表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(本編完結、番外編を更新しています)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?  作者: 水無月 あん
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/118

挿話 王太子の受難 7

王太子視点の話が続きます。

「ワインのお味は、いかがですか?」

ぼくは、にっこりと微笑みながら聞いた。


「いやー、芳醇なワインですな」

と、まず、先に答えたのが、ブルーノ伯爵。


「ほんとに、美味しいですわ!」

と、ブルーノ伯爵夫人も同調する。


そして、最後に、ぼくは、黙っている女に顔をむけて、

「ボラージュ伯爵令嬢は、いかがですか?」

と、聞いた。 


一瞬、目が泳いだ。


なんて答えようか、迷ってるな…。


すると、女は頬に手を添えて、

「先ほども申しましたように、アルコールに弱いので、ワインがよくわからないんです」

と、困ったように微笑んだ。


ふーん、考えたわりには、つまんない答えだね?

まあ、いいや。


「じゃあ、ウルス、あれ持ってきて」

と、ぼくが言うと、ウルスはうなずいて、部屋から出て行き、すぐに戻って来た。


「こちらです」

そう言って、差し出したのは、バラの絵柄のラベルがはられたワインの瓶。


この瓶を見て、やっと、ブルーノ伯爵夫妻の顔色が変わった。


「王太子様、これは、どういうことですかな? このワインは…!」

と、動揺しまくった様子のブルーノ伯爵。


「やーっと、ラベル見てわかった? 飲んだだけで、自分の売ってるワインが、わからないなんて、舌もバカなんだね?」


「なっ…! バカだと?!」

僕の言葉に、ブルーノ伯爵の顔が、怒りで真っ赤になる。


「王太子様っ! 失礼ですわよ!」

と、これまた、怒り狂うブルーノ伯爵夫人。


その横で、一人静かな、あの女。

この状況から、どうやって、自分は上手く逃げられるか探しているんだろう。

必死で考えているような表情だもんね。


でも、残念! 逃がしませーん! 


「なんか、色々おかしいんだよね、このワイン。

さっき、人気があって、市場に出回ってないって言ってたっけ? ねえ、ボラージュ伯爵令嬢?」

ぼくが、にっこり微笑むと、女も、取り繕う余裕がなくなってきたのか、鋭い目で見返してきた。


「ええ、私は、そう聞いてただけで、詳しいことはしりません。それが、何か?」


「へえ、さっき、このワインを飲んだ時、顔色が変わったのにね? 

詳しいこと、知ってるんじゃない?」


「それは、これがうちのワインに似てるなと、少し思っただけです」

と、女は、平然と言い返してきた。


「ふーん、そう? まあ、いいや。先にすすめるね。

市場に出回ってない、このワイン。どうやって、手に入れたと思う? 

なーんと、ブルーノ伯爵夫妻が取引した人の倉庫から、無理やり、いただいてきました! 

入手困難な人気のワインなのに、沢山、倉庫に放置されてたらしいよ? なんでだろうね?」

ぼくが女を見て聞く。


「それは、買った方の自由ですから。倉庫に保管されてただけでは?」


「んー、おかしいな? では、実際、倉庫まで取りに行ったウルス、発言をどうぞ!」


これらの下準備で、疲労のたまったウルスが、目の下にクマをつくった迫力ある雰囲気で説明をはじめた。

「ブルーノ伯爵がワインを売った人たちをつきとめ、その倉庫を探り…いえ、倉庫を見に行かせていただきました。どこも、ブルーノ伯爵から買ったワインが、山と積まれていました。

保管というよりは、放置しているような雑な感じでした」


「まあ、理由は、わかるけど。だって、このワイン、美味しくないもんね? 

でも、不思議なのは、こんな美味しくないワインを、ボラージュ伯爵がブルーノ伯爵に、相場の20倍で売ってること。そして、ブルーノ伯爵が、そのワインに更に利をのせ売ってること。

なのに、すぐさま、売れる。しかも、顧客は毎回、同じ人たちばかり。

よほど、このワインが好きなのかと思うけど、倉庫には飲まずにたまっていくワインが山と積まれている。

そこまでの高値を払ってでも買ったワインなのにね。ほら、おかしいことばかりでしょ?」

と、ぼくは問いかける。


三人とも反応がない。


えー?! まだ、あきらめないで?! これからだから。

悪役は悪役らしく、もっと歯向かってよ! せっかく、やる気になったぼくを楽しませてよ!


ということで、言い返す気持ち満々で、反応を待つ。…待つ。…待つ。

シーン…。 

こら、なんか言え!


いかん。早く終わらせないと、どんどん、ルイスに会う時間がおそくなっていくじゃないか!

ということで、ぼくが続きを言おう。


「つまり、ワインはカモフラージュってことだよね? あ、もう証拠は確保してるから、言い逃れはできないよ? 

買った人たちも、先に捕らえてるしね?」

と、言った瞬間、


「違う! 俺たちは、ボラージュ伯爵に騙されたんだ! 相場の20倍で買わされてたなんて、聞いてない!」

と、ブルーノ伯爵が叫んだ。


「ええ、そうよ! そんな安いワインを高額で売りつけられた、私たちも被害者じゃない?!」

と、ブルーノ伯爵夫人。


え、伯爵夫妻って、簡単な文章も理解できないの? そこ、問題じゃないよ? 

問題なのは、ワインと一緒に売られていたものだ。


そこで、あの女が口を開いた。


「申し訳ありません。父と伯爵夫妻の事業のことは、何も知らなくて…。

まさか、ワインと一緒に何かを売ってたなんて…」

と、目をふせる。


なるほどね…。往生際が悪いなあ。


不定期な更新ですみません…。読んでくださっている方、ありがとうございます! 

ブックマーク、評価、いいねをくださった方、励みにさせていただいています。ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ