閑話 アリスノート 11
昨年中は沢山の方に読んでいただき、本当に嬉しく、ありがたかったです。
このお話では、今年初の更新となります。どうぞよろしくお願いいたします!
「その幻のモニュメントのデザインを聞いたら、ルイスは、俺に、もっと感謝するはずだ。なりふり構わず、王妃様に告げ口して、その後しばらく、フィリップに卑怯者呼ばわりされた俺のことをな…」
ウルスが疲れた顔でぼそっと言った。
「はああ?! センスの悪いウルスに言われたくないんだけど?」
兄上が不満そうな顔で、ウルスに抗議したあと、俺のほうを向いて、残念そうに話し始めた。
「あの学園長が持ってきたモニュメントのプランは、小さな塔に『ルイス殿下、初公務記念の碑』という言葉と日付だけが入った、センスのかけらもないものだったんだよ。もちろん、ぼくは、すぐに却下したんだけどね」
「学園長なりに考えたんだろ。校舎の前に建てても、ほそーい塔なら邪魔にならないし、文字と日付だけなら、目立たないしな。建てたくないのに、無理強いさせられてるんだ。苦肉の策だろ…」
ウルスが口をはさんだ。
兄上は立ちあがると、また、あの陶器の器を手にした。
えっ、それは…?
と思った時には、兄上が、ウルスの皿のアップルパイに、無言で、ドバドバと蜂蜜をかけていた。
もはや、食べかけのアップルパイは、蜂蜜に沈みかけている。
「おいっ! 兄上!」
俺が思わず声をかけるが、ウルスも無言で、俺を手で制し、挑むように兄上をにらみながら、蜂蜜から引きあげたアップルパイを口に運んだ。
変な争いがヒートアップしている。一体、なんなんだ…。
怖すぎるんだが…。
兄上は黒々とした笑みをうかべて、
「ウルスは、本当に脳が動いてないみたいだね。しっかり、甘みをとるといいよ。記憶が混濁してるからね」
そう言って、椅子に座りなおすと、さらっと表情をかえて、ぼくの方に向き直った。
「学園長は、ルイスの初公務記念のモニュメント建立を喜んでくれてたよ。でも、残念ながら、センスがなくてね。だから、ぼくが考えたプランを見せたんだ。どんなモニュメントだったと思う? われながら、すごーい素敵で、自信作だったんだ」
と、微笑む兄上。
自信作って…。
「さあ? わからないが…」
俺は、おそるおそる答える。
「フフフ。なんと、当時のルイスの等身大サイズの天使のモニュメントだよ! 公務に訪れた時の、愛らしいルイスをずっと残しておきたかったからね。素敵なアイデアでしょ? もちろん、本物には及ばないけど、腕のいい彫刻家に頼んで、顔はルイスを模してもらうの。そこに、天使の羽がつくんだよ。だって、ルイスは天使よりも神々しかったから! ぴったりのモニュメントでしょ?!」
は? 俺の顔の天使…。
想像したら、鳥肌がたった。
「ウルス…。止めてくれて感謝する」
俺は、なんとか声をしぼりだした。
そして、にこにこしている兄上に向かって、冷え冷えとした声で言った。
「金輪際、そんな気持ちの悪いものを作ろうなどと考えるな!」
「えええ?! 気持ち悪いだなんて、なんて、ひどいことを言うの! それに、もう考えてるもん。もっとパワーアップしたものをね。きっと、ルイスも気に入ってくれると思うよ」
「パワーアップだと…?!」
「そう。あの時は、まだ、ぼくも力がなくて、母上に負けて断念したけど、今なら、脳筋なんかに負ける気はしないからね。ルイスが結婚する時には、盛大に、記念のモニュメントを建てるから! あの時より、パワーアップした素敵なものをね。期待してて!」
「いやいや、すぐにやめろっ!」
俺が叫ぶ。
「はああ?! なんだ、その計画?! フィリップ、凝りてなかったのか?!」
ウルスの眉間のしわが一層深くなる。
「ルイスの一世一代の結婚式だよ! ぼくが何もしないわけないでしょ? 全国各地に、モニュメントを建てようかなあって考えてるんだ。デザインはまだ秘密だけど…フフフ」
全国各地だと?! 俺を殺す気か? やめてくれ!!
今年も幾人かのキャラは、暴走してしまう予定ですが、お付き合いいただけるとありがたいです。
読みづらいところも多いかと思いますが、読んでくださっている方、ありがとうございます!
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