閑話 アリスノート 18
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俺は怯えるウルスを放置し、なにより気になっていることを聞くため、兄上に視線をあわせた。
そのとたん、兄上が満面の笑みで言った。
「なんでも聞いてねー、ルイス! あ、もしかして、この魔石の色? すごいきれいでしょ? もちろん、ルイスの瞳の色を探したんだよー。そしたら、マーブル国のこの魔石にいきついて…」
「それは、どうでもいい。いや、むしろ聞きたくない」
「えええええー?! そこ大事! すごい大事! 聞いてよ、聞いてよー!!」
兄上が叫ぶ。
「色はどうでもいい。そんなことより、この魔石、変だろ? 何故、服を囲むように浮いている? 浮遊する魔石など聞いたこともないが?」
俺の質問に、さっきまで小さい子どものようにわめいていた兄上の顔が、するりと変わった。
目の奥が鋭くなった。
獲物を見つけた時の猛禽類の目。
今回はそうだな。仕事の匂いか…。
「ねえ、ルイスはどう思う? この魔石を見て、ルイスが気がついたことを言ってみてよ」
兄上が、挑むように聞いてきた。
こうなると、兄上は、答えを言わない。当てさせる気だ。
なら、早めにあてないと面倒だ。
俺は気合いを入れて、魔石を観察しはじめた。
「…そうだな。まず、大きさ…。一般的なシュルツ国の魔石を参考にすると、こんな小さい粒のような魔石は出回らない。ある程度の大きさがないと、あまり役に立たないからな。しかし、この魔石は小さい粒。どれも同じくらいの大きさだ。…ということは、量から考えても、このケースに入っているのは、一つの魔石を砕いたものか?」
「さすが、ルイス! せいかーい! そう、こぶしくらいの大きさの魔石をね、ぼくの指示で砕いてもらったんだ。もう、ここまできたら、ルイスならわかると思う。なぜ、この砕いた魔石が、浮いているのかってね」
「いやいや、砕いたってわかっただけで、なんで、浮くのかなんてわからんだろ…」
ウルスが、うなるようにつぶやいた。
「まあ、ウルスならねー。でも、ルイスだよ? ぼくの自慢のルイスだからね? ウルスと一緒にしないでよ?」
兄上が失礼なことを言って、フフンと笑った。
「あー、その顔、むかつくな! だが、さすがのルイスでも、それだけじゃ、わからないだろ」
ウルスが吠える。
そんな二人のやりとりを無視して、俺は浮いている魔石の粒を見ながら考えをめぐらす。
「…あ、そうか。わかった」
俺が言った瞬間、
「ほらねー!」
喜びの声をあげる兄上。
「はああ?!」
驚きの声をあげるウルス。
俺は、気づいたことを淡々と言った。
「魔石の粒は、服をとりかこんでいるというよりは、どれもが服に吸い寄せられるように動いている。よく見ると、ひっつきそうになった途端、服にはじかれている。その繰り返しだ。だから、服にひっつくことはなく、はなれすぎることもなく、服のまわりをふわふわと浮いている状態だ」
「うん、うん。それで?!」
兄上が目をきらきらさせながら、続きを促す。
「ここからは、俺の予想だが、このマーブル国の魔石は、一つの塊を砕くと、再びもとに戻ろうとする特性があるのではないか? しかし、このケースの中には、魔石にとって服という異物がある。この魔石は、どうもこの服をとりこもうとしているように俺には見える。だが、結局は、異物。とりこむことはできず、はじかれる。その繰り返しで、服をとりかこむように粒が舞っている状態だ。おそらく、このケースの中から服をとりだしたら、一つの魔石にすぐに戻ると思う」
「いやいや、そんな特性のある魔石なんて、聞いたことないぞ?! さすがに、ルイスの予想は間違ってるよな?」
ウルスが確認するように、兄上を見た。
すると、兄上が、無言で椅子から立ちあがり、俺のそばに立った。
そして、俺の頭をすごい勢いでなではじめた。
「おいっ、こら、何をする?! やめろ!」
俺は兄上の手をばしっと払った。
「ごめん、ルイス! でも、ルイスの答えが完璧だったから、ぼくの愛があふれちゃった。さすが、ルイスだよ! 大正解!」
満面の笑みで、気持ちの悪いことを言う兄上。
「怖い…。 言い当てるルイスも怖いし、奇妙な行動をとるフィリップも怖い…。怖い兄弟だな…」
ウルスが、そう言いながら、体をふるわせた。
読みづらいところも多々あるかと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございます!
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