閑話 アリスノート 19
ルイス視点が続きます。
「この魔石が元の一つの石に戻るところを見たいな…」
俺がぼそっとつぶやくと、兄上が、何故か上着の袖をまくりあげた。
やたらと張り切っているのが伝わってくる。
「ルイスがそんなに興味をもってくれるなんて、兄様は嬉しい! ではでは、兄様が、魔石が一つに戻るところをお見せしまーす!」
インチキな奇術師のようで、胡散臭さ満載だ…。
兄上は、上着の内ポケットから小さな鍵をとりだした。
キーホルダーなのか、アーモンドのような形のきらめく青い石がついている。
「あ、これもマーブル国の魔石なんだよ。これは砕かずに使ってるんだ。だって、なんといっても形が素敵だよね?」
兄上はそう言うと、その青い魔石を、俺の顔の横に持ってきた。
「うん、やっぱりちょっと似てる!」
嬉しそうな声をあげる兄上。
「なにがだ?」
「この石の形がね、ルイスの目の形に似てると思って! 見た瞬間、石との運命を感じたんだ。そりゃあ、ルイスの目はすばらしくて、ずーっと見てられる、素敵すぎる目だよ。他のものと比べようもない。でも、この石の形は少しだけ似てて、ルイスの目を思い出すから、すごーく気に入ってるんだ!」
「気持ち悪いな…」
俺が即座に言うと、
「そうだな…」
ウルスが相槌を打つ。
「えええ?! いやいや、よく見てよ?! ほら、ここ、ルイスの目って、涼やかな切れ長で…」
「やめろ。それ以上言うと、たたきこわして、二度と元の形に戻らないように畑にばらばらにして埋める」
俺の言葉に、兄上が零れ落ちそうなほど大きく目を見開いた。
「優しいルイスが、なんて、怖いことを言うの?! あっ、口の悪いウルスの影響?!」
ウルスをきっとにらむ兄上。
「はあ?! なんだ、その訳の分からない、とばっちりは? 俺じゃなくて、普通にフィリップが気持ち悪いだけだろ。目の形がどうのこうのなんてな…。俺がもしそんなこと言われたら、即刻、海になげ捨てる」
「ウルス。心配しなくても、ウルスの目の形に全く興味がないから」
「ああ、それは良かった。ルイス、気持ちの悪い兄で、かわいそうに…」
ウルスが挑戦的に言い返す。
脱線しすぎて、全く話がすすまない…。
「兄上…。もう、どうでもいいから、早くそのガラスケースをあけて、魔石がひとつに戻るところを見せてくれ」
いらいらしながら、俺が兄上を促す。
「あ、ごめんね。ウルスのせいで!」
「はああ?!」
またか…。
「兄上、鍵をかしてくれ。ケースの中から服をとりだせば、魔石が一つの石に戻るんだろ? 自分でやる。兄上は、ウルスと話を続けてくれ」
そう言うと、俺は素早く、兄上の手から鍵を奪い取った。
「ちょっと、ルイス! 待って、待って、ぼくが見せるんだから…!」
鍵を奪い返しにくる兄上を片手で阻止。
アリスを守るため体を鍛えている俺は、兄上より、はるかに力が強い。
わいわい言っている兄上を片手で阻止したまま、ガラスケースの鍵穴に鍵を差し込んだ。
が、その瞬間、鍵はびくとも動かなくなった。どれだけ強くまわそうとしても、全く動かない。
抜こうとしても、今度は抜くこともできない。
がっちりと固まってしまった。
なんだ、この鍵は?!
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