閑話 アリスノート 6
ルイス視点が続きます。
そうだ。とりあえず、聞かなかったことにしよう…。
ということで、椅子にすわると、モーラがアップルティーを淹れてくれた。
一口、飲む。
やはり、このアップルティーはいいな…。香りが爽やかで、上品な味だ。
俺が作るリンゴの菓子類をひきたててくれるだろう。
「さすが、モーラ。美味しいよ。次のアリスとのお茶会の時も、モーラが淹れてくれ」
そう言うと、モーラは嬉しそうに微笑んだ。
「もちろんです。ルイス殿下」
「ほんとに、モーラが淹れてくれるお茶は美味しいよね。…じゃなくて、ルイス! なんで、ルイスルームの話を、聞いてこないの?! なんで、聞き流してるの? もしかして、なかったことにしようとしてる?! ぼくの自慢のコレクションなんだけど!!」
わいわいとうるさい、兄上。
俺は目をそらし、ぼそりと答えた。
「…いや、いい。聞くのが怖い…」
「そんなこと言わないで、聞いて! ルイスが結婚したら、アリス嬢に受け継がれるルイスルームだよ?!」
…ん? …アリス? なんで、ここにアリスの名がでてくるんだ?!
「どういうことだ?!」
「ルイスが結婚する時、結婚のお祝いとして、ルイスの思い出の品々を、ルイスの妻になるアリス嬢に渡すことに決めてるんだ! もちろん、ルイスルームごとね!」
「はあ?! いやいや、そんなもん、アリスに渡すな」
「ダメだよー! ぼくの夢なんだから! ぼくはね、ルイスのことをよろしくお願いします、そう言いながら、ルイスルームの鍵をアリス嬢に託すんだ。多分、ぼく、号泣しちゃうと思う。だって、想像しただけでも、うるっとくるもん。ねえ、モーラ」
モーラが大きくうなずいた。
「ええ、ええ、そうでしょうとも! 王太子様は、それはそれは大事に、ルイス殿下の品々を管理されてきましたもの」
俺は驚いてモーラを見た。
「え?! モーラは、その気持ちの悪い部屋を、見たことがあるのか?!」
「こらーっ、ルイス! なんて、ひどいことを言うの?! ルイスルームは、お宝だらけの素晴らしい部屋だよ?! 王宮の宝物を置いている部屋より貴重なものがつまってるんだよ?!」
兄上が、鬼気迫る勢いで俺に言ってくる。
「おかしいだろ? その判断基準?! なあ、モーラ」
俺は、常識人モーラに救いを求めた。
「いえ、王太子様のお気持ち、よーくわかりますよ。貴重なルイス殿下の思い出の品々ですもの。王太子様にとっては、王宮の宝物より大事なお品でしょう。アリス様に鍵を贈呈されるときは、感動と寂しさで、私も、きっと泣いてしまいます」
と、力強く言うモーラ。
何を言ってる、モーラ…。 一体、どうしたんだ、モーラ…。
「やっぱり、モーラはわかってくれると思った! だから、モーラに、ルイスルームの掃除をまかせてるんだ」
「アリス様にルイス殿下のお品をお渡しするその日まで、全力で、ルイス殿下の品々が鎮座するお部屋のお掃除をさせていただきます!」
と、胸をはるモーラ。
「うん、まかせた。さすが、モーラだ! 本当に頼りになるよね」
と、兄上。
なんだ、その会話。兄上に、常識人モーラが毒されている…。
不定期な更新で、すみません!
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