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分岐点

作者: ヒラヒラ

 僕には思い出がない。同じような経験のある人は少なくないと思う。

小学生の頃、僕はひとりだった。周りに馴染めなかった。いじめも受けていたと思う。修学旅行も行ったらしいし、仲の良い友人もいたと思う。

 だけど思い返してみる。全く思い出せない。


 中学生の頃を思い出してみる。母が死んだ。ショックだったしホッとしてもいた。母は心を病んでいたから。あまり友人も多くなかったと思う。この頃の記憶は曖昧でわからない。

 色々な本を読んでいたように思う。特に悲劇的で悲惨なバッドエンドの物語が好きだった。読んだ本のことは覚えている。だけど、現実のことはあまり思い出せない。


 高校の頃を思い出してみる。周りがみんなバカだなぁと思っていた気がする。正直人とあまり関わる気にはなれなかった。仲の良い友人はいた。でも、狂いそうな自分を誰かを演じるようにして押さえ込んで、周りを見下して、ただ生きるために生きていた。進学も就職も正直どうでもよかった。このまま消えようかとも思っていた。


 大学生になった。正直周りの人間に興味はなかった。ただ、一人でいるのが心細いように思った。ボランティア活動にも関わってみた。自分にはあまり合わなかった。

 学費を抑えることを考えた。全て自分で賄わなければならなかったから、授業料免除を申請した。でも、途中から大学は退学してもいいかなと思った。

 

 就職も考えたけれど、大学院に進学した。僕の学部ではそれが一般的だったから。僕自身も研究を経験してみたいとは思っていたから。表彰をされたこともあったが、あまり乗り気にはなれなかった。自分のやりたい研究というよりも上から降ってきて、強制させられているような環境だった。耐えるのは1年が限界だった。不真面目な学生生活だったように思う。


 何かぼーっと生きている気がしている。20数年間の人生を振り返ってみてもこの程度のことしか思い返せないのだ。


 思い出がない。その言う割には思い出があるようには感じた。



 やりたいことができた。何となく生きてきた。だけど、ようやくやりたいことができた。

こんな僕の隣にいたいと言ってくれる人ができた。

 何にもならない人生だと思っている。僕がこの世から消えてしまったら悲しんで、自分も消えると言う人だから、長生きしたいと思う。

 そう思えてからの毎日は1年が10年のように長く感じる。高速道路を走る車から見る風景の様だった現実が変わった。



 結末はまだない。だから最後までこの人が誇れる人間になる。それだけが僕の願いだ。


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[一言] なんかせつない。 お互い頑張りましょう。
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