閑話 アリスノート 26
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「ルイス、待ってー!」
と、とめる兄上を無視して、俺は、さっさとケースをあけて、服をひっぱりだした。
「ルイス、お宝をそんな乱暴に扱っちゃダメー!」
と、騒ぐ兄上を更に無視して、服をとりだしたケースの扉を閉めた。
すると、発光している青い魔石の粒が、さーっと、すいよせられるように集まって、ひとつになった。
そして、ゴンッと大きな音をたてて、ケースの底に落ちた。
すごいな…、あっという間に、ひとつに戻るのか…。
俺は、再び、ケースの扉をあけて、こぶしくらいの大きさになった魔石をとりだした。
そして、じっくり観察するために、片手に持っていた邪魔な服は、床に投げ捨てる。
「ぎゃー、ルイスっ! なんてことするのー! ぼくのお宝なのにー!」
わめきながら、大事そうに服をひろいあげ、服をだきしめる兄上。
恨みがましい目で俺を見るが、そんなことはどうでもいい。
「兄上、この魔石、おもしろいな。マーブル国の魔石は出回ってないのに、どうして、この魔石がこんな特性を持ってるって知ったんだ?」
俺の言葉に、兄上が表情をころりと変えて、自慢げに微笑んだ。
「いや、ぼくも全然知らなかったよ。でも、ほら、普段の行いの良さ? ひきあてちゃうんだよねー、おもしろいものを!」
「はあ? だれが、行いがいいって? どの口が言うんだ?」
ウルスがぶつぶつと文句を言う。
が、兄上は完全に無視して、上機嫌で話しを続ける。
「最初はね、ルイスルームのお宝を入れるケースに、魔石を入れたいなあって思っただけ。魔石を入れておくと、ルイスのお宝を最高の状態で保存できるよう湿度や温度を管理できるでしょ? でも、どんな魔石でもいいわけじゃない。ルイスの瞳に似た色っていうのは、譲れない条件だったわけ。それで、まずは、シュルツ国の青い魔石を買ってみたの。でも、青くても、輝きが圧倒的に足りないんだよねー。ほら、ルイスの瞳は、美しい青さだけじゃなく、すごく輝いてるから! きらめきが満ちているんだよね! 崇高な光があふれでているというか…」
「やめろ。俺の目のくだりはいらない」
「ええ?! これもダメなの?! ルイスが、奥ゆかしくて遠慮深いから、ルイスを褒め足りない!」
「断じて遠慮じゃない。心底、嫌なだけだ。それより、魔石の続きが聞きたい」
「フフ。兄様の話がそんなに聞きたいんだね、ルイス! わかった、続きを話すね」
いや、兄上の話が聞きたいわけじゃなく、魔石の話が聞きたいだけだ。
別に、兄上でなくても、ウルスが話そうが、誰が話そうが、事実を知ることができればそれでいい。
…と言いたかったが、面倒なことになりそうので、だまっておく。
兄上はにこにこしながら話を続けた。
「シュルツ国の青い魔石では納得がいかなかったから、魔石商に話を聞いたの。輝くような青い魔石が、どっかにないかってね。そしたら、マーブル国の魔石は青くて、光っていたような気がするって言ったんだ。でも、産出量も少なく、シュルツ国の魔石より秀でたところがないから出回らないって説明を受けた。でも、どうしても気になったから、魔石商に頼んで、マーブル国でいくつか買ってもらったの」
「その魔石商は魔石の研究者でもあり、わが国で魔石に一番詳しいといえる人物だ」
と、ウルスが横から注釈をいれる。
「それで、その魔石商を呼んで、その場で、ケースの底に敷けるように魔石を割ってもらうことにした。ぼくのお願いに、魔石商は大反対。普通、魔石は大きいほど強い力を持つから、粉々にするなんて信じられないって言ってね。でも、なんとか説得して、魔石商に魔石を割ってもらった。その瞬間、今見たいに、魔石は、すぐさまひとつに戻った。そんな魔石を見たことがなかったみたいで、魔石商は驚きすぎて固まってたっけ。だから、今度は服を飾ったケースの中で、ぼくが自分で割ってみることにした。あ、もちろん、魔石商がいる前では、ルイスのお宝服じゃなくて、イミテーションに替えてたよ。だって、お宝は、厳選した人にしか見せられないからね!」
と、胸をはる兄上。
いや、誰が見てもいいだろ。っていうか、ただの服だ。お宝じゃない。
しかも、イミテーションってなんだ。そんなもの用意する必要ないだろう…。
…と、つっこみたいところばかりだが、そこもだまっておく。言うと、ますます話がそれて面倒だからな…。
兄上は、意気揚々と話を続けた。
「せまい空間の中に、魔石以外のものがあったら、どうなるんだろうって思ったから、魔石をケースの中で割って、すぐに扉をしめた。すると、あら、不思議…」
「なるほど、魔石が服をとりこもうとして、まわりを浮遊する状態になったわけか」
俺がそうつぶやくと、兄上が叫んだ。
「うわあ、ルイス! ここから、いいところだよ! 一気に結論を言ったらダメ!」
「いや、結論って、そこはもう見てるし、それ以上何を話すんだ? ほんと、フィリップは、ルイス相手になると、やたらと話が長くなるな。今朝の会議なんて、面倒な重鎮には、やたらと省略して、ろくにしゃべらなかったくせに。おかげで、俺が長々とフォローしないといけなくなっただろ…。どんな相手であれ、ルイス相手の半分くらいは、やる気をだしてしゃべれ!」
ウルスが眉間にしわをよせて、兄上に苦言を呈す。
「あー、無理無理。あの連中相手だと、もったいなくって、ぼくのやる気がでてこないもん。あ、でも、後ろ暗いところは、しーっかりおさえてるから、もし、ルイスに迷惑をかけそうに思えたら、容赦なく潰すね。その時は全力でやる気をだすから、安心してね、ルイス」
と、俺に微笑みかけてくる兄上。
兄上…。そんなことで、やる気をみせなくていい。
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