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(本編完結、番外編を更新しています)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?  作者: 水無月 あん
番外編

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閑話 アリスノート 8

ルイス視点が続きます。

その時、ドアをノックする音がして、側近の声がした。


「ルイス殿下、ウルスさんが、王太子殿下を探しに来られていますが…」


ブンブンと横に首をふりながら、「いないって言って」と、小声で俺に言う兄上。


はああー、また、ウルスに言わずに来たのか…。

ウルスの疲労がたまるだろ。


「通して」

俺が答えた。


「えええー!」

兄上が、不満いっぱいの声をあげる。

同時に、ドアが開いて、これまた不満いっぱいの顔をしたウルスが入って来た。


「おい、こら、フィリップ。勝手に消えるな。まだ、仕事がたんまり残ってるだろ。なに、のんきにお茶を飲んで、ケーキなんぞ食べようとしてるんだ?! 俺は、昼ご飯もまだなのに?!」

怒涛の文句を言いながら、兄上に詰め寄るウルス。


「だってほら。せっかく、美味しいアップルパイを買ってきたから、ルイスと早く食べたいなーって。あ、ウルスも食べる?」

と、兄上。


みるみる、ウルスの眉間のしわが深くなった。


「いらん!」


「はあー、じゃあ、アップルパイを食べ終わったら、戻るから。先、帰っててよ、ウルス」

兄上が、開き直ったように言うと、ウルスが、どかっと椅子にすわった。


「いや、待つ。ルイスが一緒だと、なかなか帰らないだろうからな」


あり得るな…。


「ウルスさん、お茶をどうぞ。あと、これなら甘くないですから、良かったら、食べてみてください」

モーラが、アップルティーと、お皿にのった細長いクッキーを差し出した。


「ああ、モーラさん。ありがとうございます。腹減ってるんで、助かります」

そう言って、兄上をすごい目でにらみながら、クッキーを口にいれた。


「あ、上手い! 塩加減がちょうどいいですね」

ちょっと、ウルスの顔がゆるんだ。


「それは、良かったです。甘いものの口休めにでもなるかと思い、焼いてみたんです」


相当美味しかったのか、無言で、食べ続けるウルス。クッキーにのばす手がとまらない。


「モーラが焼いたのか? ちょっと食べさせてくれ」


俺はそう言って、ウルスの前にあるクッキーをひとつつまんだ。

口にいれると、サクッとしたパイ生地に、ほどよい塩の味。

確かに上手い…。お茶会の菓子は、甘いものばかりだ。これもだしてみたらいいかもな…。


「モーラ、あとで、作り方を教えてくれ。今度のお茶会にだしたい。が、リンゴがテーマだから、このクッキーをだすとしても、リンゴの要素が欲しいよな…。リンゴを入れて、塩味と甘さがでるクッキーにしてみたらどうだろうか…」


「リンゴの形をしたお菓子の器があるので、クッキーをたててみることもできますよ?」

モーラが提案してくれた。


「その器、すぐに見せてくれ!」

前のめりで言う俺。


「…ルイス、一体、何を目指してるんだ…。アリス嬢のためなら、もっと他に、やることあるだろ…」

クッキーを食べながら、あきれた声で言うウルス。


「いや、ルイスは本当にすごいよ。それに、ルイスにそこまでしてもらえるなんて、アリス嬢は前世でどれだけ善行を積んだんだろうね。いいな、いいな、うらやましいよね…」

兄上の言葉に、「いやいや、おかしいだろ…」と、つぶやくウルス。


「兄上。…さっき、話しの途中になってたよな。それで、そのガラクタ部屋に保存されている、俺が8歳の時に着てた服とはなんだ?」


「…ガラクタ部屋? なんだ、それ?」

不穏な言葉に、クッキーにのばしていた手をとめて、ウルスが聞いてきた。


「もう、ルイスは謙虚なんだから。自分の物をそんな言い方するなんて! ルイスが使った物に、ガラクタなんて、ひとつもないよ。ほら、ウルスも知ってるよね。ぼくの宝物がつまった、光り輝くルイスルームを!」


ウルスがせきこんだ。

クッキーがつまったのか、あわてて紅茶で流し込んでいる。


「…ああ、ついにルイスに言ったんだな。あの部屋のこと…。ルイス、大丈夫か? フィリップが本当に気持ち悪いだろう…。もし、俺の物をそんな風に保存されてたら、俺なら間違いなく火をつける」

そう言って、あわれみのこもった目で俺を見た。


確かにな。俺も燃やしたい…。


「大丈夫。ウルスルームなんて、気持ちの悪いものは作らないから」

兄上が黒々した笑顔で言った。


その言い方…。失礼だな…。


「そりゃ、よかった。俺もフィリップルームなどという、気持ちの悪いものは作らないから安心してくれ」

ウルスもそう言って、ほの暗い笑みを浮かべる。


二人の間に、ぴきりとした冷たい空気が流れた。


不定期な更新ですみません!

読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださっている方、ありがとうございます!

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