俺は出会った 5
ルイス視点が続きます。
アリスと出会って、3年がたった。
俺の唯一の楽しみは、月一回のアリスとのお茶会だ。
今では、お茶会の菓子は、半分くらいは俺の手作りをだしている。
来週にせまってきたお茶会に備え、メニューを考えるべく、学園での休み時間、アリスノートを開いていると、マークがやってきた。
「ルイス、ご機嫌だな。今月も、もうすぐお茶会か?」
俺は無表情だと言われているが、マークは俺の顔を見ただけで、すぐに気持ちを察してしまう。
すごい観察眼だな。
しかし、その分、舌は、すこぶるにぶい。
以前、お茶会用の菓子の試食を頼んだこともあったが、どの菓子に対しても、
「うまいが、違いがわからん」
という意見しか言わないので、全く参考にならなかった。
「来週だ。今回は、アリスの好きなりんごで、アップルパイを焼こうと思ってる」
そう言うと、マークは、あきれたような目で俺を見た。
「おまえは、王子初のパティシエを目指してるのか?」
「アリスが望むなら、アリス専用のパティシエになってもいい」
マークは、はああっとため息をついて、
「あのな、冗談だ。真面目に答えるな。それになにより、そのよくわからん努力を、せめて、なぜ、アリス本人に伝えない?! 俺なら、これ、俺がつくったんだぞ!って、言いまくるけどな」
と、言った。
「聞かれてもないのに、言えない。好きでやってるのに、押しつけがましいだろ? せっかく、泣かすことなく、お茶会に来てもらってるのに、これで、嫌がられたらどうする?」
マークは、首をひねって、
「今が好感度が底だろうから、これ以上嫌がられることはないんじゃないか?」
と、俺の心臓をつきさすようなことを平気で言った。
うっ…、好感度が底…。
俺の顔を見て、マークが、あわてて、
「あ、悪い悪い。底じゃなくて、数センチはあるかもしれん」
と、よくわからないフォローをいれてきた。
「ともかく、アリスには俺がお茶会の菓子を作ってることは言うな。俺が作った菓子をアリスが食べ、それが、アリスの一部となってくれれば、俺は、それで満足だ」
「なんだろ、その言い方、なんだか怖いんだけど…。ま、本人がいいなら、いいか。がんばれ」
そう言って、休み時間が終わったマークは、自分の教室へと帰っていった。
その日、王宮に帰ると、父上に呼び出された。兄上もいる。
「急だが、来週、モリーニ国の王が、わが国を訪問したいと言ってきた。隣国でありながら、あまり、交流もなかったが、これからは協力していきたいと言ってこられたので、了承した。ちなみに、一泊二日の予定で、娘の王女も連れてくるそうだ。ルイスと同じ年だ。もてなすのを手伝ってくれ」
「アリスのお茶会がありますので、その時間以外なら大丈夫です」
父上は、眉間にしわを寄せた。
「ああ、アリス嬢とな…。そうか、茶会は来週のいつだ?」
「土曜日です」
「うっ…、かぶってるな。モリー二国の王と王女がくるのは、金曜日から土曜日にかけての予定だが…」
父上は、俺の顔色を見ながら、
「ちなみに、ルイス。アリス嬢との茶会だが、延期することは…」
そう言いかけたので、
「無理です。嫌です。絶対に延期しません」
と、言いきった。
「たった1日のばしてくれるだけでいいんだが…」
父上が更にかぶせてくる。
「嫌です! 待ちに待ったお茶会をさらに伸ばせというのですか? 俺を殺す気ですか?」
そこで、兄上が立ちあがった。
「父上! ルイスの楽しみを奪わないでいただきたい! かわりは、ぼくがしますから!」
と、胸をはって言ってくれた。
父上は、疲れた顔で言った。
「おおげさなやつらだな。たった一日、延期してくれって言っただけだろうが…。どいつもこいつも面倒くさいな…」
が、兄上は、そんな父上を気にすることもなく、俺のほうをむいて、
「大丈夫だ、ルイス! アリス嬢とのお茶会は兄様が死守するからね。兄様にまかせろ!」
そう言って、にこっと笑った。
俺をまだ小さい子どものように、兄様に言ってごらん、などと言う兄上をうざったく思ってたが、申し訳なかった…。
やはり、兄上は頼りになるな。
「兄上、ありがとう」
そう言うと、兄上は満面の笑みを見せた。
これで、来週も無事にアリスとのお茶会をむかえられる。
読みづらい点も多いと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございます!
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