挿話 王太子の受難 4
王太子視点が続きます。
「あ、それと、一応、王妃にも連絡しといてね。
過程を話しとかないと、結果だけ話したら、めちゃめちゃ怒るから、あの人。
ほら、根っからの騎士だし、報告を怠るなって、うるさいからね」
と、ぼくはウルスに言った。
「なんで、王妃様に…? あ、そうか! ロンダ国って、王妃様の辺境と国境をへだてた隣国。
そういえば、王妃様の先日の話って、まさか…」
ウルスが、ぶつぶつ言いながら、考え始めた。
「まあ、そこは、ぼくの予想にすぎないけど? でも、小さい虫であっても、きれいにしとかないと。
めぐりめぐって、ルイスに迷惑をかけたら、許せないからね?」
と、にっこり微笑む。
「ぶれないな…」
ウルスが、あきれたように、つぶやいた。
が、すぐに、
「騎士団を動かしますか?」
と、聞いてきた。
「いや、今回は隣国も絡んでるし、慎重に、かつ早急に探ってもらうから、王室の密偵に頼んで」
「で、王太子は、一番どこを狙ったらいいと?」
と、ウルスが聞いてくる。
「もちろん、ボラージュ伯爵がブルーノ伯爵に輸出しているワインだっけ?
念入りに調べてね。あ、倉庫もねー」
「了解」
「じゃあ、まあ、こっちは、密偵の結果待ちとして、あとは、兄様として動かないとね」
ウルスは
「兄様として動くって、一体、なにをするんだ…?」
と、いぶかしげに聞いてきた。
「あのべラレーヌ・ボラージュだよ。だって、不自然に、ルイスと接近したんだからな。理由を聞いとかないと」
「でも、怪しいとは言え、ルイスに接近したのは、ほんのちょっとだけだろ? 特に害はないし」
と、ウルスが言った瞬間、
「ルイスに害があってからでは遅いっ!」
と、ぼくは叫んだ。
ウルスが、引いた目で見ている。が、そんなことはどうでもいい。大事なのはルイスだ!
「ほんの1秒であっても、また、その度合いが重かろうが、軽かろうが、下心ありで、ルイスに接する輩を、ぼくが見逃すわけないよね? ルイスに湧く虫は、速やかに排除するのみ。ルイスは、兄様が守る! なんていったって、ぼくは誓ったんだから! 幼いルイスに、ぼくが誕生日プレゼントのぬいぐるみを…」
と、言ったところで、ウルスが、焦ったように口を開いた。
「…ああ、わかった! わかったから! だから、それ以上は、やめろ!
俺が変なことを聞いてしまいました! 申し訳ありません! 俺が間違ってました!」
と、やけくそ気味に謝った。
なぜ、ここで止める。ここからがいいところなのに?
今度、時間をかけて、じっくり、ウルスに話しておかないといけないな。
数日後。
早くも、王室の密偵から報告書があがってきた。
「やっぱりね…。単純すぎて手間が省けたよ。至急、王妃にも報告しといて。
それと、ブルーノ伯爵夫人に、やはり、紹介してくれると言っていた女性と会いたいと、王太子が言っていると連絡して。それと、ブルーノ伯爵とも久しぶりに話がしたいから、一緒に来るように伝えといて。
あ、それと、ルイスには絶対に気づかれないように。今、花づくりに集中してるから、こんなゴミみたいな輩の話で邪魔したくないんだよね」
そう言って、作業用の服を着たルイスを思い出す。
自然と、顔がゆるゆるになってしまう。
すると、ウルスがおびえた目でぼくを見た。
「その顔が怖すぎる…」
読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださっている方、ありがとうございます!
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