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異世界?勇者召喚?そんなのクソくらえ!  作者: 白い彗星
勇者として召喚されて……
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召喚主との契約



 異世界より召喚された勇者による、王女人質。よもやこんな事態が起ころうとは……おそらく、前代未聞の事態であろうことは間違いない。


 王女の綺麗な銀髪が、揺れる。離れようともがき、抵抗している証だ。



「お、おとうさ……くっ」


「おとなしくしろ、それはあんたもだ王女さん。なぁにじっとしてくれれば、痛い目には遭わせねえさひっひっひ」



 室内は、まさに緊迫状態であった。異世界から召喚した勇者に、要求を突っぱねられるどころか王女を人質にされるなんて、思いもしなかったのだから当然だが。


 そして、それは勇者(ソラ)自身も同じだ。まさか、自分がこんな三下強盗みたいな真似をするなんて思わなかった。



「り、リーラを離してくれ。なぜこのようなことを……」


「だってあんたら、俺を処刑するんだろ?」



 国王の疑問はもっとも。だがそれにも、一応理由というものは存在する。


 このままじっとしていても処刑され、逃げても常に狙われる危険がある。となれば、対策として……人質を取っておく。これしかソラには思いつかなかった。


 人質を取れば、狙われたとしても向こうも迂闊な手出しは出来ない。加えて、人質を取るならばそれなりに地位の高い人間でないと効果は薄い。


 最悪、人質ごと殺せ、とされかねないからだ。



(俺が安全にこの場から逃げ切れる方法……)



 人質に一番適しているであろう人物……それは誰か。この場で一番人質の価値がありそうなのは王女……そしてもちろん、この国で一番偉い国王もその候補だ。


 が……



「いや、処刑はその、部下たちが勝手に言ったことだろう!? わしらは関係ないし!」


「国王様!?」


「いや、でもあんたなら意見に流されて処刑しそうな匂いがするんだよな。 結局部下たちが勝手に言ったことに反論してなかったし」


「っ……いや、なら、せめてわしを人質にしてくれ! 娘は関係ない、そなたを召喚したのもこのわしだ!」



 国王は優柔不断な人間のようだ、現に今否定できなかったのがその証拠。ソラは、偉そうで偉くない人間も嫌いだった。


 王女を人質に選んだのは、いくつか理由はある。女だからとか、非力そうだからとか、国王が自分を人質にするより娘を人質にした方が効果的だろう、とか……


 だが、一番の理由は……



「人質がおっさんよりも美少女の方がこっちのテンションが上がる、だから拒否する!」


「!!」



 ソラの、気持ちの問題だった。その発言に、国王含めた全員がやはり唖然とする。



「甘く、見ないでください……!」


「おっ?」



 その時、腕の中で動きが。王女が身をひねり、脱出を試みてきたのだ。それも、肘でこちらの腹部を打ち、足を踏みつけるおまけつきで。なるほど、ただ捕まっているだけのか弱い王女様ではないようだ。


 しかし、それを事前に察知したかのように、ソラは体を離す。脱出のためにもがいていた王女は圧迫の力からいきなり解放され、バランスを崩す。


 そこを、ソラは素早く自身のズボンのベルトを抜き、王女の手首に巻き付ける。手錠でもするかのように、拘束をする。



「いっつ……」


「おっと悪い悪い、きつく縛り過ぎたか」



 後ろから抱き締めておくだけの先ほどよりも、頑丈な拘束。またなにかしようものなら、気は乗らないがもう少し痛い目に遭ってもらうだけだ。


 一連の流れを見て、国王が焦ったように口を開く。



「わ、わかった! そなたは処刑などさせん、わしが約束する! 望みはなんだ!」


「望みっつうなら、今すぐ俺を元の世界に帰してくれ」


「……それは……」



 処刑の撤廃はもちろんのこと。ソラの要求は、元の世界に帰せという、シンプルなものだ。その望みを口にしたとたん、この反応の薄さはなんなのだ。


 やはり、なにかあるのだ。



「あぁ、腕が滑って王女の腕折っちゃうかもなあ」


「! わ、わかった! 言う、訳を話す!」



 ふむ、やはり王女を人質に取ったのは正解だったか。娘を盾にされ、こちらの言いなりだ。ただ、これでは昔漫画で読んだ、いかにもな悪役そのものだった。



「その、勇者召喚というものはな……召喚の際、双方の間で契約が結ばれるのだ」


「契約? 双方って?」


「うむ……召喚主の願い、この場合はわしだな。その願いを、召喚された者が叶える……そうしなければ、元の世界には戻れぬという契約じゃ」


「……ほぉ? ずいぶんと一方的な契約じゃないの」



 ピキッ……と、ソラの額に青筋が刻まれる。なんだそれは、契約というかかなり一方的な悪徳セールスではないか。


 勝手に召喚され、なのにそちらの願いを叶えないと元の世界には戻れないというのだ。そっちにメリットはあっても、こっちにデメリットしかない。



「して、その願いは? 十中八九予想はつくが」


「……魔王を倒して、世界の平和を……」


「だろうなぁ? そのために俺を召喚したんだもんなあ?」



 青筋が一つ、また一つと追加されていく。召喚された際に頼まれた台詞が願いの内容ではあるが、これでは願いではなく脅迫だ。


 元の世界に戻りたければ、言うことを聞けというのだ。こんな理不尽な連中の言いなりに勇者にならなくて、本当によかった。


 だが、その契約が本当だとして……この場で嘘をつくメリットはないから本当なのだろうが……そんな契約がある限り、ソラは元の世界には戻れない、ということになる。


 ならばこいつらに従う、というのも、嫌だ。こんな身勝手な連中のために、命を危険にさらしたくはない。ならば、どうする。

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