第五話 滅びた世界
沈黙が続くなか、明るすぎる星の光が2人を照らす
さっきまで心地よかった風がひどく冷たいもののように思えてくる
俺「え........今なんて」
俺は精一杯言葉を絞りだしてそう言った。
聞き間違いかと思った。
エイタ「一緒にこの世界を滅ぼしましょう。私は本気です。」
即答だった。
理解が追いつかない、
全身から汗が吹き出してくる。
冗談なんだよな。そう思いたい、だが今まで過ごしてきてエイタが冗談を口にするような性格ではないことは理解している。
のか?
俺はエイタのことを理解しているつもりだった。でも本当はそんなことはなかったのか???
同じ俺だからって理由で本気で俺はエイタのことを理解しようとしていなかったのか????
落ち着け、落ち着け俺 冷静になれ
乱れた呼吸が
素早く波打つ心臓の鼓動が
買った服を台無しにするほどの汗が
収まりつつあるのを感じる。
今分かっていることはエイタなら本気を出せば世界なんて簡単に滅ぼせられるってことと、
俺はエイタのしようとすることを絶対許さないということだけだ。
それだけは理解している。
命は他人が簡単に奪っていいものじゃない。
蹂躙していいものじゃないんだ。
この世界には教会なんて便利なものは存在しないんだ。
失った命は戻らない。
ちょっとチート能力を得ただけの人間がなんだっていうんだ。
それで偉くなったつもりなのか、強いってだけで他人を人生を踏み躙ろうとするなんてありえないだろ。
話せば分かるはずだ。
だってエイタは俺で俺はエイタだ。
俺「何が目的なんだ?」
エイタ「まあ簡単にいうと、この世界は主様には相応しくないのです。」
「何もかもが駄目です。今日生まれたときからずっとそう思っておりました。こんなクソみたいな世界は終わらせて、主様と2人で新しい世界を創造するのです。」
俺は生唾を飲み込む。
ここまで、ここまで狂っているとは
俺「そんなの間違ってる。」
エイタは何が間違っているのか本当に分からないというふうに首を大きくかしげた。
俺「どこが、どこがこの世界はクソなんだよ。言えよ。」
怒りで体を震えて言葉が荒くなる
まだこの世界にきて一日も経ってないヤツが何言ってんだって思われるだろうけど、けど
俺はそのたった一日未満でたくさんの人の優しさに触れた。
たくさん優しくして貰った。
撤回してもらわないとまともに話しあえる気がしない。
エイタ「全てですよ、全て。私はこの世界のことが全て書かれた本を読みましたが、なんとつまらなかったことか、代わり映えしない風景、最下級の魔物如きに何年も恐怖する街の人々や、同情を誘い報酬金額を少しでもケチろうとする夫婦に、主様の強さに恐怖しご機嫌を取ろうとする村長、他にも数え上げたらキリがありません。」
俺「違う!そんなんじゃない!!」
エイタ「違いませんよ、何も」
エイタ「さあ、主様、こんな世界はぶっ壊して私と共に完璧な世界を創造しましょう」
俺「嫌だ、そんなことは絶対にしない。」
強くそう言った。
さあ、どうやってエイタを説得するかな。
撤回は諦めた、
エイタ「それなら仕方ありませんね私1人ででも主様に相応しき世界を創ってみせましょう。そうすれば主様も納得するはずです。」
え?
いつのまにかエイタの手の上にあの本が載っていた。
瞬間俺の前からエイタは消えた。
街から聴こえてきていた陽気な歌が止んだ
街から漏れていた光が消えた
空は暗くあれほど輝いていた星が1つ残らず見えなくなった
真っ暗になった。なにもかも 俺の心も
俺「なんだよ、まだ何も話し合ってないじゃねぇかよ。」
「エイタはなにをするのも早かったもんな。」
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本当に早すぎる、一体なにをそんなに急いでるんだ。
そしてこの世界は俺に手によって滅んだ。