俺は出会った 4
今回もルイス視点になります。
半年ぶりに会ったアリスは、
「きょうは、おまねきいただき、ありがとうございます」
と、警戒した顔で、俺に挨拶をしてきた。
前回のような、無邪気な笑顔は見られない。
もちろん、笑顔が見られないのはさみしいが、すべては不用意な言葉を言った俺のせい。
また会えただけでも、俺は幸せだ。
それに、どんな表情であれ、アリスのはちみつ色の瞳は、やはり澄みきっていて、とてもきれいだ。
思わず、すいこまれそうで見入ってしまう。
そして、半年ぶりに会っても、アリスは小さいままだった。
すごく小さくて、とんでもなく、かわいい…。
やっぱり、アリスは俺の妖精だ。
アリスの大きな目が、じっと俺を見ている。
心臓の音が聞こえてきそうなほど、警戒しているのが、手にとるように伝わってくる。
大丈夫だ、アリス。
今度は、「ちび」だとは口が裂けても言わないからな。
前回は、俺の無知で傷つけてすまなかった。
今日は、選びに選んだ最低限の言葉しか発しないように気をつける。
だから、頼む。泣かないでくれ。
俺は祈るような気持ちで、精一杯の心をこめて言った。
「小さいな」
そして、かわいいな、と、心の中で、しっかりと付け加える。
今回も、恥ずかしくて、やっぱり口にはだせなかった。
アリスのはちみつ色の瞳が大きく揺れた。
え?! まさか、泣かないよな?!
驚いた顔をしているが、アリスは泣かなかった。
この言葉は大丈夫だった。「小さくて、かわいい」という、俺の気持ちが伝わったんだな。
まずは良かった…。
俺が椅子に座ると、テーブルをはさんで、アリスも向かい側に座った。
メイドが、手早くお茶を淹れた。
俺が用意した茶葉だ。念のため、まずは、一口飲んでみる。
よし、大丈夫だ。
さあ、アリス、飲んでくれ!
俺がアリスのために、選びに選んだ茶葉だ!
が、これをアリスに伝えるのは、押しつけがましいだろうと思い、だまっておく。
俺の無言の圧が通じたのか、アリスがカップをとって、一口飲んだ。
ほんの少し、口角があがった。
微笑んでる!!
よし、この茶葉は気に入ったんだな!
ひとまず良かった。
が、アリスは、だまってお茶を飲んではいるが、菓子には手を伸ばさない。
どうしたんだ?
アリス好みの路線をねらった菓子ばかりだぞ!
それに、アリスは小さい。とてつもなく、かわいいけれど、風が吹いたら飛んで行ってしまいそうだ。
大きな音で、壊れてしまいそうだ。
心配だ…。
アリス、食べてくれ!
あ、もしかして、テーブルいっぱいに菓子をおいたから、どれがいいか選べないのか?!
全て、俺がえらんできた菓子だから、材料、作り方、由来、栄養など、事細かく説明できるよう頭に入れてある。
が、聞かれてもいないのに説明するのは、嫌がられるかもしれない。
なにより、口数が増えると、また失言をして、泣かせてしまうかもしれない。
さあ、どうするか…。
あ、ひらめいた!
俺のおすすめを、教えればいい。
うっかり油断して、変な言葉を言うな、俺!
そして、俺は、まずはじめに、アリスが好きだというイチゴを使ったお菓子を指差し、
「これを食べろ」
そう言った。
最小限の言葉で、おすすめを教えたが、どうだ?
アリスが、とまどった目をして俺を見たが、手をのばし、そのイチゴの菓子の皿をとった。
そして、食べた!
全部食べてくれた! 良かった!
よし、この作戦でいこう。
次は、さっきの菓子とは、まるでちがうケーキを指差した。
そして、言った。
「次はこれを食べろ」
アリスは、目を見開いて俺を見たが、だまって、そのケーキ皿をとった。
そして、食べた!
それにしても、一生懸命、菓子を食べているアリス。なんてかわいいんだ!
見ているだけで癒される。
もっと食べさせたい!
食べてるところを見ていたい!
そうだ、次は、俺が菓子を作ろう。
俺が作った菓子を食べるアリス。想像しただけで、幸せな気分だ。
次のお茶会まで一か月。俺は菓子作りをがんばることにしよう。
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