『にいさま、ありがと』って言ってくれて、ぼくが心臓をうちぬかれた、あの、ぬいぐるみだよ! ルイスルームの中央に飾ってあるから間違えないで。あれだけは、アリス嬢にも渡せない。兄様の最後のお願い。頼んだよ…、ルイス…」

そう言って、椅子にパタリと倒れこみ、目を閉じる兄上。


何をしているんだ、兄上は…。

まあ、放置だな…。


ウルスも同意見なのか、完全に兄上を無視している。


「そういえば、兄上からもらったライオンのぬいぐるみ。いつのまにか見えなくなったと思ったら、兄上のところへ戻ってたのか」

俺が言うと、ウルスが嫌そうに言った。


「ああ…。ルイスは知らないだろう。ルイスは物に全く執着しないもんな。そう、まだ、あの頃は、ルイスが小さかったから、王妃様が、今とは逆で、8割方、王宮にいた。そして、幼いルイスの私物も管理していた。まあ、王妃様も全く物欲がないタイプだから、サイズが小さくなったルイスの服や、使わなくなったおもちゃなどは、すぐさま、子どものいるメイドたちにあげていた。で、ぬいぐるみ遊びをする年齢でもなくなったルイスをみて、王妃様は、ライオンのぬいぐるみを、幼い子どものいるメイドにあげた」


と、兄上がガバッと、椅子から立ちあがった。


「母上は、ほんと、ひどいよね! ルイスの使ったお宝を、ぼくの許可もなく、どんどんあげてたんだから!」


すっかり生き返った兄上が息巻いている。


「それに、あのライオンのぬいぐるみは特別な品だよ! ほんと、思い出しても腹が立つ! 母上のせいで、取り戻すのに、どれだけ苦労したことか!」


「いや、取り戻すのに苦労したのは、フィリップじゃなくて、俺だけどな…」

と、ウルス。


「え? なぜ、ウルスが…?」

と、俺は聞き返す。


ウルスは、暗い表情で語り始めた。

「王妃様がルイスのぬいぐるみをメイドにあげていたことに気づき、フィリップが激怒した。俺にぬいぐるみを取り戻すよう指示した。で、メイドに頼みにいったら、職場にいない…。なんと運悪く、急に仕事を辞めて故郷に帰ってしまっていた。なんでも、家族が急病とかでな…。しかも、故郷は、国境沿いの村。俺は、はるばる、その家を訪ねて行った。なんと、そこで更なる悲劇が俺をおそった…」


「…なんだ、それは?」

ウルスが不憫すぎて、おそるおそる聞く俺。


「そのメイドは、妹の子どもにそのライオンのぬいぐるみをあげていたんだ。しかも、妹が住んでいるのは、なんと王都…。ということで、俺は、すぐさま王都へ戻って、メイドの妹の子どもからライオンのぬいぐるみを返してもらった。つまり、俺は、はるばる国境沿いまで無駄足をふんだわけ。しかも、フィリップから、子どもからライオンのぬいぐるみを返してもらう時、かわりに真新しい、クマのぬいぐるみを渡すようにと預かっていた。そのため、メイドの妹の子どもは喜んで交換してくれた。…が、そのフィリップから預かったクマのぬいぐるみは、やたらと大きかった。長旅には邪魔…。なんど、捨てようと思ったことか…」


「だって、ルイスが持っていた、計り知れない価値のあるぬいぐるみと交換してもらうんだよ? どれだけ高価なぬいぐるみを用意しても、変わりにはならない。なら、せめて、大きさだけでも、ライオンのぬいぐるみよりも大きいものを用意して、その子どもに誠意をみせないとね! ほら、ぼく、気づかいの王太子だから」

と、自慢げに言う兄上。


「なら、少しは俺に気づかえ…」

ウルスが、恨みがましい目で兄上をにらむ。


確かにな…。


「なんというか、大変だったな、ウルス。…それと、すまない…」

思わず謝った俺。


俺の知らないところで、俺の私物で、ウルスが、まさかそんな目にあっていたとは。

しかも、そんなどうでもいいことで…。

俺のせいじゃないが、俺のせいでもあるような…。

なんというか、申し訳ない、ウルス…。


次回で、「閑話 アリスノート」編、終了です。予定より長くなってしまいましたが、読んでくださっているかた、本当にありがとうございます! 

ブックマーク、評価、いいねもありがとうございます! 大変、励みになります。


他サイトになりますが、アルファポリス様で、アリスノートに初登場したルドについてのスピンオフをはじめました。短く終わる予定です。

もしよろしかったら、そちらもよろしくお願いいたします。

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