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異世界?勇者召喚?そんなのクソくらえ!  作者: 白い彗星
勇者として召喚されて……
13/43

ノーサンキュー



 食事を済ませ、とりあえず今日の所は宿を探しそこに泊まることにしよう。いくらなんでも、今日明日で事態が動き出すとは思えない。


 というわけで、宿探し。まあこれは、宿を提供している店に行けば、空いている部屋を手配してくれるので、簡単なことだ。



「とりあえず一泊したい。ベッド二つで一部屋空いている所、あるか?」



 早速、店員を捕まえて聞く。どうやら、今食事をした店は宿も二階に提供しているようだ、探す手間が省けた。


 客のオーダーに、少し考え込んだ店員は、調べてくるからと奥に引っ込んでいった。



「……え、部屋別々じゃあないんですか……?」



 そこで、ぽつりと言葉を漏らすのはリーラだ。彼女は今のやり取りを聞き、なにかの間違いだと思った。それはそうだろう、合ったばかりの男女が同室などと。


 だが、ソラはそれがどうしたと言わんばかりに、ため息を漏らす。



「当たり前だ。一人部屋を二つ押さえるのと、二人部屋一つを押さえるのどっちが出費が抑えられると思ってる。本当は一人部屋一つにしたかったが……一応お前のことも考え、二人部屋にしておいた。ベッドは二つあるところを探してもらっている、安心しろ」


「いや、ええ、そういう問題じゃ、なくて、ですね」



 ソラの中では、すでに結論が出ているらしい。だが、リーラは素直に呑み込めない。


 ソラは先ほど、年上にしか興味がないと言っていた。だが、それで心配が全て消えるわけではない。むしろ、そう油断させて……というパターンも考えられる。



「でも……」


「お待たせいたしました。お部屋の方、空きがございました」


「あぁ。なら、そこに泊まらせてもらう」


「ありがとうございます! ……ごゆっくりどうぞ」



 なおも抵抗の姿勢を見せる。リーラ。せめて部屋が埋まっていてくれれば…tねそんな願いも虚しく、空き部屋があったようだ。そもそも、この店で部屋がなかったとして、ソラならば除荷に店を探すだろう。


 ぺこりとお辞儀をした店員は、女の人だった。その彼女が、去る直前リーラを見て意味深に笑った。そして、『ごゆっくり』……完全に、誤解されてしまっている。



「どどど、どうするんですか!」


「なんだってんだ騒々しい。もしかしてあれか、俺たちの関係を誤解されてるのが恥ずかしいのか? 勘違い? させとけさせとけ」



 しかしソラは、知らん顔。いくら興味がないからと言って、あまりにたんぱくすぎやしないだろうか。



「いやいや。第一、お金はあるんでしょう? だったら……」


「だからこそだ。金があると、財布のひもが緩む。この先なにがあるのかわからんのに、部屋割り程度で余計な出費が出来るか」



 あくまでソラの考えは変わらない。というか、もう部屋を押さえてしまっている。キャンセルしたとしても、キャンセル料とかとられないとも限らない。


 ここは、諦めるしかないのだろう。



「てか、お前はさっきからなにを心配……ははーん、俺がお前に変なことすると思ってんのか。このエロ娘」


「エッッッ……」


「なんだ、箱入りお嬢様かと思ってたが、そういう知識は一人前に持ってるんだな」



 顔が、一気に赤くなる。心外だ……正直指摘自体は近からずも遠からず、ぶっちゃけ近いが、それでもそのことを指摘されるなど……



「ぷははは! なんだお前、もしかして俺としたいのか?」


「そんなわけないでしょう!?」


「冗談だよ、マジになんなよ」



 完全にソラのペースに乗せられてしまっているが、リーラはそれに気付かない。いい感じに頭に血が上ってしまっている。


 このままからかうのも面白い……が、ソラはこほんと咳払い。



「あのな、さっきも言ったが、俺は年上にしか興味はない。ガキくさい女なんざ願い下げだ」


「……根拠が、ないですもん」


「興味ありゃここに来るまでに尻の一つでも撫でるわ」



 そう言われて、リーラは思い出す。確かに、ソラはこれまで、旅の中二人きりだったにも関わらず、リーラを触ってこなかった。


 単に、そういう余裕がなかったともとれるが……



「……じゃあ、年上なら小さい女の子でもいいんですか?」


「どんな質問だ」


「いいからっ」



 リーラにとって、はっきりさせておかなくてはいけない問題だ。この男が、自分に手を出さない確証が欲しい。


 その意図を感じ取ってか、ソラはため息を漏らす。



「結局最終的にはお前の判断基準だ。が、間違えるなよ。言っておくが、俺は年上なら誰でもいいわけじゃない。最低限のラインが年上ってだけで、そっから好みだってある」


「そういうものですか」



 最低限のライン……それを聞いても、リーラはピンとこない。これまで恋なんてしたことがないお年頃だ。そういうものなのだろうか?


 なおも、ソラは続ける。



「おうとも。お前だってあるだろ? 最低限これは守ってほしいとか、こういう人はノーサンキューとか」


「のーさん……? ……ともかく、言いたいことはなんとなくわかったような……」



 最低限のライン、つまりは守ってほしいことか。見た目だけでなく、性格、礼儀作法のことだろう。そういう言い方をするなら、先ほどよりわかりやすい。


 要は、好みのタイプではなく、これはダメ、という要素を挙げていけということだ。



「そういうことなら、確かにいなくもないですね。私だって選ぶ権利はありますし」


「そうそう、どんなのがダメ、ってのはあるだろう?」


「えぇ。とりあえずとしては、異世界に召喚され、王女を誘拐し挙げ句王女の母親の形見を売りさばくような人は、お断りですね」



 絶対にダメ……それがソラも同じであるのなら、確かにソラから手を出そうとは考えまい。というか、なんでこの男と色恋好みの話になっているのだ。


 ちなみに今挙げたのが、誰のことを指しているのか、わからないことはないだろう。だが……



「はっ、そいつぁ随分男前の色男なんだろうなぁ」



 わかっていてその反応なのか、ソラは豪快に笑う。皮肉が通じない。リーラは舌打ちをした。


 とかく、今夜は一緒の部屋で寝ることになってしまった。

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