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異世界?勇者召喚?そんなのクソくらえ!  作者: 白い彗星
勇者として召喚されて……
30/43

確保ぉおおお!



「よっ、ほっ、はっ!」


「っ……!」



 放たれるユキの拳。その乱打を、ソラは紙一重に避けていく。なんとも隙のない、洗練された動きだ。


 並の人間ならば、避けるどころか見切ることすら不可能な乱打。それをソラが避け続けることができているのは、皮肉にも勇者として身体能力が上昇しているからだ。


 とはいえ、こうして避け続けるというのも、限界でギリギリだ。さっきから髪の毛に、頬に、かすかにだが当たり始めている。



(このままじゃ……!)



 まるで、詰め将棋だ。やはり訓練している分向こうのほうが速く強い。だから、ソラとの実力差がどんどん埋められてきている。


 動体視力や身体能力の向上だけで、どうにかなる段階を超えてしまっている。このままでは、近いうちに情けなく気絶させられてしまうだろう。


 そんなのは、耐えられない。


 一方で……



(くそっ、なぜ当たらない……!)



 ユキが放つ拳は、どれも当たれば人間くらいなら気絶させられるものだ。繰り出す速度も、徐々に増してきてさえいる。


 だが、ソラにクリーンヒットしない。それが、ひどく許せない。同じく勇者である人間だが、相手は年端もいかない少女を誘拐するような外道だ。そんな奴に、鍛え上げた拳をかわされるなどと。


 そんなのは、耐えられない。



「っ、こなくそ!」


「なっ……!」



 攻めて引いての一進一退。その状況を脱しようと、先に仕掛けたのはソラだ。


 ユキは、ソラの顔面を主として狙っている。わかりやすい性格のおかげで、集中すべきは上半身だとわかった……ならば、ソラが狙うは、下だ。


 後退りしている今では、少しくらい妙な動きをしても不審には思われない。だからこそ、この方法が使える。


 ソラは、後ろへと下がるふりをして、地面に足を引っ掛けた。そして、思いっきり地面を、いや土を蹴り上げたのだ。


 いわゆる……目潰しだ。



「あ、くっ……」



 舞い上がった土は、ユキの目元へと飛んでいく。身体能力が上昇しているおかげか、それともうまく蹴り上げられたからか、土は思いの外舞い上がった。


 ユキは、目元に入った土に、攻撃の手をやめてしまう。それも仕方のないことだろう、生物的な本能的防御だ。



「くっ、卑怯な……!」


「卑怯もくそもあるかよ! 悪いな!」



 こちらは逃げるのに必死なのだ。正々堂々戦うわけでもなし、卑怯上等だ。


 ソラはすぐに、後ろへと下がる。そして……



「じゃあな、俺はここを去る! あばよっぷら!?」



 ……なにかすごい衝撃を横腹に感じ、派手に転がっていった。


 なにかが、ソラに突撃してきたのだ。



「いつつ……ってぇな、なにが……お、おま、リーラ!?」


「うぅう……」



 ソラが身を起こすと、腰にはリーラがしがみついていた。いったいどこから……今のは、リーラが衝突してきた衝撃だったのだ。


 リーラを引き剥がそうとするが、なんでか離れない。どこにこんな力があるのか。



「おいバカ、離れろ! でないと……」


「でないと、なんだ?」



 ……視線を上げると、そこには鬼がいた。



「リーラ様、ご助力感謝する。確保ぉおおお!」


「うお!?」



 逃げられないソラを、鬼……いやユキは、どこから取り出したのか縄で縛っていく。


 手足を縛られ、動けなくなってしまった。



「んにゃろっ……てめえら、計りやがったな!」


「人聞きの悪い。あなたが注意不足なだけだ」



 ……ユキのわかりやすい攻撃。あれは、ソラをこの場に留めるためのものだったのだ。その時間稼ぎの間に、置いていかれたリーラが追いついてくる。


 そして、隙をついてリーラが、ソラを捕らえるというものだ。



「あなたのことだから、どうせ卑怯な手を使ってくると思った。案の定……しかし、私から逃れたことで、そこに隙が生まれたというわけだ」


「っ、くそ!」



 不覚、不覚だ……まさか、こんな形で捕まってしまうとは。


 その後、ギャーギャー騒ぐソラはユキに連行された。

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