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(本編完結、番外編を更新しています)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?  作者: 水無月 あん
番外編

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私の悩み 15

取り残された令嬢たちを、そのまま放置しておくわけにもいかない。


「ダン、行くぞ!」


冷静になれば、魔石ライトという奇妙な手段にうってでるより、さっさと行けば良かったと思いつつ、急ぎ足でダンとともに中庭に向かった。


が、たどり着いたときには、後片付けをするモーラとウルスしかいなかった。

私を見て、モーラが急いで駆け寄ってきた。


「国王様、申し訳ございません! 私が早合点してしまい、騒ぎ立てまして……」


深々と頭を下げたモーラ。


横にいたダンが、すかさず、モーラの前にすすみでて、モーラ以上に深く頭をさげた。


「モーラさん! 額に赤い光をあてた私が悪いのです。失礼なことをして申し訳ありませんでした」


「そうだぞ、モーラ。おかしなことをしてしまったのは私たちだ。モーラ、すまなかったな。それに、すぐさま、フィリップをかばうなど、見上げた心がけだ。フィリップは果報者だな」


「もったいないお言葉! このモーラ、王太子様、ルイス様を命にかえて、お守りする覚悟はできておりますから!」

と、ものすごい勢いで宣言するモーラ。


メイド服を着た小柄なモーラが騎士の中の騎士のように、たくましく見える。


「俺はそんな覚悟は全くないけど……。モーラさん、すごい」

と、ウルスのつぶやく声。


「そうか。それは、ありがたいが、命は大事にな、モーラ……」



モーラの勢いにのまれながら、そう声をかけたあと、ウルスの方を向いた。


「ウルス。ややこしいことをしてすまなかった。で、令嬢たちはどうなった?」


「令嬢たちは何が起きたのかわからず、かつ、ルイス殿下を見た余韻で、ぼんやりしておりました。なので、その間に、見合いが無事終了したと思い込ませるよう吹き込み……いえ、きちんと説明してから、騎士によって、素早く馬車にのせて帰らせました」

と、淡々と説明したウルス。


ところどころ、薄暗い内容だったが、まあ、うまくおさめてくれたということか……。


「さすが、ウルスだ。すばやく収めてくれて助かった」


「王太子様の後処理は慣れてますから。それに、令嬢たちを徹底的につぶさず、放置して、立ち去ってくれたので、今回は楽でした。結果的に、ルイス殿下が来てくれて良かったです。どんな場面でも、ルイス殿下を優先しますからね、王太子様は……。だから、王様の魔石ライト作戦、ルイス殿下をおびきよせたということで、一応、無駄じゃなかったです」

と、褒めているのか、けなしているのか、なぐさめているのか、よくわからないことを言うウルス。


その表情はどこか黒い。

やはり、フィリップと合うのはウルスしかいないと確信した。



後日、フィリップが私のところにやってきた。


「父上、次の見合いは誰にしましょうか? この前の絵姿から選びますから、見せてください」


そう言って、猛禽類のような笑みを浮かべるフィリップ。


私は、ため息をついて言った。


「もう必要ない。あの絵姿を渡してきた者たちは全て辞退してきた。あれほど、『王太子の婚約者をきめろ』と、うるさかったのに、皆おびえたように、その話題には触れん」


「ええー? ひとりも残ってないんですか? まずは、影響のある家の令嬢二人を攻めたから、取り巻き連中はひっこむことは想定内だったけど……。あの時、ルイスが来たから、あわてて中断して、全然本気を出してなかったのに……。そんなんで向かってこなくなるなんて、敵として弱すぎて、つまらないな……」


「おい、フィリップ。おまえがしたのは見合いだ! 攻めるとか、向かってくるとか、敵とか、色々おかしいだろう!?」


「いえ、全く……。あんな野心だらけの家の令嬢たちは、ルイスを狙ってくる敵ですから。見合いという名の戦場で、堂々と、つぶしにいくのは当たり前です」


黒々とした顔で言い放った、フィリップ。


何を言っているのか意味がわからん……。

問いただすのもつかれた私は、力なく聞いた。


「フィリップ。おまえは、ルイスに婚約者を作らせないつもりなのか……?」


私の言葉に、驚いたように目を見開いたフィリップ。


「まさか! あんな欲にまみれた野心だらけの令嬢たちが、ルイスに近づくのが許せないだけで、ルイスにふさわしい令嬢と婚約するのなら祝福しますよ。ルイスには、この世で一番、幸せになってほしいですから」


「なら、ルイスには、どんな令嬢ならいいんだ……?」


「まあ、ぼくの希望は色々ありますが、大事なことはひとつだけです」


「それはなんだ?」


「もちろん、ルイスが好きになること。ルイスが好きになった令嬢ならいいです」


「そんなことで良いのか? ものすごく、普通に思えるが……」


フィリップなら、とんでもないことを言い出すと思ったから、拍子抜けした。


すると、フィリップがため息をついた。


「父上は、まるでルイスを理解してないのですね……。あのルイスですよ?」

と、あきれはてたような顔で私を見た。


おい、その顔はなんだ。私は父親だぞ。仮にも国王だぞ……。

と、心の中でつぶやいてみる。


フィリップは話をつづけた。


「あの天使で天才で非の打ちどころのないルイスですよ? 人を見ぬく目も完璧に決まってます! そんなルイスが好きになるのなら間違いありませんから!」

と、ものすごい勢いで、まくしたてられた。


「わかったから、もういい……。前半が変だが、要は、ルイスを信じているということだな。それより、フィリップ。自分の婚約者はどうするつもりだ。国内では、今回のことで、見合いしたいという令嬢は激減だ。いっそ、他国の王女とでも見合いするか? 他国となると国の利益も考えた相手になるが……」


「ああ、そうですね! そろそろ他国にも目を光らせておかないと……。ルイスの美貌は近隣諸国に伝わってますからね」


いや、そうじゃない、フィリップ……。

私が言っているのは、そういう意味じゃないぞ、フィリップ……。


が、言っても無駄だな。


こうなったら、ルイスに先に婚約者を見つけないとダメだ。

フィリップの幸せのためにも。


先にルイスに見合いをさせるか。

うるさいから、フィリップには内緒にして。


野心のない家で、信用がおけて、令嬢がいるのは……あ、いたじゃないか、身近に! 

宰相で私の親友のジュリアンだ!


が、しかし、令嬢は5歳くらいだったか……。幼いな……。


見合いの話をした時点で怒られそうだ。あいつ、娘を溺愛しているし。

まあ、一応、それとなく聞いてみよう。


その結果、予想どおり、……いや、予想を超えて、私はジュリアンに激怒されることになった。




※ 今回の話で王視点の「私の悩み」編は終了となります。

読んでくださった方、本当にありがとうございました! とても励まされました。

次回からは、また別の登場人物視点のお話に移りますが、よろしくお願いします!

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