表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(本編完結、番外編を更新しています)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?  作者: 水無月 あん
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/119

辺境で 7 (ウルス視点)

お久しぶりです。今回はウルス視点です。

フィリップの執務室の中へ早く入るように促したにもかかわらず、入口で足がぴたりと止まったままのマーク。


ルイスの親友で、切れ者宰相に似た頭脳を持ち、次世代の貴族の子息の中ではぬきんでて有望で、一見、無敵のように思えるが、今は、唯一にして最大の弱点フィリップを前に警戒心まるだしになっている。


「敵の住処には入るな」という本能からの指令なのか、足が動かないようだ。


「へえ、いいね、その警戒心。マークは野生でも生きられそうだよね」


脅かしている張本人のフィリップが、動けないマークに楽しそうに声をかけている。

どの口が言うんだ……。


「恐縮です」

と、答えるマーク。


なんなんだ、この変な会話は……。


このままだと埒が明かないので、俺はマークの手をつかみ、執務室の中に引きずりこむと、テーブルのところに案内して、無理やり椅子に座らせた。


その隣にルイスが坐った。


そして、ルイスの目の前にはフィリップが坐った。


「ウルス、マークにもお茶とケーキを」


にこやかに言ったフィリップ。


即座に、マークが猛烈に首を横にふった。


「いえいえいえ、お気遣いなく! 話したら、すぐに失礼しますので」


「ああ、そのほうがいい」


思わず、俺の心の声が飛び出した。


「遠慮せずにゆっくりしていってよ、マーク」


にっこり微笑むフィリップに、マークの顔が更にひきつった。


次の瞬間、ルイスがマークの肩をがしっとつかみ、自分の方へ向けた。


「アリスに関する話とはなんだ? 何があった? 早く話せ、マーク」


待ちきれない様子で、マークを急かすルイス。


無表情と言われるルイスだが、俺から見れば、アリス嬢に関することになったら、全身から感情がもれだしまくっているように思える。


そんなルイスを、にこにこと嬉しそうに見つめながら、「ほんと一途で、愛らしくて、輝いていて、誠実で、まさに光の天使だよね、うちのルイスは!」とか、気持ち悪いことをつぶやくフィリップ。


上機嫌のフィリップが余計に怖いのか、マークが顔を固くさせたまま、言葉を選ぶようにして、慎重に話し始めた。


「実は、アリスに王妃様から、お茶会の招待状が届いたんです……」


「お茶会? 母上、こっちへ来るの? ウルス、その予定、聞いてないんだけど?」


不満げに俺を見たフィリップ。ルイスを見る目との落差がすごいな……。


王妃様とフィリップは一見、正反対のようでいて、本質は似ている。

そのためか、よくぶつかる二人。

しかも、お互い一歩もひかず、ど派手な言い争いになる。


ちなみに、そんな二人の言い争いに口を挟めるのは、家族である王様とルイスだが、ルイスはアリス嬢のことでなかったらどうでもよさそうで、大抵は聞き流している。


王様は毎度毎度、止めようとするが、その声は、王妃様の声量にかき消されてしまって、二人の耳には届かない。

そう、王様では全く止められないんだよな……。


なんて考えていたら、あわてた様子で、マークが言った。


「あ、いえ、王太子様、違います! アリスが招待されたのは、王宮ではなく、辺境伯様の城にです」


次の瞬間、ルイスが椅子を蹴って立ち上がった。


「アリスは辺境へ行くのか!?」


ルイスの言葉に、マークがうなずいた。


「ああ。しかも、ひとりでだ。護衛はよこしてくださるらしいが、あんな遠くまで、アリスだけで行くなんて心配だ。俺も付き添いたいが、領地に行かないといけなくて無理なんだ」


「母上は一体何を考えてる? アリスに何かあったらどうするんだ! わかった。俺がアリスの代わりに辺境へ行く」


そう言い放ったルイス。


アリス嬢の代わりに、ルイスが辺境へ行く?

いやいや、ルイス……。

それは、いくらなんでも、おかしくないか……?


それに、そこまで騒ぐことか?

確かに、辺境までは遠いが、王妃様の差配なら、何の心配もいらないだろう?


とにかく、フィリップが首をつっこむような、面倒ごとでなくてよかった……。

マークとルイスには、さっさと帰ってもらい、フィリップには仕事に戻ってもらうか……。


と思ったら、フィリップまで、立ち上がった。


「それなら、僕もルイスと一緒に行く! あんな遠いところへ、ルイス一人で行かせられないよ!」


は……? 

いやいやいや、フィリップ……。

なんで、そうなるんだ……?



前回の更新から一か月以上がたっていました(-_-;) 不定期な更新のなか、よんでくださったかた、本当にありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ