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(本編完結、番外編を更新しています)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?  作者: 水無月 あん
番外編

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俺は出会った 11

ルイス視点になります。

あ、もう一人、俺が聞ける人がいた。

前から歩いてくるモーラだ。


モーラは、幼い頃から面倒をみてもらっているメイドで、今やメイド長。

そして、なんといっても、常識人だ。

今まで聞いたあの三人とは違う。


これは救世主だ!


俺は、

「モーラ、ちょっと聞きたいことがある」

と、声をかけた。


「なんでしょうか、ルイス殿下」

と、にっこり微笑むモーラ。


「アリスの誕生日プレゼントを考えてるんだが、何がいいと思う?」

俺は聞いてみた。


モーラは、ぱあっと顔を輝かせた。

「まあ、婚約者のアリス様に?! なににも興味をもたれなかったルイス殿下が?! 

興味がなさ過ぎて、私の顔すら、なかなか覚えられなかったルイス殿下が?! 

そんなことを考えられるほど、人間らしくおなりになって! モーラは本当に嬉しいですわ!」

そう自分で言って、自分でうなずいている。


モーラ…。ところどころ、失礼な感じだが、俺はけなされているのか?

が、にこにこと満面の笑みをうかべるモーラに悪気はない。


「それより、プレゼントなんだが…」


「あっ、そうでした。婚約者のアリス様にですね。…うーん、そうですね。…あ、そうだわ、真心です」

と、自信ありげに言った。


「真心?」


「ええ、真心のこもったものなら、なんでも嬉しいものです。

だから、大事なのは、真心です! なにより、真心です! 真心にまさるものはありません! 真心をこめたものにしましょう!」

モーラは真心を連発した。


そこまで連呼されると、なんだか、怪しげな勧誘みたいだが…。

とりあえず、聞いてみよう。


「じゃあ、モーラは真心のこもったものを、何かもらったことがあるのか?」

と、俺は聞いた。


「もちろん、あります! 今までで一番うれしかった、真心のこもったプレゼントは、子どもからの絵です!」


「絵?」


「はい。私の誕生日に、私の似顔絵をかいてくれたことがあって。もう、嬉しくて、嬉しくて。今でも、額にいれて飾ってますよ」


「なるほど…。いいことを聞いた。ありがとう、モーラ!」

俺がお礼を言うと、


「お役にたてて良かったです。アリス様が喜ばれたらいいですね」

そう言って、立ち去っていった。


ということで、俺のプレゼントは決定した。

来月のアリスの誕生日までに、アリスの肖像画を描くことにする。

もちろん、真心を沢山こめて。


俺は、すぐさま王宮の図書室に走った。

絵画の描き方の本を山ほど借りてきた。まずは、そのノウハウを頭にいれる。

特に、肖像画の描き方は、数日かけて徹夜で読んだ。


そして、次に、画材屋に走った。

アリスを描くには、絵の具は、どれも美しさがたりないように思えるが、致し方ない。

そこは、モーラの勧める真心で補おう!


そして、どんなアリスを描くかだが、やはり、一番最初に会った時のアリスにしよう。

俺が初めてアリスに出会った、記念すべき日だから。


小さくて、妖精みたいなアリスを描こう。


それから数週間。時間がある限り、自分の部屋にこもり、筆を入れつづけた。


そして、頼んでいた特注の額も届き、絵を入れてみる。


本物のアリスには到底及ばないが、我ながら、アリスらしさは出たと思う。

妖精らしいアリスが伝わってくる。


これをお茶会を行う部屋の壁に飾っておき、実は、プレゼントなんだと言って渡すのはどうだろう。

喜んでくれるだろうか。


そして、ついにお茶会前日。お茶会の部屋を準備しているところに、できあがった絵を持っていった。

アリスの席から見やすい、真向かいの壁にしよう。

そこへ、しっかりと固定する。

これなら、アリスが座った瞬間、絵が目に入る。


そこへ、兄上とウルスが通りかかった。


そして、開いているドアごしに俺を見て、

「明日の土曜がお茶会か。きれいに準備できたね」

と、兄上が、にこにこしながら入って来た。


すると、兄上が、壁の絵に気がついた。

「へえ、いい絵じゃないか? でも、こんなところに、絵があったっけ?」


「アリスのために、俺が描いた」

そう言うと、兄上が目を見開いた。


「すごいな、ルイス! 絵も天才だったんだね!」

と、きらきらした目で俺を見る。


が、隣で、ウルスが首をひねっている。


「どうした、ウルス?」

俺が聞くと、


「いや、何をかいたんだろうと思ってな。…これは、鳥人間か?」


「…は? 鳥人間?」


「だって、羽みたいなものが見えるだろ? でも、顔みたいなものも見えるし。鳥人間かなって?」


すると、兄上が、はーっとため息をついた。

「ウルスは、本当に見る目がないよね。絵心がないというか…」


「じゃあ、なんだ、この絵は?」

と、ウルス。


兄上は、胸をはって言った。

「これは、蝶だよ。それも人間にあこがれて、人間になりたい気持ちがあふれでている蝶を描いてるんだ! なんという絵心! すばらしい芸術性! そして、想像力もさすがだね、ルイスは!」


絶賛する兄上。


俺は、ぼそっと言った。

「ちがう。これは、アリスだ。妖精のようなアリスを描いてる」


その場が静まりかえった。


が、兄上が、即座に立ち直り、口を開いた。

「…なるほど! よく見たら、蝶のような、妖精のような、アリス嬢が見える。うん、見えるね! ルイスの描く絵は奥が深いなあ。そうだよね、ウルス!」


「…あ、ああ。鳥のような、いや、妖精のような、アリス嬢。…に見える…ような気がする」

と、ウルスが、とまどいながら言った。


俺は、黙って壁から絵を外した。


そうか、俺には絵心がないんだな…。


ということで、翌日、お茶会で渡す誕生日プレゼントは、結局、いつもと同じ、花束と菓子になった。

カードに書いたのは、「誕生日おめでとう」だけだ。

そして、その余白に、俺のありったけの真心をこめた。


今日、三回目の更新になります。不定期な更新ですが、読んでくださっている方、ありがとうございます。ブックマーク、評価、いいねをくださった方、励みにさせていただいています。ありがとうございます!

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