閑話 アリスノート 24
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ということで、再び、話しはじめた兄上。
「それで、庭に走っていったぼくは、すぐに、ルイスを見つけた。だって、そこだけ、きらきらと輝いてたからね。あっ、いつもそうなんだ。ルイスのまわりは輝いてるから、ぼくは、すぐに見つけられるんだよ!」
俺の眉間にしわがよる。
「そういうのはいい。要点だけしゃべってくれ。話がすすまない」
「えええ! これも要点だよ?! すごい大切な箇所だよ!」
俺の眉間のしわが更に深くなる。
「なら、話しは終わりだ。別に聞かなくてもいい」
ウルスが同意するように、力強くうなずいた。
「それがいい。そして、フィリップ。すぐに仕事に戻るぞ」
兄上が、ウルスをきっとにらむ。
「まだ、休憩は終わってない!」
そう言い返した後、俺のほうに向きなおった。
「ルイスについて、要点じゃないことなんてないんだけど、でも、ルイスが嫌ならそうする…。できるだけ、少しにする…」
ウルスをにらんだ顔とはまるで違って、叱られた子犬のように、しょんぼりしている。
なんだか、罪悪感がわいてきた。
言い過ぎたか…?
ぼくの顔をじっと見ていたウルスが、俺の心を読んだように言った。
「ルイス、フィリップの演技力にだまされるな。表情や声色を変えるなんて、お手のもんだろ? それに、これくらいで傷つく繊細さな心を、フィリップは持ってない」
なるほど。それもそうだな…。
納得した俺は、兄上に言った。
「俺が兄上の瞳を好きだと言った時のことだけ、簡潔に言ってくれ」
「えー! そこだけ?! 劇で言うと、そこはまさにクライマックスなのに! クライマックスだけ見て帰るみたいになっちゃうよ?! もったいないよ?!」
「全然もったいなくない。そもそも、劇じゃない。ただ、俺はそんなことを言った記憶がないから、確認したいだけだ。そこだけでいい。長々しゃべるなら、聞かなくていい」
俺の断固とした言葉に、兄上が肩を落とす。垂れた耳が見えるようだ。
が、もう、まどわされないからな…。
強い視線で見返す俺。
「わかった。なら、そのクライマックスを、心をこめて伝えるね!」
と、一瞬にして、楽しそうな顔になって、俺に微笑みかけてきた兄上。
「何度見ても、すごい、変わりっぷりだな…」
と、あきれたようにつぶやくウルス。
確かに…。
「では、泣く泣く色々とばして…、クライマックスに入ります! 場面としては、剣の稽古が終わってベンチで休んでいるルイスの隣に、ぼくも座ったところからね。…飲み物を飲むルイスを見守りながら、心地よく座っていたぼくは、ふと空を見上げた。ルイスの瞳よりは全然落ちるけれど、きれいに晴れた青空。それを見た時、つい、ぼくは言ってしまったんだよね。ぼくも、ルイスみたいなブルーの瞳になりたかったって。すると、ルイスはつぶらな瞳をぼくに向けて、ぼくの瞳をじーっと見た…」
兄上は、そこまで言うと、どこか遠いところを見るような目で、だまった。
「…兄上。劇じゃないから間もいらない。それで、俺はなんと言ったんだ?」
「えー! 間もダメなの?! ルイスが厳しい」
拗ねたように言う兄上。
「早く言わないなら、もう帰ってくれ」
「言います! 言います! じゃあ、続きを言うね…。すいこまれそうなほど美しいブルーの瞳で、僕の瞳の色をじっと見ていたルイス。そして、言ったんだ…『兄様の目、木の実みたい』って」
「まあ、はしばみ色って言うくらいだもんな。はしばみの実の色に似てるだろう。それより、ルイスのセリフを言うときのフィリップの裏声のほうに驚いたわ…。怖いな」
と、ウルス。
「それから?」
俺は先を促す。
兄上は、フフフッと嬉しそうに笑って、話しを続けた。
「それから、ルイスはぼくの瞳を見つめたまま、『木の実はね、栄養があるよ』って言ったの! ぼくはね、それでルイスに聞いたんだ。『ルイスは、木の実が好き?』って。そしたら、ルイスは、愛らしく、コクンとうなずいたんだよ!」
「それから?」
俺は、再度、先を促す。
「うん、終わり! 以上が、ルイスが、ぼくの瞳を褒めてくれて、大好きって言ってくれた、記念すべき日のクライマックスでした!」
…はあ?!
「待て待て待て、どこにも、そんなセリフなかっただろう?! フィリップの目の色をほめたり、好きだとか言ってないよな? 木の実の話しかしてないだろう!」
と、俺の気持ちを代弁するように、ウルスが叫んだ。
すると、兄上が、あきれはてたように、ウルスに言い返した。
「ウルスって、本当に感受性がないよね? ルイスの言葉の真意がつかめないの?」
いや、本人である俺も全くつかめないが…。
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