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異世界?勇者召喚?そんなのクソくらえ!  作者: 白い彗星
勇者として召喚されて……
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今後の方針



 この世界における、勇者召喚というシステム……その全容は、魔王を倒し世界を救うという救世主的なものだけではなかった。その裏には、ソラに言わせればなんとも自分勝手な思惑が広がっていた。


 いくつかの国が、それぞれ勇者を召喚する。そして、勇者が魔王を倒せば……魔王を倒した勇者を召喚した国が、この世界において大きな実権を得るというのだ。


 詳しくはよくはわからない。が、おそらくは物資を他の国より優先的に回してもらうとか、発言力が大きくなるとか、そういうことだろう。


 確かに、勇者が魔王を倒せば世界は救われる……しかし、その裏では国同士の、実験争いが起こっていたのだ。


 そんな国事情、ソラにとってはどうでもいい。どの国が実権を握ろうが握るまいが、関係ない。ソラが興味があるのは、元の世界に帰る方法、それだけだ。



「……おこぼれ、ですか?」



 そんなソラの、先ほどの台詞を思い返しリーラは呟く。それは、ソラらしいと言えばらしい物言いだった。この短期間で、リーラはソラの人となりがだいたいわかっていた。


 どの勇者が魔王を倒しても、他の勇者含め元の世界に帰ることができる。ならばなにもソラが頑張らなくても、他の勇者に頑張って魔王を倒してもらえばいい。


 魔王を倒すため、他の勇者に協力する。そうすることで、より安全にソラは元の世界に帰ることができるという算段だ。



「ふむ、我ながら完璧だ……あとは、その他の勇者ってのがどこにいるのかわかればな」



 他の勇者に協力するならば、まずは見つけるところからでないと話は始まらない。だが、残念なことに勇者の居場所どころか、何人の勇者が召喚されているかもわかっていないようだ。


 他の勇者を丸め込むのは、簡単だろう。帰る手段を確実にするために、共に協力して魔王を倒そうとでも言っておけばいい。


 他の勇者は、国同士のいざこざについては知らないだろう。知っていれば、自分が政治的利用されていることに腹を立て、役目を放棄することは国でもわかることだ。


 魔王を倒し、元の世界に帰る……嘘ではないし、それこそ勇者のモチベーションになるだろう。そこを利用すれば、簡単に取り入ることができる。



「他の勇者、魔王……ったく面倒なことになってきたなぁ。それに、この世界の地理なんざわかんねぇし」



 魔王を倒すにしても、その魔王の場所すらもわからない。それが役目であるならば、召喚されたときに地図など貰えたのだろうか。


 そもそも、魔王を倒すのに一人では厳しいものがあるだろう、魔王というものがどんな存在かはわからないが。だから、他に勇者には仲間が付いている可能性が高い。


 それに、勇者ものにはパーティーメンバーが付いているのが付き物だ。魔法使いだったり、剣士だったり。そういった仲間たちと力を合わせて、魔王を倒すのだ。


 本来なら、ソラにもそういったものは与えられたのかもしれない。そうなる前に、王女を誘拐してしまったのでどうなっていたかは、わからないが。



「あー、いいや。今後の方針はそれとして、細かいことは明日考える、寝る!」


「え、ね、寝るんですか?」


「寝る! こんな頭で考えたところで、ろくな考えは浮かばねぇ」



 考えることを諦めたソラはベッドに寝転がり、目を閉じる。今日は疲れた……異世界に召喚され、王女を誘拐され、国から逃げて、変なモンスターに追いかけられて、ここまで来て……


 考えてみれば、まだ召喚されてから一日と経っていないのだ。なのに、すでにソラはお尋ね者、後悔していないとはいえ少々ハードな異世界召喚となってしまった。


 一刻も早く元の世界に帰る、それには時間が惜しい……が、それはそれとして休息は取れるときに取っておかねば。でないと、肝心なときに動けなくなる。


 ベッドに横になり、少しして。ソラは、心地よさそうないびきをかいていた。



「……」



 その姿を見て、リーラは考える。今なら、逃げられるのではないか? ここから、この男から、今なら……


 ……無理だ。ここで逃げたところで、どこにも行き場所なんてない。町の人に助けを求めるという手もなくはないが、王女が誘拐されるなど、国王のひいては国の評判が下がってしまう。


 それに、実はソラは寝たふりをしていて、リーラが逃げようとした瞬間に捕まえて……という可能性も、なくはない。


 逃げても、逃げなくても、最善の答えは見つからなくて……



「ん……」



 そうしている間に、眠気が襲ってきた。疲れたのはリーラもだ、むしろ外に出たのが初めてな分、ソラよりも疲労は溜まっていたかもしれない。


 眠気に抗えず、ベッドに横になる。まあ、いい。今後のことは、ゆっくりと寝たあとに考えよう。ソラの言葉を借りるわけではないが、こんな疲れた頭で考えても、いい答えは出ないだろう。


 そうしているうちに……眠りに、ついた。城の、自分の部屋のベッドとはまったく材質が違うが、ぐっすりと眠りにつくことができた。やはり、かなり疲れていたためだろうか。


 そうして、二人の寝息が響く室内……夜は、更けていく。

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